バブル兄弟を描く
バブル経済とは何だったのか、改めて考えさせられました。東京オリンピックの収賄容疑で逮捕され、いまだ裁判中の高橋治之と総資産1兆円超のイ、ア、イグループを展開した高橋治則(2005年死去)。『バブル兄弟』(西崎伸彦 著)はバブル経済という狂乱の時代から現代へとこの国が辿った明るくない道を、一歳違いの希有な兄弟を描くことで照らし出します。「週刊文春」の長期連載を単行本化。本書のサブタイトルは”五輪を食った兄”高橋治之と”長銀を潰した男”高橋治則。
連載時から読んでいましたが、単行本で通読すると著者の深く鋭い取材に驚き、感銘します。治之には複数回インタビューし、治則の長年の愛人にも直接取材しています。
章タイトルは3つの名詞でつけられていますが、第1章が本書の内容ほとんどを語っているように思えます。「慶応・電通・日航」。
バブル経済がはじけ、我が国は「失われた30年」へ。そして今、緩やかに衰退の坂を下っています。
本書に最後に著者・西崎伸彦はこう書きます。
「狂乱のバブルに踊り、栄光と挫折の物語を生きた二人は、時代が求めた最後のアンチヒーローだった。」
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