論理的思考を考える
最近ですが、「杉田敏の 現代ビジネス英語」で米国の大学入試にはエッセイの提出が必須ということを知りました。もちろん作家などが書くエッセイではなく、ある型に沿って書く論理的な文章です。
『論理的思考とは何か』(渡邉 雅子 著)で論理的思考はひとつではなく、思考する目的にして合った思考法を選ぶ必要が要る、と著者は論じます。
著者はまず、基本の概念として論理学、レトリック、科学、哲学の推論の型とその目的を論じます。これを踏まえある価値に紐付けられた4つの領域の思考法を使い分けることが必要と説きます。
4つの領域と各領域の作文の型は、経済領域(アメリカ・エッセイ)、政治領域(フランス・ディセルタシオン)、法技術領域(イラン・エンシャー)、社会領域(日本・感想文)として、それぞれについて分析しています。
日本ではアメリカのエッセイ(5段落エッセイとされる)と日本語での文章を比較し、論理的でない、という指摘も過去に繰り返されてきました。例えば外山滋比古は『日本語の論理』の中で「日本語の文章がまずいのは、一文一文のまずさではなく、あるまとまりをもった思想や考えをあらわすパラグラフ(段落)の構成がうまくいかないためである」(「文章構成の原理」)と書いています。
しかし、アメリカのエッセイ形式はひとつの型でしかなく、これが絶対ではない。
「論理的思考は世界共通でも不変でもないこと、つまり論理的思考には価値観に紐づいた思考の型がある」
と著者は述べています。
論理的思考についてより深く考える入り口を示してくれる良書です。
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