2016/11/02

女のいない男たち

 村上春樹の短編集『女のいない男たち』が文庫になり、読みました。まえがきによれば『東京奇譚集』以来九年ぶりの短編集です(『東京奇譚集』は楽しく読んだ記憶があります)。『女のいない男たち』では6編の男と女の短いストーリーが心に引っかかります。
 5編が雑誌に掲載されたものと単行本のために書き下ろされた1編が加えられた6編。まえがきによれば、村上春樹は短編小説をまとめ書きします。『女のいない男たち』はタイトル通り「女のいない男たち」をモチーフに書かれた6編です。
 女のいない男、というモチーフは小説ではスタンダードなもの。しかし村上春樹の紡ぐストーリーはどこにでもありそうな話を達者な文体で展開します。面白いです・
 60代半ばで男と女の小説を書く村上春樹のエネルギーに感心しました。


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016/06/29

ベジヌードルのレシピ

 うちのキッチンスペースで4月に撮影された書籍『「ベジッティ」で野菜たっぷり! グルテンフリーのベジヌードル☆レシピ』(いとうゆき・二見書房)が発売されましたので宣伝です。
 ベジヌードルってご存じですか。恥ずかしながら知りませんでした。ベジヌードルとは野菜を細く長く麺状に切って、麺として食べることです。「野菜の麺」ですね。
 ベジヌードルをつくる道具はいくつかありますが、本書では「ベジッティ」を使っています。いとうゆきさんによるレシピはパスタからサラダ、スープ、おかず、デザートなど、全51レシピが掲載されています。
 ベジヌードルはNHK「あさいち」で先月取り上げられるなど、注目されています。
 グルテンフリー、カロリーオフ、野菜たっぷりなど身体にいいベジヌードルです。美味しそうな料理がたくさん載っています。私も一冊買いました。ヘルシーな料理に興味がある方にはおすすめです。

Photo


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015/10/23

ひとり出版社という存在

 今年の6月に銀座の森岡書店で夏葉社・島田さんの話をうかがう機会がありました。夏葉社は島田さんがひとりでやっている出版社です。ひとりでも出版社ができるといささか驚きでしたが、『”ひとり出版社という働きかた』(西山雅子著・河出書房新社)を読むと、ひとりでやっている出版社はいくつもあり、さらに驚きました。
 本書ではひとり出版社を営む11人が登場します。西山さんがそれぞれの出版人にインタビューし、丹念に文章にしています。ひとりで出版社を始めてのはそれぞれの思い、事情がありますが、どの方も本、出版に託す心は熱い。ひとりで会社をやるのは大変ですが、出版社はやることが多い。凄いと思います。
 いつかは出版社をやってみたい。そんな妄想を起こさせる素敵な1冊です。


Photo_2


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015/10/18

読書は普遍のテーマだが

 週刊ダイヤモンドの最新号(10月17日号)では<「読書」を極める!>が特集。読書の秋という季節柄のテーマ、それに書店事情、図書館のいくつかの問題など時事ニュースもある中での特集でしょう。
 特集は3つのパートから構成されています。まず<知性を磨く読書術>、それに続けて<「新しい図書館」戦争>そして<出版不況を戦う書店>の3パート。
 面白かったのはやはり<「新しい図書館」戦争>です。TUTAYA図書館問題はネットなどでかなり語られている感もありますが、「図書館を核にしたまちづくり”TUTAYA流”の限界」は、TUTAYAが指定管理者として運営を受託した海老名市立中央図書館のレポートが現場の実態をよく伝えています。ちょっとひどいな、という印象です。その一方で伊万里市民図書館も取り上げ、図書館の運営について考えさせられる記事になっています。
 <出版不況を戦う書店>では村上春樹の新刊買取で話題をとった紀伊國屋書店の高井社長にインタビューした記事が興味深いです。この書店、まだまだ闘う気が充分です。
 雑誌のとっては読書というのは普遍のテーマですが、どれほどダイヤモンド読者の興味をひいたのか。そこが気になるところです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015/09/03

村上春樹をめぐる話題

 先々月の7月にでた『村上さんのところ コンプリート版』を買いましたが、まだ”ラン! ラン! ラン! (走ること)”と”ドライブ・マイ・カー(クルマの話)”の2章分しか読んでいません。全部で23章あるのでほんの一部ということです。
 村上春樹の国内での電子書籍は初めてで(そういえば8月28日には『走ることについて語るときに僕の語ること』が電子化されました)、コンプリート版は単行本8冊分あるとかで、まあゆっくり読んでいくつもり。電子版だと目に前に本がないので、「読まねば」という脅迫観念がないので、なかなか進みません。
 村上春樹といえば、今月刊行される『職業としての小説家』を紀伊國屋書店が初版10万部のうち9万部を出版社から直接買い付けて、自社店舗のほか他社の書店に限定して供給するというニュースが伝えられています。何故このようなことをするのか。
「狙いについて紀伊国屋書店は『初版の大半を国内書店で販売しネット書店に対抗する』と明言した」(8月21日日経新聞)
 といいます。ネット書店とは明らかにAmazonを意識してのことでしょう。
「紀伊国屋書店は売れ残りリスクを抱えるが店頭への集客につながると判断した」(日経新聞)
 といいます。
 村上春樹という超強力なコンテンツだからこそできる戦法ですが、Amazonに対抗する方法として有効なのでしょうか。単に喧嘩を売っているだけではないか。そんな印象を持ちます。
 この紀伊国屋書店の販売を村上さんはどう思っているのか。そこがいちばん気になります。
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015/06/16

料理研究家の研究書

 街の本屋でも料理を扱う書籍、雑誌は必ずあります。大規模書店にいくと、数多くのレシピ本が並び、どれを選ぶか迷ってしまいます。本の数に圧倒されますが、レシピを著している料理研究家、料理家の多さにも驚きます。
小林カツ代と栗原はるみ -料理研究家とその時代-』(新潮文庫)は料理家を時代に沿って論じた質の高い評論です。戦後、高度成長期以降に登場した料理研究家を社会情勢、時代背景、人々の暮らしかたから分析しています。また、料理家たちがどうしてその時代に活躍したのかを料理家のキャリアから読み解いています。
 時短料理で革命を起こした小林カツ代。カリスマ主婦として時代の要請に応えた栗原はるみ。二人のスター料理研究家に多くのページを割き、料理研究家が家庭の料理に果たした役割が論じられています。
 興味深いのは主婦について小林カツ代と栗原はるみの対応。小林は1994年「料理の鉄人」に出演して、鉄人陳建一に勝利します。このとき、テレビ局は「主婦の代表」というキャッチフレーズをつけようとしますが、小林カツ代はこれを断固拒否。一方、栗原はるみは有名になってからも主婦だと言い続けたといいます。
 時代に沿いながらレシピを作ってきた料理家たち。その真実に迫った価値ある一冊です。


Photo


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015/06/13

ひとり出版社

 一冊の本を売る森岡書店銀座店では、一冊の本をテーマにしたトークイベントを開催しています。今月の10~14日は詩人・黒田三郎の詩集『小さなユリと』を展示しています。この本は昭和35年に昭森社より発刊されたものを復刻出版したものです。出版したのは夏葉社。夏葉社は島田潤一郎さんが2009年に立ち上げたひとり出版社です。
昨日、島田潤一郎さんと森岡書店店主の森岡督行さんの対談イベントに参加してきました。店内に椅子を並べてのトークイベントの参加者は10名ほど。
トークは森岡さんが聞き手になって、島田さんの話を聞くというペースで進みますが、時として森岡書店、森岡店主のことにも話が及びます。
『小さなユリと』を復刻した志、経緯から、夏葉社の経営のことまで、興味深く、面白い話をきくことができました。
 出版が厳しい今の時代にひとり出版社を運営し、紙の本を出版している姿勢に感動します。読者とどのように向き合って本を作るか。そのヒントが夏葉社の出版活動にはあるのではないか。そんなことを教えられたトークイベントでした。

20150612


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013/09/16

いねむり先生の時代

 昨晩、テレビで「いねむり先生」が放映されていました。同じ時間帯に半沢直樹とNHKスペシャルがあったため、録画しておきました。原作となっている伊集院静の自伝的小説『いねむり先生』をちょっと前に読みました。作家で、ギャンブルの神様ともいわれた色川武大との交流を描いた作品。
 作品全体を通じて、麻雀、競輪などのギャンブルの興ずる二人の姿が描写されます。麻雀のルールも知らず、競輪場にも足を踏み入れたことのない私にとっては、ギャンブルについての表現がほとんど分からず、その背後にある心の動きも理解できません。きっとギャンブル好きが読めば、面白さがわかる小説でしょう。
 しかし、伊集院静の表現はうまい。色川武大という人の作品を読んだことがなく、生前の活躍も知らない(確かイレブンPMにでていました)のですが、そこに本人がいるようなイメージが浮かび上がります。色川のヒューマンな人柄が伝わる達者な伊集院の描写です。
 小説で描かれているのは、伊集院と色川が出会う1987年冬から、色川が亡くなる1989年4月までの1年半ほどの時代です。伊集院が夏目雅子を亡くしたのが、1985年9月(夏目雅子は学年でいうとひとつ下で、ほぼ同世代)。失意の中、色川と出会い、立ち直っていく姿が描かれています。 
 1980年代後半は楽しく、そして恐ろしい時代でした。バブル景気の中にあり、ある意味滅茶苦茶な時代だったと思います。『いねむり先生』を読んでいると、ギャンブルのことは分からないながら、その時代の躍動感を感じます。お行儀の良い時代の今、『いねむり先生』で描かれた人間たちの生き方に憧れてしまいます。あんな時代はもう来ないだろうな。そんなことを、また思ってしまいました。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2013/09/04

池井戸潤:「果つる底なき」とバブル入社組

 テレビドラマ「半沢直樹」の大ヒットで原作者・池井戸潤の作品が人気です。書店では特設コーナーができ、地元の図書館ではほとんどの本が貸し出し中。凋落していると言わますが、やはりテレビの力は凄いことを実感します。
 池井戸潤の著作は読んだことがなかったので、この機会に読んでみることにしました。まず、「半沢直樹」の原作本である『オレたちバブル入行組』。まさにドラマのストーリー通りで(当たり前)、あまり面白くなく中断。次にデビュー作で江戸川乱歩賞受賞作の『果つる底なき』。これも半沢直樹と同じく、銀行を舞台にしたミステリーです。
 ストーリー、舞台道具などよく考えられていて、面白く読みました。ちょっと殺人が多すぎる感がありますが。池井戸潤作品は銀行など金融機関が舞台の一つになり、融資にからむテーマが多いようです。
 これは池井戸潤が慶應義塾大学を卒業後、三菱銀行に入行(銀行の場合、なぜか入行)したことによります。32歳で銀行を辞めているそうなので、10年ほどの仕事経験がいくつもの作品になっているわけです。
『オレたちバブル入行組』の冒頭に、半沢直樹の大学時の話が描かれます。半沢直樹は慶應義塾大学の学生の設定になっています(池井戸潤はこの大学が好きなんだなと推測します。小説のタイトルになっているバブル入社組とは、1988年から1992年くらいまでに入社した世代のことを指します。新卒は超売り手市場でした。池井戸潤より7歳年上の私の世代は、就職は氷河期に近い状態でした。時代と就職は、運も大きく作用するものです。
 池井戸潤の小説は、バブル世代からの視点で書かれたものとして読むのも、ひとつの楽しみ方ではないか。そんなことを感じました。『下町ロケット』もまだ読んでいないので、これから拝読しようと思っています。


| | コメント (0) | トラックバック (0)