2023/10/24
間もなく読書週間(10月27日~11月9日)でまさに読書の秋(笑)。最近、本を読む力がないな、と痛感しています。先日、ネットで知り購入して読んだのが『日本人と日本文化』です。司馬遼太郎 、ドナルド・キーン の対談で1972年に中公新書ででて、その後中公文庫で発刊されたものを読みました。
この本を読んだ後、本棚で『世界のなかの日本―十六世紀まで遡って見る 』をみつけ、読みました。同じく馬遼太郎 、ドナルド・キーン の対談。
2冊を読んで、感じたのは教養というか、知識というか、本を読む力がないということ。お二人の対談は平易な言葉で語られていますが、内容の半分も理解できていない自分。おふたりの膨大な知識に圧倒されます。おまけにドナルド・キーンさんはネイティブではありません。
また本棚にあった立花隆の『
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2023/09/26
新聞広告で目にして、思わず買ってしまった『プア・ジャパン 気がつけば「貧困大国」』(野口悠紀雄 著)。野口さんの著作ですが、「ダイアモンド・オンライン」「東洋経済オンライン」などに掲載された内容を基としているので、書き下ろしではないです。旬な数字データを基に論じているので、早く読んだほうがいい(笑)。
目次を書くと、
第1章 気がつけば、「プア・ジャパン」
第2章 昔はこうでなかった
第3章 これから賃金は上がるのか?
第4章 増大する財政需要と政治家の無責任
第5章 デジタル化の遅れが日本の遅れの根本原因
第6章 高度人材を日本に確保できるか?
第7章 日本再生のエンジンは、デジタル人材
どの章も絶望的とも思える内容です。例えば、第4章で年金の将来が書かれています。著者のデータによると2040年代前半に厚生年金の積立金が枯渇します。早急に年金支給年齢の引き上げが必要です。
プア、というのは貧乏という意味ですが、「プア・ジャパン」のプアは単純に貧しいということ以上に、質が悪い、劣っていることを表現していると感じます。日本はどこへいくのか。
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2023/09/06
なんとなく思い込んでいる「若者の本離れが進んでいる」という先入観を覆すのが、『「若者の読書離れ」というウソ 』(飯田 一史 著)。著者は、データをもとに実態を明らかにし、小中学生の読書量は2000年代以降V字回復し、子供の本離れは進んでいない、と書きます。そして若者(小学生、中高生)はどのような本を読んでいるかを分析しています。読まれる本には「三大ニーズ」と「四つの型」がある と提示します。
10代の若者が読む本も興味深かったのですが、それに加え(本書の本筋ではないかもしれませんが)、そもそも若者から大人へなるにしたがい、読書の仕方は変わるのか、という点。著者はこう書いています。
「読書世論調査では『16歳から70歳以上』までの書籍の読書冊数を1981年から調査・公表しているが、多少の波はあっても不読者(1月に一冊も読まない)も含めた平均では月に1冊台で、やはり2冊以上になったことがない」
そして、大人が若者にもっと冊数をを読めとか、高度な内容の本を読めという要求は無理筋な要求だといいます。
「大人も平均すれば2冊も書籍を読んでいないのだから、『平均的な大人』はたいした読解力もないし、歯ごたえのある本も読んでいない」
と書きます。
本を読む、という行為をあらためて考えさせられる一冊です。
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2023/09/04
とても新鮮なアプローチの本です。『アートとフェミニズムは誰のもの?』(村上由鶴 著)は「アート」と「フェミニズム」という一見関連性がないような二つのカテゴリー(カテゴリーという表現が適切か?)でアートとフェミニズムを理解する道筋を示す著作です。
「アート」は少しだけ知識があるけど、「フェミニズム」についてはほとんど知らない私にとって、とても刺激があり、教えられる内容です。フェミニズムは知らない、という前にずっと避けてきました。単なる言い訳だけど、私の世代ではフェミニズムに関わらないでも、生きてこられたからかもしれません。
著者の村上由鶴は、専門が写真の美学です。写真表現の領域を踏まえ、アートとフェミニズムを論ずることが、とても興味深いです。本書のなかで「フェミニズム・アーティストたちは、表現方法として写真を使うアーティストが多い」と書いています。
アート、フェミニズムそして写真。深めたいテーマです。
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2023/08/26
「君たちはどう生きるか」をやっとみました。素敵な作品で、楽しみました。宮崎駿の新作をみる前に、本棚で見つけてた『時代の風音』を読みました。堀田善衛、司馬遼太郎、宮崎駿による鼎談です。雑誌「エスクァイア日本版」に掲載された内容をまとめたもので、発刊は1992年。
堀田、司馬とも鬼籍に入っていますが、当時のお二人の膨大な知識が凄い。宮崎はあとがきで、「私はとり残された裏店の絵草子屋のようでした」と書いています。
宮崎さんよりずっと知識のない私は本の半分も理解していない。本書は230ページほどの本文(鼎談)に約30ページの註がついていますが、これを読んでもわからない愚かな私(苦笑)。
表紙、扉の絵は宮崎駿作。本書は絶版で朝日文庫化されていますが、表紙には宮崎駿の絵は残念ながら使われていません。
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2023/08/07
すごい本です。『杉浦康平と写植の時代―光学技術と日本語のデザイン』(阿部卓也 著)。今年3月に出版された本ですが、菊判488ページになかなか読み始められず、やっと読了。1980年代まで出版、広告のデザインでの版下製作を支配した「写植」という技術を、関係者へのインタビューと膨大な資料から辿った力作。
「16QゴナE」とか「24QナールD」とか入稿原稿に手書き、赤ペンで指定したことを思いだしました(でも、出版、広告あたりで仕事をしていた人でないと、まったくわからないだろうな)。
80年代くらい(DTPが導入される前)まで印刷物の文字をつくる基本の技術であった写植(写真植字)の誕生から衰退(消滅)までを、この時代のキーマン・杉浦康平というデザイナーの活動を軸にして探求した労作です。
本書は論文として書かれていますが(本書の元になった論文で「立命館白川静記念東洋文字文化賞」を受賞)、ノンフィクションとしても読んでも面白く、刺激的です。
ひらがな、かたかな、そして膨大な数の漢字が混在し、縦書き、横書きもある日本語を印刷する技術を支えた写植は、日本独自の文化体系です。しかし、90年代、主にアメリカのテクノロジーの日本語化によりDTPが主流となり、写植は舞台を降ります。奇しくも失われた30年(今も継続しているのでしょう)が始まる時期です。感慨深いものがあります。
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2023/04/14
昨日、二子玉川に映画をみたついでに『街とその不確かな壁』を買ってきました。発売日なんですが、特にこだわったわけではなく、たまたまという感じ。なぜか、村上春樹の新刊は通販ではなく、書店で買いたいと思い込んでいて。600頁をこえる本なのでブックカバーがつかない、なんていらぬ心配をしましたが、そんなことはなかったです。
文教堂で買ったのですが、コーナーがあり平積みされていますが、さりげない感じ。午後の時間帯でしたが在庫は充分です。同じ二子玉川にある蔦屋書店では本屋大賞・凪良ゆう『汝、星のごとく』と並んでのコーナーになっていました。
ファンは待ち望んでいた新作でしょう。「東京都新宿区の紀伊国屋書店新宿本店では、日付が変わる午前0時に販売を開始した。」(4月13日 朝日新聞デジタル)
と特別の対応をとるところもあったようですが、そんなには熱狂していないように感じます。ラジオで聞いたところでは初刷は30万部とか。前作『騎士団長殺し』が100万部だったので、出版社の期待もそれほどではないかも、と思います。
でもこれくらいの熱さが、丁度いいのではと。ゆっくり村上春樹作品に迎え合えます。
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2023/04/08
先日、世田美で<オイリュトミー特別講座「はこぶね」>に参加したのですが、この公演は旧約聖書の『創世記』(6章-9章)に登場する箱船をテーマにしています。ノアの箱舟のお話は有名なので、旧約聖書に詳しくない人も知っていることでしょう。
今回の公演は講座の指導をしていただいているオイリュトミスト・鯨井謙太郒さんと定方まことさんによる創作ですが、旧約聖書のノアの箱舟をちゃんと知ろうと検索してみると、絵本が何冊かでていることを知りました。
地元の図書館で調べてみると何冊かあります。そのうちの一冊『ノアの箱船』(ハインツ ヤーニッシュ著, リスベート ツヴェルガー ・イラスト)を借りました。
そしてネットで検索するうちに曽野綾子さんが文章を書いている絵本『ノアのはこぶね』をみつけました。図書館には無かったのですが、古本をネットで手に入れることができました。曽野さんの本はかなり読んでいますが、この絵本は知りませんでした。
ノアの箱舟を縁に、貴重な本を手に入れることができました。
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2023/04/03
新年度が始まり、賃金は上がったのでしょうか。新聞にはその辺の記事が見当たらない感じなのですが、見落としているかな。
商品の値上げも続き、生活は大変という巷の声が溢れる中、新刊の『』(大江秀樹著)を読みました。お金を貯めるのではなく、お金を使う方法を伝授してくれる内容。本の帯には、
<死ぬ時に一番お金を持っている日本人><「老後不安」という物語、「貯める・増やす」という呪縛><「コスパ最高!」が日本経済を低迷させている>
とあります。
要は日本人の多くはお金を貯め込んでいるので、死ぬ前に(90歳までに)使ってしまいましょう、ということを著者は主張しています。
著者が書いていることはよくわかります。間違っていません。でももう少し具体論が展開されると良かったかな。お金を使ってしまうということであれば、本書でも引用されていますが、ベストセラーになった『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』(ビル・パーキンス 著)が明確に述べられていて腑に落ちます。
まあ、いつまで生きるか本人には分からないから、お金の扱いに正解はありませんね。ちょっと難しい。
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2023/03/04
最近、本棚にある本を何冊か読んでいます。オーディオがある地下室で音楽を聴くことが多く、その部屋にある書棚の本を見直して、読書ということです。なぜか、1980年代から90年代の本が多い。この時代に熱心に本を読んだ、ということかも。
曽野綾子『寂しさの極みの地』などの小説、田中康夫の短編集『ハッピー・エンディング』司馬遼太郎のエッセイ『アメリカ素描』などの単行本ですが、どの本も電子化されていません。『アメリカ素描』は文庫版が絶版になっていなくてありますが、その他は絶版で古本も手に入れにくいです。
昨日読み終えた川本三郎のエッセイ『私の東京町歩き』(筑摩書房、単行本は1990年刊)も単行本、文庫本とも古本でしかなく、電子化もされていません。本書は川本三郎が「東京人」に連載したものですが、武田花が写真を撮っています。いい本です。
本はどんどん増えていきますが、古い本は簡単には捨てられません。
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2022/10/27
「会社四季報」は株投資のアイテムのひとつですが、「米国会社四季報」はあまり知られていないのではないでしょうか。四季報といいながら年二回の刊行で、米国の企業とETFについての情報が掲載されている内容は日本の「会社四季報」と同様の内容です。
米国投資をはじめた頃にはこの本はなく、発刊されたのは2014年でわりと最近です。最新号は今月17日の発売。この本、売れているのか。それともそれほど人気がないのか。アマゾンで検索すると電子書籍がトップにでてきます。紙版の在庫がないのかな、と思って表示をクリックすると紙版も在庫があります。
前号の紙版をhontoで買ったのですが、いまサイトをみているとバックナンバーを含め在庫切れです。紀伊國屋書店、ヨドバシドットコムでも同じ状況。版元が電子版をすすめているのか、なんて疑念が浮かびます。
紙版で3300円と安くはないのですが、米国株式をやる人にとっては価値のある情報が満載だと思います。紙版はコスト割れなのかもしれませんね。
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2022/10/10
みつはしちかこさんの「ちいさな恋のものがたり」46集が先日届き、読みました。表紙には小さく「その後のチッチ」と書かれている最新のチッチの物語です。
サリーがスウェーデンにいってしまい、チッチの日々が面白おかしく描かれています。サリーも少しだけ登場します。
あとがきでみつはしさんは、こう書いています。
「波乱万丈の46集ですよ。47集までいけるかどーか。チッチたちを追いかけて、81歳(ココロは17歳)、ときめいているところです。」
きっと、47集もだしてくれるで、と信じています。

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2022/09/05
日経新聞の「私の履歴書」に安藤忠雄が書いたのはもう10年以上前でしょうか。掲載当時、熱心に読ませていただきました。この連載は2012年3月に日経新聞から単行本化されましたが、先月改訂新版が発刊されました。現在までの様々な仕事を安藤忠雄が加筆した内容です。
著作を改めて読むと、安藤忠雄という人の壮絶な生き方に心が動かされます。病気を患い、多くの内臓を摘出した身体(本書で書かれていますが、摘出した内臓が多くて生きていけるのか、と思ってしまいます)で今なお、建築家として活動し続ける姿勢に感動します。
安藤忠雄が1997年から東大の教授をしていました。教授に招聘したのが同じく東大で建築を専門とする鈴木博之さんです。この鈴木さんは私の修士論文の指導教官でした。もう、10年以上前のことです。残念ながら鈴木博之さんは2014年に亡くなられました。
安藤忠雄の挑戦は、まだ続きそうです。
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2021/05/25
昨日、小林信彦の『決定版 日本の喜劇人』がネットでも在庫がない、ということを書きました。昨日、写真のワークショップで神保町にいき、東京堂書店によりました。東京周辺にお住まいで本好きの人ならきっとご存知な書店です。
店頭に「週間ベスト(総合)」の本がディスプレイされていて、『決定版 日本の喜劇人』が1位に! ちょっと驚き。在庫がない本屋も多い中、ベストセラー1位とか。
店内にはこの本が平積み。おまけに小林信彦のサイン本です。またまた驚き(笑)。
思い出しました。東京堂書店は小林信彦がお気に入りの書店とエッセイで書いていたのを。推測ですが、たびたび訪れて店の方とも親しいのではと。そうでなければ、サイン本はないでしょう。東京堂書店は私も好きな本屋です。本に親しんできた人の心を捉える空間があります。
ほとんどの本をネットで買っています。書店にも足を運ばねばいけないことを実感しました。
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2021/05/24
小林信彦の『決定版 日本の喜劇人』が発売になってのですが、事前予約をするのを忘れていて、5月20日に「そういえば、今日発売のはずだが、届かないな」と思う愚かさ。やっと注文していないことに気付き、ヨドバシカメラのサイトをみると在庫は見当たらず。アマゾンにはあるのですが、どうしようかと。
二子玉川に用事があったので、文教堂と蔦屋で探したのですが在庫なし(検索端末で調べたので)。仕方なく、アマゾンはやめてhontoで注文しました。
大きな書店にも在庫がなく、ネット書店には在庫がある。まあ、初刷りは多くはないので、このような状況になるのでしょう。今日現在、アマゾン、楽天ブックス、紀伊国屋書店ネットでも在庫がなくなりました。
で、肝心の『決定版 日本の喜劇人』ですが、シネマヴェーラ渋谷で小林信彦さんのサイン入り本を限定30部で売っていて、買ってしまいました。hontoで注文したのも今日あたり届きます。ダブってしまいましたが、小林信彦さんの本だし、いいかな。
本の購入は、うまくいきません。
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2021/04/26
たまたま見つけ、タイトルにひかれ買ってしまった『60歳からの鉄道入門』なる本。読んでみたのですが、いまのところの趣味には合わないというか、目指す方向が違うことに気付きました。なんで買うのか、ということなんですが(笑)。
気になったのはこの本の版元です。発行が天夢人で販売が山と渓谷社。山と渓谷社と言えば出版界の好日山荘のような会社、と勝手に思い込んでいたのですが、鉄道の本も出していたのです。発行している天夢人なる会社はホームページを見ると鉄道に特化した出版社。「旅と鉄道」を定期刊行しています。
鉄道といえば、「鉄道ジャーナル」とか「鉄道ファン」といった雑誌が思い浮かびますが、出版物は少なくないようです。鉄道マーケットは小さくない模様です。
それと、山と渓谷社、天夢人はインプレスホールディングの子会社だということを知りました。2008年に買収されているようです。インプレスと山と渓谷社。ちょっと不釣り合いな感じもありますが、きっとなにか理由があるのでしょう。まあ、読者には気にすることではありませんが。
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2021/04/20
写真のワークショップで毎週神保町にいっているのですが、古書店にはよることがほとんどありません。時間があるときにゆっくりと、と言い訳して店の前を素通りすることが多い。でも、先日通りかかった書店の店外にある棚をながめていたら、いい本を見つけました。
中原弓彦の『日本の喜劇人』という本です。中原弓彦は小林信彦の別なペーンネームです。1972年の発行。即買いました。500円です。安いよね、残念。日本の古本屋やAmazonでみても最安値です。
小林信彦が「週刊文春」に連載している「本音を申せば」の今週号に、平野甲賀のことを書いてます。まもなく『決定版 日本の喜劇人』がでます。この装丁が平野甲賀とのこと。古本で買った『日本の喜劇人』の装丁も平野甲賀です。また、一昨年でたのに今頃知って買った『アメリカと戦いながら日本映画を観た』の装丁も平野甲賀。
もう、平野甲賀の装丁をみることができないのは、
残念です。
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2021/02/26
いま参加している写真家金村修さんのワークショップで紹介された『中平卓馬論——来たるべき写真の極限を求めて』。この本の帯と本文に金村さんの写真が載っていることもあり、購入しようとしたら・・・・・・。ワークショップできいたのは「ふつうには買えない。でもNADiffでは買える」と。買えない・・・・・・。
Amazonで検索すると、確かにAmazonでは在庫がないらしく、出品者からの販売です。それも本の表紙データもなく、正しくは『中平卓馬論——来たるべき写真の極限を求めて』なのに『中平卓馬論』と中途半端なものです。
NADiffで買える、というのはおそらくストアの「ナディッフ アパート」にはあるということでしょう。
『中平卓馬論——来たるべき写真の極限を求めて』を検索すれば、いくつかのオンライン書店に在庫がありました。いつも使っているヨドバシカメラにあり、購入しました。
Amazonは膨大な在庫を持っているように見えます。例えば料理本もかなりの本があります。しかし、新刊でも在庫がない、というのもたまにあります。おそらく売れそうにない本なので再仕入れをしないか、出版社でも品切れでのためでしょう。Amazonでないから品切れ、と考える人も少なくないようです。丹念に他のオンライン書店を当たれば、在庫があるときもあります。
本の流通の難しいところです。
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2021/02/13
大学の卒業制作で本を作ったことは以前の記事で書きました。巷では自費出版をできる環境は整っています。本が売れない時代に出版社がビジネスとしてやっているので、これを使えばラクにできるでしょう。
でも、やったのは自費出版ではなく、自分で一からやるものです。いまの時代、本の印刷、製本はネット印刷でできます。昔、印刷がアナログだったときは、活版印刷とかオフセット印刷とか、グラビア印刷など「版」を作って印刷していました。しかし、今は版は作らないで、プリンターで印刷するオンデマンド印刷が普及しています。
オンデマンド印刷の利点は、本であれば一冊から作れるということ。さすがに一冊だけだとコストは高くなりますが、出来ます。オフセット印刷だと、最低100冊が注文の単位というところが多い。
今回やったオンデマンド印刷では10部作りましたが、108ページの本で一冊の単価は2300円です。コストは高くありません。しかし、欠点は質が良くないこと。写真集にはちょっと厳しいレベルの仕上がりです。
ちょっとした貴重な体験でした。
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2021/02/04
昨年末に新潮社が村上春樹の小説を数多く電子化しました。
「『1Q84』はもちろん、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』、『ねじまき鳥クロニクル』、『海辺のカフカ』、最新作の『騎士団長殺し』まで、日本だけでなく欧米、アジアなど世界中の人々に愛される作品群がこのたび電子書籍でお楽しみいただけるようになります。」(プレスリリースより)
こんなニュースを聞くと、Kindleを買おうかと一瞬迷います。が、結局やめてします。このこと何度も書いているような気がしますが、長らく読んでいる曽野綾子、小林信彦といった作家の作品が電子化されていないからです。お二人の作品は、最近でたエッセーは電子化されているのですが、昔の小説はほぼ電子版がありません。
たぶん、古い本はアナログ(活版?)でつくられたので、電子化が難しいのでしょう。片岡義男は「全書籍電子化計画」を立上げ、現在1万円でプレミア会員になれば、電子書籍(1500点以上)が読めます。
小説に限りませんが、昔の本を入手するのは大変です。電子化でも解決されない悩ましい問題です。
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2021/01/21
Facebookに表示された広告で新潮社が自費出版 のビジネスをやっていることを知りました。自費出版と言えば、文芸社の広告をよく見ますが、新潮社も参入したとは。ネットで調べてみると、昔働いていた学研もやってました(笑)。
自費出版をするには、そもそもいくらかかるのか。例えば四六判(一般的な単行本の判型)で200頁の本を300部つくると、185万円(税別)と料金の目安が示されています。税込で計算すると、1冊6800円弱。これって安いのか、高いのか。お手軽出版ドットコムでは自動見積があり、これで四六判、300部で計算すると6桁の金額でした。
本がどんどん売れなくなっている現在、自費出版のマーケットは広がっているのでしょうか。それとも儲からない出版社が、儲けるための方策なのか。実態を知りたいところです。
新潮社の自費出版
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2021/01/10
この問題はまだ解決していなかったのですね。昨日の朝日新聞に載った「本の値段、税込み表示に悲鳴」という記事に、これは難しい問題だなと改めて思いました。「4月からは消費税込みの総額表示が義務化される見通し」(1月9日 朝日新聞)のため、現状「本体価格+税」と表記するのが一般的な書籍については対応が必要。カバーのかけ替えなどの対応のため、費用と手間が発生すると予想されています。
しかし記事をよく読むと、総額表示が義務となるのは4月以降に出版される書籍です。それ以前にだされたものについて、日本書籍出版協会
「店頭に残っている分は『回収や返品、差し替えまでは必要ない』>
と言ってます。
であれば、そんなに大騒ぎすることではありません。記事には、
「1989年の消費税導入時には書籍の回収やカバーの掛け替えなどで膨大なコストがかかった苦い経験もあり、中小出版社を中心に不安は消えない」
とあり、これで出版社は警戒しているということか。
でも、消費者としては総額表示がわかりやすい。手に取った本の消費税込みの価格を計算するのは面倒です。本が売れない時代に総額表示を求められ、出版社も大変です。
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2020/12/31
大学の卒業制作で本をつくることにしていて(審査をブックで受ける予定)、いろいろ作業をしています。近頃は手軽に本がつくれるみたいです。写真集だとフォトブックのサービスもいくつかあって、バリエーションも豊富です。スマホでも簡単に作成できます。
しかし、いまやろうとしているのはもう少し作るのが大変なものを選んでいます。パソコンのソフトでデザインして作るやり方です。デザインは知り合いのデザイナーさんにお願いしています。いくつかやらねばいけないことがありますが、本にとって重要なのは印刷する紙です。
例えばマット紙110kgとか言われても、どんなものかわからない。そこで、印刷サンプルを取り寄せました。幸いなことに、いくつかの印刷屋さんが無料でサンプルを送ってくれます。3社からいただきましたが、それぞれかなりのボリュームです。これらをみると、紙にも(当たり前ですが)いろんな種類があるのだと感心します。本を作るのはちょっと大変かも。
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2020/12/27
欲しい本や雑誌を買おうとするときは、いつものようにネット書店にいってしまいます。まず、ヨドバシカメラへいって、ここでなければAmazon。ここでもないときは、楽天ブックス。そして最後はhonto。hontoだけは送料がは330円(3,000円未満の購入)で、近頃はあまり使わなくなっています(以前は無料だったと思う)。本は単価が安いので、送料は考えます。
ネット書店に在庫がないときはどうするか。先週、朝日新聞の書評欄にあった週間ベスト10(ノンフィクション部門)の2位「レールウェイマップル」が欲しくなり、ネット書店を探しましたが全滅。3,520円の本ですが、人気です。
もう一冊、岩波書店の広告で見かけた「英語独習法」。岩波新書の今月の新刊ですが、ヨドバシカメラ、Amazonでは在庫切れ。Amazonなんて送料570円で販売してる(本体は968円)。
「英語独習法」は手に入りますが、「レールウェイマップル」はどうしたものか。楽天ブックスなんて、「ご注文できない商品」になっている。それでいきついたのが紀伊国屋書店のウェブサイト。ネット販売では在庫切れですが、店舗在庫を調べると、二子玉の店にありました。取り置きができるので、これで無事買うことができました。
また「英語独習法」は近くに本屋で平積みになっていて、買ってきました。
電子版で購入すればいいいのでしょうが、古い人間はやはり紙(笑)。本の流通は、いまだ昔のままかもしれません。
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2020/08/08
外山滋比古さんが亡くなりました。享年96歳と長生きされた。
一般的には『思考の整理学』など知に関する著書が知られていますが、文学論、日本語論など多彩な分野での著作がある外山滋比古さん。その中であまり知られていないかもしれませんが、『エディターシップ』という本があります。この著作を大学のときに読み、編集者になろうと思いました。本書から印象的な文章を引用します。
「一冊の雑誌の中へ多様な価値を同居させて、それが混乱でなく、独特な調和をかもしだすとき、読者はそこからすぐれたオーケストラによる交響楽に似たものを感ずるであろう。そのオーケストラのタクトを振っているのがエディターというわけであるから、エディターは現代における桃太郎、司祭だということになる。ただ、原稿を集めて並べているのとはわけが違う」
部屋の本棚に置かれていた40年前にかった『エディターシップ』。久しぶりに再読しようと思います。
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2020/07/26
銀座にちょっと寄って(長居はできないけど)、久しぶりに歩行者天国を歩き、教文館書店へ。ギンザシックスにある蔦屋を除けば、本屋はここだけかな。有楽町に三省堂はありますが、ちょっと離れている。
外出を自粛するように言われている(?)ためか、店内は人が少ないです。そもそも混んでいる本屋はそんなにないです(苦笑)。平積みの本を眺めて、村上春樹の短編集を買いました。
この店では2種類のブックカバーから色を選べます。緑系と茶経の2種類。茶色のをつけてもらいました。本屋でもレジ袋は有料化されていますが、ブックカバーは無料です。
ブックカバーをつけてくれる本屋は減っている気がします。有隣堂でも「2020年7月1日(水)より、ブックカバーはご希望のお客様におかけしております」とホームページにありました。ブックカバーがない店は、むき出しで本を持ってかえるのですね。これもちょっと味気ない。しかたないことですが。ブックカバーをネットからダウンロードできるサービスもあります。ブックカバーも自分で用意する時代なんですね。
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2019/12/31
ネットで報じられていますが、アメリカの前大統領・バラク・オバマが1年間で気に入った本のリストをSNSで公開し、この中に村上春樹の『女いない男たち』(Men Without Women)が入っています。
「公開されたのは38冊。その中で日本の作品は、作家・翻訳家の村上春樹氏の『女のいない男たち』が唯一含まれている」(HAFFPOST 12/29)
オバマさん読書家です。
「週刊東洋経済」の今週号(12/28-1/4)は「2020大予測」ですが、この中で小説家の高村薫と大沢在昌にインタビューしている記事があります。
詳しい内容は本誌を読んで頂くとして、お二人に共通する印象的なコメントがあります。
高村薫に、こう訊きます。
ーこうした時代、髙村さんはどういう小説を書いていきますか。
「小説はもういらない。今もそうなりつつある。大人もスマホで自分の興味のあることしか見ないでしょ」
また、大沢在昌には、こう問います。
ー創作活動のうえでは刺激的な時代だと思います。
「小説家としては厳しい時代だと思います。(中略)出版社も昔は花形でしたが、もうオワコンでしょう」
お二人の話、核心をついています。
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2019/11/06
週プレの糸井重里さんのインタビュー記事で知った『岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。』(ほぼ日刊イトイ新聞)を読みました。任天堂の社長をつとめ、惜しくも55歳で早逝した岩田聡さんの発言をまとめた本です。岩田さんの言葉はほぼ日刊イトイ新聞と任天堂のサイトで読むことができます。しかし「ウェブサイトのテキストというのは、宿命的にたくさんのことばに埋もれていくものですし、いつの間にか二度と探せなくなったりもします」と本書の<はじめに>に書かれているとおり、一冊の本に編まれてこそ出会える言葉があります。
任天堂という個性豊かな企業のトップをつとめた岩田さんの発言は、どれも面白く、刺激的で、示唆に富んでいます。すごいなあ、と思うことがしばしばです。折に触れ、読み返すべき素敵な一冊だと思います。

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2019/06/13
20年以上、マツダファンをやっています。1998年に2代目ロードスターを買い、ずっと乗って、5年ほど前にCX-5を買いました。今でこそ、マツダはいい車を出し、企業業績もいいですが、厳しい時代もありました。業績不振、経営危機からフォードの傘下に入り、新車をまともに出さない時期もありました。
『マツダ 心を燃やす逆転の経営』はマツダ復活の中心にいた元会長の金井誠太氏が語るマツダの真実の姿です。本の帯には<なぜ”地獄”から復活できたのか>とあります。
マツダファンには藤原清志(現副社長)、人見光夫(エンジン開発の総帥)が有名人でイベントで話をうかがう機会がありました。でも金井さんのやってきたことは知ることがありませんでした。この人はすごいです。フォードに経営権が握られていた時期に、大きな新しいクルマづくりのやり方を計画し、実行してしまいます。
企業で人がイキイキ働くにはどうしたらいいか。そのヒントがこの本にあります。
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2019/05/27
先日、白山のplateau booksにいき、見つけた『京都の中華』(姜尚美著)。京都の大学に入ったし、タイトルにひかれて買いました。京阪神エルマガジン社から2012年に出た単行本の文庫化です。280ページほどのうち150ページほどが京都の中華料理店の紹介。
そもそも「京都の中華」というのは著者の造語らしい。でも京都の中華料理店は、独自の味を供しているのがよく分かりました。京都に行く機会はありませんが、ぜひ訪れたい店がいくつもありました。
巻末に著者姜尚美と京都の老舗・菊乃井の村田吉弘との対談「京都の中華と京料理」があります。文庫のために語りおろされたもので、これがすごく面白い。村田が京都の中華、京料理、そして日本の料理について縦横無尽に語ります。中でも京都の中華、京都の料理は「テクスチャーと香りをすごく気にしている」というのは、鋭い指摘です。
京都に行こうとしている方にはおすすめ。
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2019/05/19
昨日の日経新聞読書欄で紹介されていた<Reedee Plus(リーディープラス)>というアプリを試してみました。スマホのアプリですが、
「リーディープラスは2018年5月にサービスが始まった。九州から東北まで全国約150店舗が参加する。アプリ利用者はお気に入りの店舗を「MY書店」として登録し、その書店の情報を得たり、ブックレビューを見たりできる」(日経新聞)
というもの。
書店での買い物で樂天ポイントがたまります。なぜ楽天ポイントかと言えば、このアプリ楽天傘下の取次・大阪屋栗田に子会社・リーディングスタイルがやっているからです。
また<Reedee>という別なものもあり、これが本の管理アプリ。2つのアプリとも裏表紙のバーコードを読み込むと、書籍データが表示され、管理できます。これは便利です。一般的には本のバーコードと書誌データは紐付けされていません。
ただ蔵書管理の機能は<honto>アプリといった既存のものでもできます。トータルな機能でどう差別化していくか。ここが課題でしょう。
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2019/05/11
『梶原一騎伝』という本を読みました。ずっと前に買って、積ん読になっていた本です。奥付には2005年の発行、いつ買ったのだろう。
梶原一騎はもう亡くなって30年以上が経っています。でも、『あしたのジョー』、『巨人の星』は生き続けています。小学生の頃、なぜかマイナーは「少年キング」を読んでいました。この週刊誌にも梶原一騎の『柔道一直線』、『ジャイアント台風』(高森朝雄名義)が連載されていました。
『梶原一騎伝』はジャーナリストの斎藤貴男が書いた詳細な梶原一騎の生涯です。社会問題、経済をテーマとする斎藤には異色の著書ですが、細かな取材と資料調査で、梶原一騎の生きてきた道を描いています。
読んだ本は文春文庫版ですがこれは絶版で、『「あしたのジョー」と梶原一騎の奇跡』と改題されて、朝日文庫から出されています。
再評価がされていない感がある梶原一騎。その功績は大きかったはずです。梶原一騎とその時代を知ることができる一冊です。
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2019/05/07
先日、ワタナベマキさんのトークショーでお目にかかった方が、たまたま同じ職場で働いていたことがわかり、少しお話ししました。その方が描かれた本『暮らしを変える仕事』を読ませていただき、よい本なので紹介します。
「つくる」女性に、仕事と暮らしを丹念に訊き、書かれた本です。
テレビをみていると、会って尋ねたい人が時々登場します。
「これまでどのような場所にいて、どれほどの時間をかけて、いまの仕事に辿り着いたのですか?」
と訊きたくなる人たちです。
(例えば、ジャパネットたかたMCの長谷川さんとか)
本書で著者が訪ねた女性たちも、まさに「会って尋ねたい人」です。履歴書をみせていただいても、どんな道を経て、どんな時を経てきたのか、わからない人たちです(長谷川さんと仕事内容は違いますが)。
「好きなことを仕事にした」女性たちではあるけれど、そのための静かな闘いは、想像を超えたところにある。そんなことが伝わってきます。
人選の妙。そして彼女たちの思いを無理なく書き込んだ著者の力量も素晴らしいと思います。
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2019/05/02
昨年買って積ん読になっていた『村上春樹の100曲』を読みました。タイトルからわかる通り、村上春樹の小説に登場する音楽(曲)を村上作品と絡めて解説する本です。帯には、
「曲紹介から広がる新しい小説の読み方。これ1冊で、村上春樹の小説も、登場する音楽も、全てがわかる!」
とあります。
「80年代以降の音楽」「ロック」「ポップス」「クラシック」「ジャズ」のジャンルに分けられて曲が解説されています。出版されたのが昨年なので最新作『騎士団長殺し』までカバーしています。
村上春樹による『村上ソングス』もそうなのですが、紹介されている曲を聴かないと文章の伝えることを充分に受け取れない。「80年代以降の音楽」「ロック」「ポップス」まではiTunesで聴きながら読んでいたんですが、それ以降「クラシック」「ジャズ」はこれを断念。斜め読みになってしまいました。
時間をかけて、曲を聴きながら読みたい本です。しかし、こんな本がでるのは村上春樹だけだろう。
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2019/04/23
ネットでは料理のレシピが簡単に手に入ります。友人たち(男性)が妻のピンチヒッターで料理を作るときは、ネットで検索して、というひとが多い。彼らはレシピ本は買いません(笑)。
先日の朝日新聞に「川島智子さん 校正したレシピ、3万7100」という記事がありました。料理レシピ専門の校正者である川島智子さんに取材したものです。興味深いことがいくつもあります。
<例えば「パスタをゆでる」という手順が時間のかかるソース作りの前に来ていると、ソースを作っているうちにパスタがのびてしまう>(4月15日 朝日新聞デジタル版)
レシピにも書き方にルールがあるわけです。
川島智子さんが著者のひとりとして出した『おいしさを伝えるレシピの書き方Handbook』があり、購入して読みました。タイトルはレシピの書き方ですが、レシピを通じて料理の基本を知ることができる本です。
この本のターゲットはインターネットで料理を紹介している人のようですが、その人たちがこの本を読むかな、という疑問もあります。でも、いい本です。料理好きにはおすすめです。
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2019/04/15
しまい込んでいた本を見つけました。もう15年も前に出た本ですが、書店のブックカバーがついていました。現在、店舗はない自由が丘の自由書房のブックカバーです。味があるデザインを思い出しました。
街の本屋さんが減って個性的なブックカバーを見かけることがだんだん少なくなっています。先日、宇都宮にいった時に、落合書店に入りました。文庫本を買ったのですが、嬉しいことにブックカバーが選べます。オレンジの可愛いものをつけてもらいました。
大船に昨年秋に開店したポルベニールブックストアにも素敵なブックカバーがあります。ブックカバーを目当てに本屋にいく。そんなことしばらくしていないな。もっと本屋に行かねばいけませんね。
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2019/03/15
食の本だけを置いている本屋をやっているので、興味深く読みました。本が売れないと言われる中、料理本は次々と出版されていて、膨大な本が流通しています。
本書は「料理本批評」(帯の文章による)ということで、あくまで料理に関して書かれた本を研究、批評する本であり、料理家の研究でありません。その点で、例えば阿古真理の『小林カツ代と栗原はるみ』とは論点が違います。
本書では、高山なおみ、細川亜衣、有元葉子、ケンタロウ、冷水希三子といった料理研究家の料理本を取り上げ、細かに論評しています。しかし取り上げた料理研究家には偏りがみられます。
現在、新刊書で流通する料理本(絶版になっていない本)で、冊数が多い料理研究家は(有元葉子を除き)批評の対象にはなっていません。例えば大御所の栗原はるみ、それに続く藤井恵、ワタナベマキ、飛田和緒、行正り香、渡辺有子、坂田阿希子などはレシピ本の世界ではメジャーな存在ですが、取り上げられていません。
この偏りはもちろんいいことで、著者の食べ物、料理に対するこだわりのある熱を感じることができます。そして、ここが本書のもっとも読みどころではないかと思います。
うちの本屋に置きたいのだけれど、仕入れができないのでありません(苦笑)。

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2019/03/08
昨日の朝日新聞に「識者120人が選んだ 平成の30冊」が掲載されていました。「平成時代に刊行された本の中から、朝日新聞が識者の方々にアンケート。120人の識者によるベスト30を紹介します」(好書好日ホームページより)というランキングです。
1位は村上春樹の『1Q84』、2位はカズオ・イシグロの『わたしを離さないで』、3位は町田康に『告白』というランキングです。村上春樹の著作は『ねじまき鳥クロニクル』も10位に入っています。
紙面には村上春樹へのインタビューが掲載されています。平成に書いた作品について村上が語っている内容は、この作家の思いを知ることができ、とても刺激的です。『ノルウェーの森』を書いたのが昭和62年。この作品でベストセラー作家になった村上春樹の平成の歩みは、平坦ではなかったと想像します。
相変わらず注目度の高い村上春樹。そろそろ長編書いているのかな。
平成の30冊
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2019/02/16
今年1月でジャイアント馬場没後20年。プロレスを見なくなり久しいですが、週刊文春の書評欄で坪内祐三が『1964年のジャイアント馬場』を取り上げていて、その文章が面白く、買って読みました。
坪内祐三はほぼ同世代ですが、書評で『ジャイアント台風』のことに触れていました。昔『少年キング』に連載されていたジャイアント馬場の物語です。これを熱心に読みました。当時は『少年キング』はマイナーでしたが、面白い漫画はいくつもありました。『ジャイアント台風』は高森朝雄(梶原一騎)の原作で、優れた作品でした。
肝心の『1964年のジャイアント馬場』は、2014年にでた単行本を文庫化したもの。シンスケ・ナカムラを織り込んだ終章などが書き加えられています。
750ページをこえる大作ですが、面白い。飽きることなく、最後まで読み続けました。タイトルの「1964年のジャイアント馬場」は1964年がジャイアント馬場の頂点だという著者の思いでしょうが、全編はジャイアント馬場の伝記です。ジャイアント馬場という人間の凄さがわかる、まさに力作。昔のプロレスファンには特におすすめです。

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2019/02/14
一昨日のNHKニュース「おはBiz」で「本の“試食”ができるんです?」というテーマで放送されていました。ニュース冒頭の見出しをみて録画したのを見たのですが(このコーナー見る習慣がないので)、内容は「文喫」と「箱根本箱」でした。
本屋好きには今さらの情報ですが、NHK的にはニュース価値があったということでしょう。昔からの概念の「本の立ち読み」を「本の座り読み」スタイルに変えたのは、蔦屋が確立したものでしょう。番組ではこれを「本の試食」と表現しているわけです。
新しい本屋はいくつか誕生していますが、図書館も変化しています。先日、とあるシンポジウムで知ったのですが、昨年オープンした札幌市民交流プラザにある図書館は変わっています。ここの図書館は本の貸し出しをしません。
「図書の貸し出しはしないので、いつ来ても閲覧可能」(ホームページより)
と、大胆な図書館です(笑)。
本をめぐる状況は進化しているようです。
おはBiz「本の“試食”ができるんです?」
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2019/02/06
一昨日の日経新聞で知ったのですが、講談社の学術文庫が「プリント・オン・デマンド(POD)」サービスを始めています。プリント・オン・デマンドとは講談社のホームページによれば、
「Print On Demand=必要に応じて印刷」。ご注文いただいてから、5日以内に発送いたします!だから、品切れなし! 人気書目がいつでも手に入ります」
と、すぐに本が手に入ります。
更に「大文字版プリントサービス」です。
「最新のプリントオンデマンド技術で、文庫の版面を127%拡大して印刷・製本できるようになりました。ご覧のとおり、老眼の方でも細かい注釈までくっきり読める大きさです」
シニアに優しい本をつくってくれます。
日経新聞の記事によれば、吉川弘文館もオンデマンド出版を2006年から刊行しています。また、三省堂本店にあるオンデマンドもまだサービスをやっています。
オンデマンド出版が広がって欲しいです。やはり、本は紙ですね(笑)。
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2019/02/02
泊まれる本屋といえば<BOOK AND BED>が有名で、現在6店舗と拡大しています。こんどは、マンガに特化した泊まれる本屋がオープンしました。「MANGA ART HOTEL, TOKYO(マンガ アート ホテル トーキョー)」というホテルで、泊まれる本屋という表現は正確ではなく、マンガがたくさんあるホテルです。
昨日オープンですが、ホームページをみる限り、いわゆるカプセルホテルです。場所は神田、小川町の交差点からほど近いビルの中。5000冊のマンガ本が置かれています。そしてすべての本に書評が付いていて、購入も可能。宿泊料は「平日 ¥4,800~¥5,800 程度」と適度な価格です。
楽しそうな泊まれる本屋です。
MANGA ART HOTEL, TOKYO
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2019/01/15
ずっと前に買って、おそらく読了していなかった阿刀田高の『海外短編のテクニック』を読み、紹介されていたジュンパ・ラヒリの『停電の夜に』を読みたくなり、ネットストアで検索しました。この本はアマゾンではレビューが70をこえる評価です。
アマゾンとヨドバシカメラのサイトで検索してみると、結果が違います。もちろん『停電の夜に』はいちばん最初に表示されますが、その後に表示される内容(本とかDVDとか)が異なっています。ヨドバシカメラでは、『海外短編のテクニック』が5番目に表示されていますが、アマゾンではどこにもありません。専門家は詳しいでしょうが、検索の方法(システム?)が違うのでしょう。
ちなみに、この『停電の夜に』、注文して1週間が経ちますが、まだ到着していません。在庫があるアマゾンに乗り換えようか、本屋に行って買ったほうがいいかな、と迷い中です。
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2018/12/08
村上春樹が期間限定サイトで質問に答えたやりとりをまとめた『村上さんのところ』が文庫になったので買って、やっと読み終えました。600ページ以上ある本ですが、どれくらい読んでいたのか。映画撮影で使ったうさぎやの包装紙でカバーをしているので、5月から読み始めたようです。ベッドサイドのテーブルに置いて、気が向いたら読む、という読み方だったので、長い時間かかりました。
この本、電子書籍で購入したのですがあまりに膨大で、途中で放棄していました。電子版には3716通のやりとりが載っています。これだけの質問に丁寧に答えた村上春樹の労力、パワーには驚きます。
文庫本の読了を機に電子版に再チャレンジしてみますか。

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2018/11/27
いま、セゾンという企業グループが全盛だったころを知る人は少なくなっているかもしれません。渋谷にはパルコ劇場があり、池袋の西武百貨店にはセゾン美術館がありました。
セゾンをつくった堤清二の評伝『セゾン 堤清二が見た未来』(鈴木哲也著)を読みました。本書の帯に「2020年を前にして、堤清二の考え方を知る。これはずいぶんと面白いぞ。」と糸井重里が書いている通り、刺激的な面白い本です。
企業家の堤清二がやったことを糸井重里はじめ、堤清二を知る人にインタビューし、資料を参照し、丹念に書かれています。堤清二は辻井喬という作家、詩人の顔を持ちます。しかし辻井喬には触れず、あくまで企業家、経営者としての堤清二を描くことにより、その人間像が明確になっています。
堤清二に、2011年に講演を聴かせていただきました。80歳を超えられていましたが、内容の濃い講演でした。
なにせ、堤清二がいなかったら無印良品なかったんだから、すごいです。おすすめの一冊。

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2018/11/20
読み終えないうちにトークイベントにいってしまった『本を贈る』を読了。先の記事で書きましたが、本書は「贈るように本をつくり、本を届けるひと10人の手による10編の小論(エッセイ)集」です。
エッセイを書いた人の職業は、批評家、編集者、校正者、装丁家、印刷、製本、書店営業、取次、書店員、本屋です。それぞれの仕事から綴られた文章は、どれも個性的です。特に、装丁家の矢萩多聞、印刷会社の藤原隆充、製本の笠井瑠美子の文章が印象に残ります。
本書を出版しているのは、三輪舎。中岡祐介さんがやっている小さな出版社です(ひとり出版社なのかな)。オリジナルな本を出していますが、この『本を贈る』は素晴らしい一冊です。おすすめです。

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2018/11/12
映画「ハナレイ・ベイ」を見た後、原作を読みました。村上春樹の短編集『東京奇譚集』に収まれています。小説「ハナレイ・ベイ」は文庫本で40ページほどの短編。映画は1時間40分ほどの作品になっているので、原作にない要素が加えられています。
原作の短編は主人公サチの心情が淡々と書かれていて、映画の強い映像とは違う感じです。さらっとかかれた作品です。
『東京奇譚集』はタイトル通り、不思議なストーリーが盛り込まれた5つの作品が収められています。中でも面白かったのは「品川猿」。この作品だけは、単行本発刊時に加えられた書き下ろし。ちょっと怖くて、ちょっとユーモラスなストーリー。
村上春樹の短編をもっと読みたくなりました。
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2018/11/11
昨日書いた<本でつながるシェアハウス>のイベントが開催されたのは、下北沢にある「本屋を旅する Bookshop Traveller」です。ここどんなところなのか。ネットで見た限りではよくわかりませんでした。ツイッターから引用させてもらいます。
<BOOKSHOP LOVER 和氣正幸が営む本屋・事務所。 「観光のついでに本屋に行く」ではなく「本屋のついでに観光に行く」にするために下北沢に開いた本屋のアンテナショップです>
本屋のアンテナショップ? 実際に行ってみてわかりました。店内には本屋のように書棚が並んでいます。この書棚は本屋に貸し出されています。


書棚は2種類あり、実店舗がある本屋とない本屋とに区別されています。本屋をやりたい人が間借りして本屋ができます。アンテナショップなので、並んでいる本は購入できます。ここをきっかけに、出店している本屋にいってみる、ということにつながります。ビジネスモデルとしても面白いです。
オーナーの和氣正幸さんは「東京 わざわざ行きたい街の本屋さん」などの著作がある本屋さんの専門家です。個性的な本屋が多い下北沢、ここからも新しいことが起こりそうです。
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2018/11/10
一昨日ですが<個人でつくる、本のある空間の作り方 ~本でつながるシェアハウス代表・井田岳志さんに聞く~>と題されたトークイベントに参加してきました。「本でつながるシェアハウス」って何? という疑問が参加した理由。
本でつながるシェアハウスとは、井田岳志さんが吉祥寺で運営してるシェアハウスです。本でつながるとは? ホームページには、
「図書館に住みたい!本に囲まれて、本好きな人と一緒に暮らしたい!『本でつながるシェアハウス』は、読書や図書館が大好きな人のためのシェアハウスです」
とあります。
一軒家に4室あるシェアハウス。リビングに本が図書館のようにたくさんあります。井田さんも何冊あるか正確には把握されていないようですが、蔵書リストはあります。面白そうな本が並んでいます。
本が人と人をつなぐ。新しい方向かもしれません。
本でつながるシェアハウス
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2018/11/06
作家の作品を辿って、かなり以前に書かれた作品を読みたいと思っても手に入らないことも多いです。曾野綾子の作品もそうです。アマゾンで検索しても、最近の随筆はあるけれど、古い小説は少ない。
P+D BOOKSというシリーズが小学館からでています。ここに曾野綾子作品があるので、知りました。P+D BOOKとは、「現在入手困難となっている昭和の文芸名作を、B6版のペーパーバック書籍と電子書籍を同時に同価格で発売・配信する新ブックレーベル」で、2015年から刊行されていて、現在毎月2冊配本されています。
ここに曾野綾子の『虚構の家』と『地を潤すもの』があります。
『虚構の家』を読みました。戦争をテーマに、人の生と死を問いかける作品。はじめて読みました。
P+D BOOKS、最新刊では野坂昭如の『マリリン・モンロー・ノー・リターン』がでています。末永く刊行を続けてください。
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2018/10/22
4年前に最後だったはずなのに、『小さな恋のものがたり』がでていました。みつはしちかこさんの名作の新作、第44集です。新聞の広告で見つけ、さっそく買いました。
あとがきでみつはしさんはこう書いています。
「こんにちは。また元気でお会いできてうれしいです。第43集で完結したはずの『小さな恋のものがたり』。次の第44集が刊行されるとは、我ながらびっくりです」
なぜ、再び『小さな恋のものがたり』を描かれたか。それはあとがきに書いておられます。
新作にはサリーも少しだけ登場します。素敵なラブストーリーが、また始まりそうです。

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2018/10/15
先月だったか、ピストン西沢の番組に馬場康夫が登場していて、懐かしい気分になりました。『気まぐれコンセプト』のホイチョイ・プロダクションを率いる馬場康夫です。ここでホイチョイが新刊『ホイチョイのリア充王』なる本を出すことを知り、購入。しばらく放ってあり、やっと読ませていただきました。
帯に「新・見栄講座」とあります。そうでした、『見栄講座』というのがありました。1983年の発売だから、社会人3年目の時か、遥か昔だな。それからずっと馬場さんはホイチョイやっていたんですね。『気まぐれコンセプト』はまだ連載されています。
『ホイチョイのリア充王』は、80年代後半、バブル景気のころ流行っていたスキー、サーフィン、ゴルフなどのアウトドアスポーツを、2018年の今、楽しむ方法を説明した内容。ポイントはインスタ映えなど、どのようにしたらSNSでイイねをたくさん獲得できるかに絞っていること。
アウトドアスポーツ人口は激減しています。本書に載っているデータによれば、1999年と2016年との比較で例えばスキーは82.3%減、サーフィンは78.6 %減。すごい数字です。
また、本書には「20代は70代より移動が少ない」とあります(多分出典はここ)。若者はアウトドアスポーツをしなくなっているのです。ホイチョイはこんな状況を問題提起したのが、『ホイチョイのリア充王』です。
もう、あのバブルの頃には戻れない。そんな当たり前の事実を確認した本でした。
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2018/09/26
今週末で終わる『半分、青い。』ですが、前半でドラマの中心になったのが少女漫画家・秋風羽織。強烈なキャラクターを披露して人気になった秋風羽織の名言をまとめた『秋風羽織の教え 人生は半分青い』をネットで見つけ、衝動買い(笑)。
秋風の名言(迷言?)をまとめたものに加え、「秋風本人に独占・密着取材」したとか。秋風本人はどこかにいるようです。
面白い本です。巻末に秋風羽織を演じた豊川悦司と脚本の北川悦吏子にインタビューがありますが、これが興味深いです。
豊川悦司が、
「今回、北川さんは、自分の思いは秋風に託して、鈴愛や律、ユーコ、ボクテたちのことは俯瞰して書いている気がしますね」
と語り、これに対し北川悦吏子は、
「モノをつくることへの考え方は、すべて秋風羽織に託していました」
と言っています。
『半分、青い。』に人気に便乗した企画ですが、じっくり読むと味わい深い一冊です。
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2018/09/05
アサヒビールがシェア1位を獲得したのはかなり前のことです。今年の上半期はキリンが盛り返し、アサヒ37.6%、34.0%です。キリンは1位が視野に入っています。アサヒの巻き返しは如何に。
かつてアサヒはシェアが10%をきり、夕日ビールと揶揄されていました。このアサヒビールに住友銀行から社長として乗り込み、シャアトップにしたのが樋口廣太郎です。
『最強の経営者 アサヒビールを再生させた男』(高杉良著)を読みました。アサヒビールが再生したのはひとえにスーパードライでしょう。圧倒的な商品力とそれを販売した営業力。スーパードライの成功を指揮したのが樋口廣太郎。
本書で、樋口廣太郎が経営者としてどれほど才能を持っていて、その力をどのように示したかをテーマにして書かれています。経営者としての視点で物語が綴られます。
なので、アサヒビールの社員たちがどれほど苦労して、企業を再生させたかは、あまり書かれていません。あくまで樋口廣太郎とそれに続く経営者たちの物語です。
今の時代、こんな豪快な経営者がいるのか、と思いながら読みました。ちょっと古い時代を知るためにはオススメです。
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2018/08/09
2025年、大阪に万国博覧会を招致する活動が進んでいます。国を挙げての招致活動ですが、開催国が決まるのは今年の11月。
そんなタイミングからか、『地上最大の行事 万国博覧会』が出ました。著者は70年大阪万博の総合プロデューサーであった堺屋太一です。
官僚だった堺屋太一が、まだ日本に万国博覧会に対する認識がほとんどない頃から<万国博博士>を自認し、万博の重要性を官僚、政治家に説いてまわり、大阪万博を実現するまでの道のりを細かに書いています。
少々、自慢話が鼻につきますが、でも、堺屋太一の成したことはすごい。約半年の開催期間での入場者は6,421万人。当時の万博史上最多の入場者です。
いくつも面白いエピソードが書かれています。たとえば、マ大阪万博の開催前にーシャル・マクルーハンが「万国博覧会は過去のものになった」と発言した。これに対し、堺屋太一はモントリオール・ガゼット紙に反論を投稿。これをフィラデルフィアの新聞が取り上げ、これに対しマクルーハンが反論。紙面上で議論が展開された。堺屋太一の万博への情熱が伝わってくるエピソードです。
2025年、大阪に再び万博は来るのでしょうか。あと、3ヶ月で結果はでます。
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2018/07/13
『ロング・グッドバイ』を読み終えました。村上春樹が訳したレイモンド・チャンドラー作品です。かなり前に買ったのですが、文庫本で600ページほどあり、なかなか進みませんでした。
村上春樹にとって『ロング・グッドバイ』はスコット・フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』と、ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』とともにこれまでの人生で巡り会ったもっとも重要としている小説です。
レイモンド・チャンドラー作品は有名な台詞がある『プレイバック』を読んだだけで、たぶん『長いお別れ』(清水俊二訳)は読んでいないと思います。
『ロング・グッドバイ』は村上春樹の名訳でありながら翻訳の小説で、更に600ページ近くあり、文章を味わう余裕がありませんでした。フィリップ・マーロウがタフ、ということはわかりました(笑)。
村上春樹が長めの訳者後書きを書いています(50ページほど)。これを読むと、『ロング・グッドバイ』をどう味わうか、ちょっとヒントを与えてくれます。時間を少し置いて、再読したいと思います。
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2018/05/05
山田太一の『夕暮れの時間に』を読みました。先日、『五年目のひとり』を見たのが、山田太一さんへのきっかけです。『五年目のひとり』は一昨年に放映されたテレビドラマ。それを今頃見るなんて、なんとも情けない話です。
ドラマを見た後、週刊文春の先週号で、坪内祐三が『夕暮れの時間に』を取り上げていて、買いました。
この>『夕暮れの時間に』は2015年に単行本として出されたものを文庫化したもの。ここ10年ほど、山田太一が70代に書いたエッセーを編んだ一冊です。
脚本家とし珠玉の作品を書いてる山田太一ですが、エッセーも味わい深いです。まず、本をたくさんよんでおられるのだなと、(当たり前のことに)感心します。心に引っかかる文章がいくつもあります。
文庫本では巻末に特別インタビューが載っています。山田太一は昨年1月に脳出血で倒れました。半年余り入院し、退院後のインタビューです。昨年、山田太一脚本を復刊した「山田太一セレクション」を発刊した出版社・里山社の代表・清田麻衣子がインタビューしています。これだけでも読む価値があります。
いまという時間の過ごし方を考えさせられる、山田太一のメッセージが込められた一冊です。

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2018/05/04
曾野綾子の小説を読み始めたのは、大学生のとき。『神の汚れた手』が最初に読んだ小説でした。もう、40年も前のことです。
最近はエッセーを書くことが多い曾野綾子の著作は、あまり読ません。曾野さんの神髄は小説の中にあると思っているからです。しかし、『夫の後始末』は手に取りました。夫、三浦朱門の在宅介護を綴った記録です。
本の帯にはこうあります。
<夫・三浦朱門と過ごした夫婦の「最後の日々」>
夫婦であれば、避けることのできない別離までの日を、曾野綾子は淡々と、しかし、愛情を込めて書いています。三浦朱門と曾野綾子はいい夫婦だったんだな、と羨ましい気持ちになる文章です。
老後、介護を考えさせられる良書だと思います。
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2018/01/30
コインチェックのネム流失問題は日ごとにこの会社の管理体制が甘かったことが明らかになっています。ベストセラーになっている『いまさら聞けない ビットコインとブロックチェーン』は先日もかいたように、コインチェックのCOO大塚雄介氏の著書。
ビットコインなど仮想通貨を理解するために不可欠なブロックチェーンもわかりやすく書かれていて、全体的にはいい本だと思います。本書の中で、「ビットコインが盗まれる心配はないの」という章にはこう書かれています。
「(顧客からの預かり資産をすべてオンライン上に置いていないとしたうえで)全体を100とすると、そのうち数%しかオンライン上に置かず、それ以外はインターネットから物理的に切り離して、オフライン環境で厳重に保護してあります」
ビットコインとネムは別な管理だったというわけですか。
本も著者の背景に気をつけて読まないといけませんね、。

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2017/08/06
アートを題材にした小説が多い原田マハの絵画を巡るエッセー『いちまいの絵 生きているうちに見るべき名画』を読んでみました。小説は直木賞の候補になった『楽園のカンヴァス』と『暗幕のゲルニカ』を読みました。この2作品にもいろいろ言いたいことはありますが、エッセーならどんな展開の文章なのか興味があって手に取りました。
集英社の読書情報誌『青春と読書』の連載されたものをまとめたもので、著者が選んだ26枚の名画のついての思いと歴史的な事象を中心として文章が綴られています。
原田マハの絵画の好みが分かるのは興味深いところですが、文章はいささか退屈です。名画が目の前に思い浮かび、イメージが広がる文章が読めるかと思っていたのですが、残念ながらそうではありませんでした。アートの旗手と言われている作家なんだからと期待していたのですが、なんとも味気ない読後感でした。
アート作品を表現することの難しさを感じた一冊でした。
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2017/08/02
先日、芥川賞を受賞作した『影裏』(沼田真佑)を読みました。かつて仕事をしていた盛岡が舞台ということで手に取った作品です。小説のオープニングから展開する自然の描写は丹念に書かれ、表現豊かです。方言も(恐らく)忠実に書かれていると思います。ただ、(無知ゆえですが)、読めない漢字がいくつもあり、ルビを振って欲しかった(著者の責任ではなく、編集者の仕事ですが)。辞書を引くことで、しばしば読み進めることが中断しました。
400字原稿用紙で100枚ほどの短編小説ですが、読むのに時間がかかりました。読めない漢字があるせいもありますが、小説の流れを理解するのがいささか難しかった。著者はこの小説で何を伝えたいのかを分かるために、時にページを戻して読む必要がありました。
モティーフは3.11とLGBTだと思えますが、この小説でどのような意味があるのでしょう。心にひっかからないまま、読み終えてしまいました。
特にLGBTのくだりは事情がすぐに理解できず、読むことを止め、考えることになりました。小説なので、説明することは必要ないですが、唐突に突きつけられた感がありました。単に主人公の輪郭を明確にするために書かれたのか。それともそれ以上の意味があるのか。分かりませんでした。
3.11のことは、小説の流れからは3.11でなくてもいいのでは、と思いました。必然性が感じられない、ということです。
<電光影裏春風を截る>という言葉が小説の終盤部に書かれています。この言葉は(これも無知で知らなかったのですが)禅語のようですが、小説の流れではこれも唐突な印象です。タイトルの「影裏」もここから取られているのでしょう。この言葉の意味を理解しないと、小説そのものも理解できないかもしれません。ちょっとハードルが高いです。
ありきたりの感想ですが、次回作を楽しみにしたいと思います。
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2017/07/22
先日、直木賞が発表になりましたが、前回(2016下期)の受賞作『蜜蜂と遠雷』(恩田陸)を読みました。いまごろという感じですが、ちょっと理由があり、購入。恩田陸の作品は『夜のピクニック』を読んだだけです。
三年に一度のピアノコンクールでの物語。天才ピアニストたちが第一次予選から第三次予選、そして本選で展開する競争が描かれています。
著者の音楽、クラシックの知識にまず圧倒されます。全編、美しく、情感豊かな言葉で書かれている文章は見事です。 「ノスタルジアの魔術師」といわれるだけあり、さすがです。
ただ、クラシック音楽を聴かない身には、よく分からない、というか感じられない部分が多すぎました。2段組、500ページを超える大作ですが、もう少し短くてもよかったかな、とも思いました。読んでいて、途中で飽きてきました。高尚な作品は未熟者にはちょっと読むのが大変でした。
クラシック音楽ファンにはおすすめかもしれません。

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2017/07/10
翻訳家としての村上春樹の仕事をまとめた『村上春樹 翻訳ほとんど全仕事』を興味深く読みました。本書は2つのパートで構成されていて、ひとつは「翻訳作品クロニクル」で村上春樹が翻訳した本を自身で解説。あとひとつは「翻訳について語るとき僕たちの語ること」で、翻訳家の柴田元幸と村上春樹の対談です。
「翻訳作品クロニクル」を読むと、「こんなに沢山」と驚きました。『グレート・ギャツビー』しか読んでいません。いかにアメリカ文学に興味がないか、読んでこなかったかを思い知りました。
柴田元幸さんとの対談もすごく面白い。翻訳の話もいろいろ楽しいですが、それに加えて村上春樹のこれまでの創作裏話みたいなことが語られていて、これが刺激的です。
村上春樹、今更ながらすごい作家ということを認識しました。

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2017/07/07
言語学者の鈴木孝夫先生の講義を大学の時に聴かせていただきました。以来、著作を何冊か拝読しています。鈴木孝夫著作集も持っています(調べてみたら、今は廃刊です)。大学の時から四十年ほど経過しましたが、鈴木先生は元気に活躍されています。今年91歳になられます。
鈴木先生の言語社会学を勉強しました。大学の時、一時熱心に英語をやっていたので、日本語と英語、西欧語の対比から説く言語社会学に心酔していました。
平田オリザさんも鈴木教の信者です。『下山の時代を生きる』は鈴木先生と平田オリザの対談。タイトルの通り、人口が減り、成長もほとんどない日本で「いかにして山を降りるか」をテーマに二人が語った対談です。鈴木先生の博学ぶりと平田オリザの地方での体験が融けあい、いい対談になっています。
日本の明日を考えるきっかけになる刺激的な一冊です。
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2017/04/02
『騎士団長殺し』を読み終えました。村上春樹の本を発売日に買って(今の時代、単行本で発売日にニュースになるのは村上春樹とハリー・ポッターくらいでしょう)。そして、発売日から1ヶ月以上経ってしまいましたが、ほぼすぐに読み終えることなど、村上作品では初めてのこと。
ネットでの書評は事前に一切目を通さず、読みました。面白い小説です。なんでこんな面白い文章かけるのだろう。村上春樹だからでしょう。読後にアマゾンのレビューを少しみましたが、ひどいこと書かれてますね。レビューなんて信じないことです。
1000ページをこえる長編ですが、飽きることはありません。そして、読み終えたあと、明日もなんとか生きてみよう、という思いにさせてくれる幸せな長編です。ここが村上春樹作品の素敵なところかもしれません。
今朝の朝日新聞に村上春樹のインタビュー記事が掲載されています。村上春樹はこう言っています。
「物語は即効力を持たないけれど、時間を味方にして必ず人に力を与えると、僕は信じている。そして、できればよい力を与えられたらいいなと希望しています」
<時間を味方にする>ということは、『騎士団長殺し』でも使われているキーワード。この意味を考えるのもちょっと楽しい。
積ん読になっている人は、早く読むことをおすすめします。
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2016/11/02
村上春樹の短編集『女のいない男たち』が文庫になり、読みました。まえがきによれば『東京奇譚集』以来九年ぶりの短編集です(『東京奇譚集』は楽しく読んだ記憶があります)。『女のいない男たち』では6編の男と女の短いストーリーが心に引っかかります。
5編が雑誌に掲載されたものと単行本のために書き下ろされた1編が加えられた6編。まえがきによれば、村上春樹は短編小説をまとめ書きします。『女のいない男たち』はタイトル通り「女のいない男たち」をモチーフに書かれた6編です。
女のいない男、というモチーフは小説ではスタンダードなもの。しかし村上春樹の紡ぐストーリーはどこにでもありそうな話を達者な文体で展開します。面白いです・
60代半ばで男と女の小説を書く村上春樹のエネルギーに感心しました。
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2016/06/29
うちのキッチンスペースで4月に撮影された書籍『「ベジッティ」で野菜たっぷり! グルテンフリーのベジヌードル☆レシピ』(いとうゆき・二見書房)が発売されましたので宣伝です。
ベジヌードルってご存じですか。恥ずかしながら知りませんでした。ベジヌードルとは野菜を細く長く麺状に切って、麺として食べることです。「野菜の麺」ですね。
ベジヌードルをつくる道具はいくつかありますが、本書では「ベジッティ」を使っています。いとうゆきさんによるレシピはパスタからサラダ、スープ、おかず、デザートなど、全51レシピが掲載されています。
ベジヌードルはNHK「あさいち」で先月取り上げられるなど、注目されています。
グルテンフリー、カロリーオフ、野菜たっぷりなど身体にいいベジヌードルです。美味しそうな料理がたくさん載っています。私も一冊買いました。ヘルシーな料理に興味がある方にはおすすめです。

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2015/10/23
今年の6月に銀座の森岡書店で夏葉社・島田さんの話をうかがう機会がありました。夏葉社は島田さんがひとりでやっている出版社です。ひとりでも出版社ができるといささか驚きでしたが、『”ひとり出版社という働きかた』(西山雅子著・河出書房新社)を読むと、ひとりでやっている出版社はいくつもあり、さらに驚きました。
本書ではひとり出版社を営む11人が登場します。西山さんがそれぞれの出版人にインタビューし、丹念に文章にしています。ひとりで出版社を始めてのはそれぞれの思い、事情がありますが、どの方も本、出版に託す心は熱い。ひとりで会社をやるのは大変ですが、出版社はやることが多い。凄いと思います。
いつかは出版社をやってみたい。そんな妄想を起こさせる素敵な1冊です。

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2015/10/18
週刊ダイヤモンドの最新号(10月17日号)では<「読書」を極める!>が特集。読書の秋という季節柄のテーマ、それに書店事情、図書館のいくつかの問題など時事ニュースもある中での特集でしょう。
特集は3つのパートから構成されています。まず<知性を磨く読書術>、それに続けて<「新しい図書館」戦争>そして<出版不況を戦う書店>の3パート。
面白かったのはやはり<「新しい図書館」戦争>です。TUTAYA図書館問題はネットなどでかなり語られている感もありますが、「図書館を核にしたまちづくり”TUTAYA流”の限界」は、TUTAYAが指定管理者として運営を受託した海老名市立中央図書館のレポートが現場の実態をよく伝えています。ちょっとひどいな、という印象です。その一方で伊万里市民図書館も取り上げ、図書館の運営について考えさせられる記事になっています。
<出版不況を戦う書店>では村上春樹の新刊買取で話題をとった紀伊國屋書店の高井社長にインタビューした記事が興味深いです。この書店、まだまだ闘う気が充分です。
雑誌のとっては読書というのは普遍のテーマですが、どれほどダイヤモンド読者の興味をひいたのか。そこが気になるところです。
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2015/09/03
先々月の7月にでた『村上さんのところ コンプリート版』を買いましたが、まだ”ラン! ラン! ラン! (走ること)”と”ドライブ・マイ・カー(クルマの話)”の2章分しか読んでいません。全部で23章あるのでほんの一部ということです。
村上春樹の国内での電子書籍は初めてで(そういえば8月28日には『走ることについて語るときに僕の語ること』が電子化されました)、コンプリート版は単行本8冊分あるとかで、まあゆっくり読んでいくつもり。電子版だと目に前に本がないので、「読まねば」という脅迫観念がないので、なかなか進みません。
村上春樹といえば、今月刊行される『職業としての小説家』を紀伊國屋書店が初版10万部のうち9万部を出版社から直接買い付けて、自社店舗のほか他社の書店に限定して供給するというニュースが伝えられています。何故このようなことをするのか。
「狙いについて紀伊国屋書店は『初版の大半を国内書店で販売しネット書店に対抗する』と明言した」(8月21日日経新聞)
といいます。ネット書店とは明らかにAmazonを意識してのことでしょう。
「紀伊国屋書店は売れ残りリスクを抱えるが店頭への集客につながると判断した」(日経新聞)
といいます。
村上春樹という超強力なコンテンツだからこそできる戦法ですが、Amazonに対抗する方法として有効なのでしょうか。単に喧嘩を売っているだけではないか。そんな印象を持ちます。
この紀伊国屋書店の販売を村上さんはどう思っているのか。そこがいちばん気になります。
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2015/06/16
街の本屋でも料理を扱う書籍、雑誌は必ずあります。大規模書店にいくと、数多くのレシピ本が並び、どれを選ぶか迷ってしまいます。本の数に圧倒されますが、レシピを著している料理研究家、料理家の多さにも驚きます。
『小林カツ代と栗原はるみ -料理研究家とその時代-』(新潮文庫)は料理家を時代に沿って論じた質の高い評論です。戦後、高度成長期以降に登場した料理研究家を社会情勢、時代背景、人々の暮らしかたから分析しています。また、料理家たちがどうしてその時代に活躍したのかを料理家のキャリアから読み解いています。
時短料理で革命を起こした小林カツ代。カリスマ主婦として時代の要請に応えた栗原はるみ。二人のスター料理研究家に多くのページを割き、料理研究家が家庭の料理に果たした役割が論じられています。
興味深いのは主婦について小林カツ代と栗原はるみの対応。小林は1994年「料理の鉄人」に出演して、鉄人陳建一に勝利します。このとき、テレビ局は「主婦の代表」というキャッチフレーズをつけようとしますが、小林カツ代はこれを断固拒否。一方、栗原はるみは有名になってからも主婦だと言い続けたといいます。
時代に沿いながらレシピを作ってきた料理家たち。その真実に迫った価値ある一冊です。

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2015/06/13
一冊の本を売る森岡書店銀座店では、一冊の本をテーマにしたトークイベントを開催しています。今月の10~14日は詩人・黒田三郎の詩集『小さなユリと』を展示しています。この本は昭和35年に昭森社より発刊されたものを復刻出版したものです。出版したのは夏葉社。夏葉社は島田潤一郎さんが2009年に立ち上げたひとり出版社です。
昨日、島田潤一郎さんと森岡書店店主の森岡督行さんの対談イベントに参加してきました。店内に椅子を並べてのトークイベントの参加者は10名ほど。
トークは森岡さんが聞き手になって、島田さんの話を聞くというペースで進みますが、時として森岡書店、森岡店主のことにも話が及びます。
『小さなユリと』を復刻した志、経緯から、夏葉社の経営のことまで、興味深く、面白い話をきくことができました。
出版が厳しい今の時代にひとり出版社を運営し、紙の本を出版している姿勢に感動します。読者とどのように向き合って本を作るか。そのヒントが夏葉社の出版活動にはあるのではないか。そんなことを教えられたトークイベントでした。

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2013/09/16
昨晩、テレビで「いねむり先生」が放映されていました。同じ時間帯に半沢直樹とNHKスペシャルがあったため、録画しておきました。原作となっている伊集院静の自伝的小説『いねむり先生』をちょっと前に読みました。作家で、ギャンブルの神様ともいわれた色川武大との交流を描いた作品。
作品全体を通じて、麻雀、競輪などのギャンブルの興ずる二人の姿が描写されます。麻雀のルールも知らず、競輪場にも足を踏み入れたことのない私にとっては、ギャンブルについての表現がほとんど分からず、その背後にある心の動きも理解できません。きっとギャンブル好きが読めば、面白さがわかる小説でしょう。
しかし、伊集院静の表現はうまい。色川武大という人の作品を読んだことがなく、生前の活躍も知らない(確かイレブンPMにでていました)のですが、そこに本人がいるようなイメージが浮かび上がります。色川のヒューマンな人柄が伝わる達者な伊集院の描写です。
小説で描かれているのは、伊集院と色川が出会う1987年冬から、色川が亡くなる1989年4月までの1年半ほどの時代です。伊集院が夏目雅子を亡くしたのが、1985年9月(夏目雅子は学年でいうとひとつ下で、ほぼ同世代)。失意の中、色川と出会い、立ち直っていく姿が描かれています。
1980年代後半は楽しく、そして恐ろしい時代でした。バブル景気の中にあり、ある意味滅茶苦茶な時代だったと思います。『いねむり先生』を読んでいると、ギャンブルのことは分からないながら、その時代の躍動感を感じます。お行儀の良い時代の今、『いねむり先生』で描かれた人間たちの生き方に憧れてしまいます。あんな時代はもう来ないだろうな。そんなことを、また思ってしまいました。
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2013/09/04
テレビドラマ「半沢直樹」の大ヒットで原作者・池井戸潤の作品が人気です。書店では特設コーナーができ、地元の図書館ではほとんどの本が貸し出し中。凋落していると言わますが、やはりテレビの力は凄いことを実感します。
池井戸潤の著作は読んだことがなかったので、この機会に読んでみることにしました。まず、「半沢直樹」の原作本である『オレたちバブル入行組』。まさにドラマのストーリー通りで(当たり前)、あまり面白くなく中断。次にデビュー作で江戸川乱歩賞受賞作の『果つる底なき』。これも半沢直樹と同じく、銀行を舞台にしたミステリーです。
ストーリー、舞台道具などよく考えられていて、面白く読みました。ちょっと殺人が多すぎる感がありますが。池井戸潤作品は銀行など金融機関が舞台の一つになり、融資にからむテーマが多いようです。
これは池井戸潤が慶應義塾大学を卒業後、三菱銀行に入行(銀行の場合、なぜか入行)したことによります。32歳で銀行を辞めているそうなので、10年ほどの仕事経験がいくつもの作品になっているわけです。
『オレたちバブル入行組』の冒頭に、半沢直樹の大学時の話が描かれます。半沢直樹は慶應義塾大学の学生の設定になっています(池井戸潤はこの大学が好きなんだなと推測します。小説のタイトルになっているバブル入社組とは、1988年から1992年くらいまでに入社した世代のことを指します。新卒は超売り手市場でした。池井戸潤より7歳年上の私の世代は、就職は氷河期に近い状態でした。時代と就職は、運も大きく作用するものです。
池井戸潤の小説は、バブル世代からの視点で書かれたものとして読むのも、ひとつの楽しみ方ではないか。そんなことを感じました。『下町ロケット』もまだ読んでいないので、これから拝読しようと思っています。
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