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2025/05/22

柳田邦男、執念の『それでも人生にYesと言うために』

 読み進めるのがつらい本でした。間もなく89歳になる柳田邦男『それでも人生にYesと言うために JR福知山線事故の真因と被害者の20年』。福知山線の事故から20年、著者は事故調査に携わるとともに、遺族、重傷を負った被害者たち、医療従事者、企業の対応などに取材を重ね、570ページをこえる作品で、「いのち」とは、そして生きるとは何かを問いかけています。

 多くの悲しみ、苦しみに接しながら、著者は決して感情的にならず、抑制された言葉で綴っています。そのため、より一層、描かれた人たちの心の内面が伝わってきます。

 福知山線の事故については松本創の『軌道 福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い』(2018)があります。この本は妻と実妹を奪われ、娘が重傷を負わされた都市計画コンサルタントの淺野弥三一のJR西日本との闘いを追ったドキュメンタリーです。
『週刊文春』(5月1・8日号)に松本創が4月25日を前に「福知山線脱線事故20年 JR西日本と遺族の埋まらぬ溝」を寄せています。ここで淺野弥三一が柳田邦男の本書を読んだ感想を記しています。
「柳田さんもすごい執念やわ」
 浅野はもう何年もJR西日本が主催する追悼式には出席していない、ということです。

 事故に関わってしまった方々が、人生にYesと言えるように、と祈ることしかできません。

Yes

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