DICの絵画売却
先週末、4日に報道されたちょっと意外なニュースがありました。DICが自社で保有する美術館で展示していた現代美術の絵画を売却したと発表しました。こう書くとなにやら分からないかもしれませんね。DICとは以前大日本インキ化学工業という社名で、インキ製造の最大手です。
このDICは千葉にDIC川村記念美術館を持っています。創業者の川村喜十郎から続く川村家のコレクションを核にした美術館です。今回売却されたのは、バーネット・ニューマンの「アンナの光」で、売却額は103億円とされています。美術館のコレクションではマーク・ロコスの壁画作品とともに、「アンナの光」は美術館の代表的な作品でした。
常識的には美術館がコレクションを売却することが尋常ではありません。会社が自社のビルや土地を売り払うのとは違います。ソニーやパナソニックは自社ビルを売却して、そこにテナントとして入居しています。財務的にはこのほうがメリットがあるかもしれません。しかし、美術館が作品をひとたび手放したら、もどってくる可能性は少ない。それよりも、美術館の命ともいえるコレクションの売却は、よほどのこと。
美術館を持つ企業はいくつもあります。サントリー美術館、出光美術館が代表的でしょう。この2館と川村記念美術館は運営面で異なります。サントリーはサントリー芸術財団、出光は公益財団法人出光美術館によって運営されていますが、川村記念美術館はDICの直営です。直営だから、コレクションの売却が(手続き上は)簡単にできたのでしょう。
昨日のDICの株価は日経平均が170円下げる相場の中で、値上がりしました。保有絵画譲渡に伴う特別利益計上がポジティブ評価 されたようです。
今回の「アンナの光」売却は、企業美術館の価値は何なのかを考えさせてくれる、決して小さくない出来事だと思います。
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