料理研究家の研究書
街の本屋でも料理を扱う書籍、雑誌は必ずあります。大規模書店にいくと、数多くのレシピ本が並び、どれを選ぶか迷ってしまいます。本の数に圧倒されますが、レシピを著している料理研究家、料理家の多さにも驚きます。
『小林カツ代と栗原はるみ -料理研究家とその時代-』(新潮文庫)は料理家を時代に沿って論じた質の高い評論です。戦後、高度成長期以降に登場した料理研究家を社会情勢、時代背景、人々の暮らしかたから分析しています。また、料理家たちがどうしてその時代に活躍したのかを料理家のキャリアから読み解いています。
時短料理で革命を起こした小林カツ代。カリスマ主婦として時代の要請に応えた栗原はるみ。二人のスター料理研究家に多くのページを割き、料理研究家が家庭の料理に果たした役割が論じられています。
興味深いのは主婦について小林カツ代と栗原はるみの対応。小林は1994年「料理の鉄人」に出演して、鉄人陳建一に勝利します。このとき、テレビ局は「主婦の代表」というキャッチフレーズをつけようとしますが、小林カツ代はこれを断固拒否。一方、栗原はるみは有名になってからも主婦だと言い続けたといいます。
時代に沿いながらレシピを作ってきた料理家たち。その真実に迫った価値ある一冊です。
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