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2011/12/16

建築アーカイブの重要性

 森美術館で「メタボリズムの未来都市展」が開催されています。もうご覧になった人も多いと思いますが、充実した企画展です(この感想を書いていなかったことを思い出さしました)。この展覧会の関連企画として(森美術館ではパブリックプログラムと呼んでいます)、トークセッションがいくつか開催されています。昨日、その第3回として「危機に瀕する建築ドキュメント 建築アーカイブ設立の可能性を探る」があり、参加してきました。修士課程のときお世話になった先生がスピーカーの一人として登壇されるからです。
 世界で活躍する建築家も多く、日本の建築には注目が集まっています。この日本の建築を培ってきた建築資料を保存する組織、体制が日本にはほとんどありません。これに対し、フランスでは建築資料をアーカイブする体制ができています。例えばポンピドゥー・センターでは建築資料をデジタルアーカイブしています。その中には丹下健三、磯崎新など日本の建築家の作品資料もあります。建築アーカイブがいわば海外流出しているわけです。
 トークセッションではこの事実をきっかけに、日本の建築アーカイブの重要性と可能性を探って、話が展開します。いくつも勉強になることがあったのですが、頭に残ったのはお世話になった先生の話。
「以前、ロンドンの古書店でいわれたことがあります。古書店にある資料はオリジナルの他にリプリント(コピー)があるのでしょう? と尋ねたら、『オリジナルはインスピレーション、リプリントはインフォメーション』と言われたのを思い出しました」
 現代ではアーカイブといえば複写、すなわちデジタルアーカイブに結びつけます。電子化すれば、事は解決、と思ってしまいます。オリジナルのもつ意味、重要性をともすると軽視しがちかもしれない。
 アーカイブということの難しさ、そして建築においてのアーカイブとは、を考えさせられた貴重な内容でした。

以下、森美術館のウエブサイトを引用します。

第3回 「危機に瀕する建築ドキュメント―建築アーカイブ設立の可能性を探る」
建築家はスケッチ、図面、模型をたよりに建築や都市を構想します。これら建築ドキュメントが海外の美術館や建築博物館、アーカイブに多く流出しています。日本の建築が海外で高く評価されていることを示すととともに、日本国内において建築アーカイブなどの公的機関の設立が遅れていることにも起因しているといえるでしょう。今回のメタボリズム展においても多くの建築ドキュメントが展示されています。建築アーカイブに関する様々な活動を繰り広げてきた方々をパネラーに日本の現況と建築アーカイブ設立の可能性を探ります。
出演者: 鈴木博之(青山学院大学教授)、八束はじめ(建築家、建築批評家、芝浦工業大学教授)、前田尚武(森美術館「メタボリズムの未来都市展」プロジェクト・マネージャー)
モデレーター: 山名善之(東京理科大学准教授)

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