不調に終わったサーベラスのTOB
先月末を期限として行われていた米投資ファンドサーベラスによる西武HDに対するTOBは、発行済み株式総数の3%分の応募という結果でした。サーベラスの西武HD株の保有比率は35.48%に上昇し、重要な経営事項を株主総会で否決できる3分の1超を確保はしましたが、12%分を買い増す目標にも、また当初掲げた4%分にも及びませんでした。
ちょっと意外な結果です。今回のTOBでサーベラスが提示していた買付価格は1株1400円。西武HDが不祥事が原因で上場廃止(当時は西武鉄道)になった時の終値は485円でした。再上場すれば、この485円は上回るかもしれませんが、1400円まで株価が届くかのか。その可能性は高くないと思えます。
更に、このTOB騒ぎで東証への再上場はしばらく時間がかかるのは間違いありません。サーベラスは筆頭株主の地位を確保していますから、簡単に再上場ができるとも思えません。もし西武の株を持っていたら、TOBに応じるほうが、金銭面だけで考えると、得ではないでしょうか。
この結果から、日本人は外資ファンドによるTOBそのものに拒否感があることがわかります。今回のTOBでは、当初サーベラス側が西武鉄道の不採算路線の廃止、西武球団に売却を提案していると報じられたことも、拒否感を強めることになりました。地元自治体を巻き込んだ反対運動まで起き、株保有者に対しTOB応募を食い止める心理戦に大きく貢献したのでしょう。
しかし、このままでは西武はほとんど変わらない。現状の西武HDが経営の観点からどんな問題、課題を抱えているかはよくわかりません。しかし、かつての堤義明体制から脱却し、改革を実行するためには、外資ファンドなど外からの力で動かすことがもっとも有効ではないか。昨日の日経新聞社説は
「日本経済が活力を取り戻すためには、企業が厳しい要求を出すファンドの力を借りる場面も、今後は増えるだろう。企業はファンドと冷静に交渉し、自社の価値を高めていくべきだ」
と主張します。西武は今回のTOB騒動を踏まえ、大胆な改革が求められています。
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