みたくない場所なのか、『世界99』
長らく積ん読にしていた村田沙耶香の『世界99』を読みました。上下巻で860ページをこえる長編小説。主人公・空子の一生を描いたディストピアの物語。
架空の暗黒世界、自由のない社会のディストピアだから、心地よく読めるわけはありません。上巻は読み進めるのがつらかった(笑)。でも下巻になると、ディストピアの世界に慣れたのか、そんなに苦しくない。読むのが惰性になる感じがあります。
空子は関わるものたちのこころの動き、考え方、指向などを細かく読み、生きていく。細部に入り込んだ表現はさすがだと思います。恐ろしいディストピアをつくりあげた村田沙耶香の才能にも感嘆します。それでもなお、人の心、ひいては存在はこのようにきっちり分けられるのか。そんな思いもあります。
これほどのボリュームが必要だったのか、とも感じます。上巻だけの長さだと、より恐ろしい世界が見えたのでは、とも思いました。
ともあれ、再読する気は当分起こりそうにない小説でした。









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