伝統芸能

2024/11/07

風変わりな能「白楽天」

 今月の能・狂言鑑賞は国立能楽堂の定例公演。

狂言 仁王(におう) 深田 博治(和泉流)
  白楽天(はくらくてん) 鶯蛙(うぐいすかわず) 廣田 幸稔(金剛流)
 
 能「白楽天」(別名「鶯蛙」)は、「夢幻能」ではなく、シテが幽霊ではありません。唐代の詩人・白楽天(白居易)が日本の知恵を試そうと来訪し、住吉明神との詩歌の応酬を通じて日本文化の深さを描いた作品です。実際に白楽天が日本にきたことはなく、物語の中での架空の出来事。この作品では、彼が日本文化を試しに来るという設定が使われていますが、それは日本の伝統文化や詩歌の優位性を表現するための創作です。また、鶯と蛙が登場し、鶯や蛙までもが詩を詠むことができることを表現します。
「夢幻能」が多い能では、少し風変わりな舞台なのかなと思いましたが、楽しめました。

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2024/09/19

夏祭浪花鏡:歌舞伎と能

 先日鑑賞した歌舞伎「夏祭浪花鏡」に続いて、能で同じ「夏祭浪花鏡」をみてきました。歌舞伎では二幕三場で、序幕の「住吉鳥居居前の場」に続いて、二幕目で「釣船三婦内の場」「長町裏の場」が演じられました。
 能でも同じく「釣船三婦内の場」「長町裏の場」が演じられます。実話に基づき書かれた作品で、1754年に大阪・竹本座で初演。
 ラストで主人公の団七九郎兵衛が舅を殺してしまう陰惨な殺人劇が展開します。この表現が歌舞伎と能では違います。悲劇のシーンながら歌舞伎は祭りの明るさとの対比で演じられ、陰湿なイメージはあまりありません。一方で能ではあくまで暗く真正面から悲しく演じられます。
 このように同時期に同じ作品をみるのは、歌舞伎、能、それぞれの表現を知り、とてもいい体験でした。

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2024/09/05

9月の能・定例公演

 今月の能・定例公演をみました。9月の月間特集は「刊行400年 仮名草子『竹斎』と能」。9月4日の定例公演の演目は、

 狂言:雷(シテ・高澤祐介:和泉流)
 能:善知鳥(シテ・片山九郎右衛門:観世流)

「善知鳥」は四番目物で、親子の愛情や罪の意識、成仏への願いをテーマにした能の作品で、幽玄の世界観の中で人間の感情が深く描かれているとされる作品。子方(少年が演じる役)が登場します。子方がでる演目は初めてみました。
 狂言の「雷」は、雷と藪医者のやり取りが笑いを誘います。
 会場は相変わらず満席の賑わいでした。

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2024/07/20

刺激的な英語能「青い月のメンフィス」

 面白く、刺激があり、新しい世界へと導いてくれる作品。昨日、早稲田大学の大隈講堂で上演された英語能「青い月のメンフィス」は、予想以上の素晴らしい内容でした。
ネットで「青い月のメンフィス」をみかけたとき、どんなものか知らないのに、エルヴィスマニアは引きつけられました。
 本作品「青い月のメンフィス(Blue Moon Over Memphis)」はアメリカ人の劇作家デボラ・ブレヴォートが日本の伝統芸能である能に刺激を受け、エルヴィス・プレスリーを題材に1993年に書かれたもの。本公演はこの日本公演で、グローバルに活動する国際的な演劇集団シアター能楽により上演されます。
 作者のデボラ・ブレヴォートは元々エルヴィスのファンではありません。日本人が「能という詩を共有いている」が、アメリカ人にとっては何なのか、ということの答をアメリカのポップカルチャーとエルヴィスに見いだしました。上演は本質を極めています。シテ、ワキ、地謡、笛方などほとんどが外国人により演じられますが、振付は能の舞、所作(すり足など)に基づいています。一回限りの公演なのに、舞台も鏡板、橋掛りがつくられています。

 タイトルの「青い月」はエルヴィスが1954年に録音したスタンダード「Blue Monn」からとられています。メンフィスはもちろんエルヴィスのホームタウン。
 ちなみに偶然ですが、公演上演日の719日は、エルヴィスのデビューシングル「That's All Right」が発売された日から満70年の記念日です。

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2024/07/19

7月の能楽堂ショーケース

 能楽堂の今月は「能楽堂ショーケース」を観賞。ショーケースは能の初心者にも配慮した内容で、狂言・能の舞台の前に解説があります。15分ほどのコンパクトなものですが、鑑賞の前にはとてもいい内容。今回は観世喜正(シテ方観世流)による解説です。
 今回の演目は、
狂言 附子(ぶす) シテ・太郎冠者:野村太一郎(和泉流)
能  熊坂(くまさか) 前シテ・後シテ:遠藤和久(観世流)

「熊坂」は後シテの熊坂が能面「長霊癋見」(ちょうれいべしみ)で長刀を振りかざし、牛若丸(源義経)を闘うシーンがみもの。狂言の「附子」は以前、国語の教科書に載っていたという(多分)だれでも知っているだろうお話です。
 基本的なことを知って能をみると、さらに楽しみが増します。予習が必要なことを痛感したショーケース公演でした。

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2024/07/03

渋谷で「一之輔珍しきはご馳走なり」

 春風亭一之輔師匠の「一之輔の珍しきはご馳走なり」を伝承ホール(渋谷)でみました。ゲストに瀧川鯉昇師匠。会の最初にお二人の対談があり、その後、一之輔、鯉昇の落語です。演目は、
一、対談:鯉昇、一之輔
一、落語:夏泥(鯉昇)
一、落語:千早振る(一之輔)
お仲入り
一、落語:あやとり(一之輔、糸しん)
「あやとり」は一之輔の新作落語。
「今夜、一之輔まぼろしの傑作と噂されていた噺が、初演以来なんと12年という歳月を経て口演されます」
 という噺は「明烏」を一之輔が改作したもの。ところで「糸しん」って?
 瀧川鯉昇師匠の落語は初めて聴かせて頂きました。捉えどころのない名人芸です。
 落語を満喫した夜でした。

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2024/06/27

能「熊野」をみる

 国立能楽堂の6月定例公演をみてきました。演目は、
・狂言:無布施経(ふせないきょう)
・能:熊野(ゆや)読次之伝・村雨留・墨次之伝・膝行留 
 能の「熊野」は林望著『能のよみかた』によれば
「最高の人気曲のひとつで。それだけにいろいろな演式、口伝などが伝わっている」
 といいます。
 特定の演目に対して付加的な演出や所作、特別な舞が加えられるバリエーションである小書。読次之伝・村雨留・墨次之伝・膝行留は小書に関連する特別な演出や演技の要素のこと。
 初めて熊野を見ましたが、人気曲だけあって、面白い(能に面白いという表現がいいのか? これしか思い浮かばないので)。
 また「無布施経」は、狂言のユーモアと風刺を通じて、観客に対して楽しさと深いメッセージを提供する作品です。客席からは笑いが起きていました。
 まだまだ能・狂言は初心者なので、毎月1回はみるようにしています。今回は少し料金が安い脇正面での鑑賞。ここでも十分でした。ゆったりと楽しめるようになりたいのですが、道は遠そうです。

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