年金消失問題のこと
AIJ投資顧問が巨額の年金を運用の失敗で消失させた問題は、実態が少しずつ明らかになっています。昨日の日経新聞夕刊によれば、損失金額は1092億円。「企業年金資金は主にデリバティブ(金融派生商品)で運用し、03年3月期から2011年3月期までの累計で1092億円の損失を出した」(3月23日 夕刊)
また、AIJはAIJが顧客から運用受託した資金(元本)は1458億円で、11年3月期の資産額を2090億円と公表していて、600億円以上を水増し。そして「顧客に確実に返還できる残余資産は現預金81億円にとどまる」といいます。約1450億円が80億円になってしまったということです。
AIJの問題はひとつの投資顧問会社の起こした事件にとどまらず、厚生年金基金の運用の問題点を広く知らしめることになりました。時代が抱えた企業年金の課題が明らかになったと言うことです。昨日の日経新聞朝刊の記事には厚生労働省が行った厚生年金基金調査の結果が掲載されています。驚くのはその想定利率です。
「過去10年の運用実績は平均年1.2%なのに、9割、502基金の想定利回りは5.5%と実現の見込みの薄い高水準だった」
いまどき年率5.5%の運用利回りなんて夢物語でしょう。よほどのリスクを覚悟しての運用でないとこの利回りはありえません。運用を任せた厚生年金基金も5.5%の運用をどうしたら実現できるか、ということを考えていたんでしょうか。多くの基金が任せたままだったのでしょう。
AIJ投資顧問事件は様々な問題がありますが、単純にみれば詐欺です。顧客から預かった資金を運用せずに、解約の払戻金にあてていたという事実もそうですが、企業年金基金の資産を狙い、虚偽に溢れた営業を行った行為は、まさに詐欺。だますほうが悪いですが、だまされたほうに落ち度はなかったのか。ここが今後、責任問題、特に失った年金をどうするかの論議に関わってくるでしょう。国の公的年金も損失させている基金もあるから事態は深刻です。
もうひとつの年金問題、これも長引きそうです。
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