資産フライトの罠にはまる前に読む本
新書は内容から2つに分けられます。ひとつは旬の話題、流行の内容を扱っている新鮮ものの新書と、もうひとつは普遍的なテーマを扱っている新書です。最近は前者の旬のテーマによる新書が目に付きます。雑誌で扱っていいテーマを新書化しているような出版が少なくありません。
本屋で見つけた『資産フライトの罠』(香港インベスメント取材班著・宝島新書)はまさしく今、旬のテーマを取り上げた一冊です。新書はいずれ図書館に入るので、そこで借りればいいのですが、この本が図書館の棚に並んだ頃は、もう新鮮さを失っていると思い、買ってきました。
本書は『資産フライト』(山田順著・2011年10月)の出版でクローズアップされた「資産フライト」の現状を取材に基づきまとめられた本です。資産フライト、とは海外口座をつくり、そこに資産を預け、運用していくことです。
タイトルは『資産フライトの罠』となっていますが、資産フライトを批判しているわけではありません。最初の章で「香港発・資産フライト最新事情」では香港で現地取材された状況が報告されます。続く「国税庁の資産フライト対策」では資産フライトに対する国税庁の対応の動きが紹介されます。
そして「資産フライト8つの罠」で、資産フライトを行うときに陥りやすいトラブルが詳細に述べられます。ここが本書のいちばんの読みどころです。
そして「中間層にとって理想的な資産ファンドとは?」で資産運用の基本的考えが提示され、最後に「いま海外で投資したい金融商品」で具体的におすすめの金融商品が提示されています。
海外口座での運用について、本書では長期的な投資運用を推奨していて、短期的に結果を求める投資は避けるように提言。また、流行にのった安易な海外口座の開設も戒めています。正論だと思います。
ただ時事的な状況を前提に書かれている部分が少なくないので、その状況が変わると本書の価値も変動します。おそらく本書を1年後に読んだら、本から得られるありがたさは目減りしているかもしれません。まさに旬な一冊です。
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