デザイン展を超えた「榮久庵憲司とGKの世界」
不思議な展覧会をみてきました。世田谷美術館で開催中の「榮久庵憲司とGKの世界 鳳が翔く」は、工業デザインの第一人者・榮久庵憲司(えくあんけんじ)が率いるGKの活動の軌跡を見せてくれる企画展です。
実は榮久庵憲司というデザイナーをはじめて知りました。1929年生まれですから、長らく工業デザインの世界で活躍しておられますが、その名前は一般人には広く知られていないのではないでしょうかこれまでにデザインした製品は多数ありますが、例えばキッコーマンの卓上醤油、秋田新幹線こまち、東京都のシンボルマーク、ミニストップのロゴなど馴染みのあるものばかりです。
本展は4つの章立てに分けて構成されています。面白いのは前半の第1章、第2章と後半の第3章、第4章がまったく異なった主旨の展示になっていることです。前半は榮久庵憲司とGKのデザインした製品や、近年取り組んでいるテーマ作品などが並び、いわば普通のデザイン展示です。
これに対し後半の第3章「道を求めて」では、一転して精神のありようが示される展示です。榮久庵は「道具寺道具村」を構想し、2005年和歌山県の山中に、道具千手観音像と五具足を設えた〈道具庵〉と、寝所となる〈月の庵〉を構え、7 日間の山籠修行を行いました。榮久庵は「道具寺道具村」構想を表したインスタレーションとして発表しています。このインスタレーションが再構成され、展示されています。
第4章「美の彼岸へ」では榮久庵とGK による、インスタレーション作品〈池中蓮華〉が展開します。表現するのが簡単ではない不思議な場がここにあります。
「〈池中蓮華〉は、道具寺に安置された道具千手観音像に向かい、修行を続けることで導かれる極楽浄土の世界を、現代の素材とテクノロジーを用いた広大な蓮華池として表現しています」(公式サイトより引用)
心地いい感覚になる不思議なインスタレーションです。
工業デザインという即物的な展示と、インスタレーションを使った精神の表現の対比と落差に驚きながらも、刺激を受ける榮久庵憲司ワールド。暑い夏にはオススメの企画展かもしれません。
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