多崎つくるくんの物語
今年上半期(なぜか上半期が2012年12月~2013年5月)のベストセラー1位の村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を読みました。3年ぶりの書き下ろし新作ということでちょっと期待していましたが、結論から言うとそんなには感銘をうけない作品でした。
前作の『1Q84』は買ったのに、あまりに厚いので途中で放棄しましたが、村上春樹の小説は、『ノルウェイの森』をリアルタイムで読んで以来、ほぼ読んでいます。とはいっても、村上春樹ファンというわけでもなく、小説に込められた難解なメッセージを受け取ることができない情けない読者です。
新作は370ページほどで、圧迫感なく読めます。物語はほとんどリアルな社会を舞台に展開され、わかりやすい。しかし、登場人物の設定などがありがちなものになっていて、俗っぽい印象を与えられます。例えば、主人公多崎つくるの住んでいるのが、自由が丘のワンルームマンション。村上春樹、どうして自由が丘を選んだのか。また、多崎つくるの友人が、レクサスのセールスマンという設定になっています。レクサスが良くないわけではありませんが、手垢のついたブランドを持ち出すことに、ちょっと違和感があります。
また、細かいことですが、このレクサス営業マンの携帯着メロが「ラスベガス万歳」だったりします。もう50年近く前のエルヴィス・プレスリーの映画主題歌です。営業マンは30歳半ばの設定ですが、理由付けされても無理がありと感じます。
読みやすい小説ですが、残念ながらあまり後には残りませんでした。アマゾンのカスタマーレビューで3,2という高くない評価もわかる気がします。4月12日の発売から7日で発行部数が100万部に達したというベストセラー。100万人の読者はどのようにこの小説を読んだのでしょうか。そんなことが気になってしまう作品です。
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