佐野眞一:津波と原発
震災をテーマにした本はたくさんあり、原発問題を含めると厖大な数がでています。本屋にいってもあまりに多すぎ、ほとんど買っていません。その中で、佐野眞一の『津波と原発』というシンプルなタイトルの本は気になっていて購入、先日読み終えました。
佐野眞一の著作は『東電OL殺人事件』、『だれが「本」を殺すのか』しか読んでいません。東電OLは最近新たな事実が判明し、再審の可能性が注目されています。本を殺すのか、はもう10年も前の本ですが、当時熱心に読みました。殺されかけた本は、いまのところ生き延びています。
これまでのノンフィクションでも、本書でも、佐野は関係者への丹念なインタビュー、取材を行い、資料を綿密に調査し、そこから事実を明らかにしていくとう方法をとります。これは基本的な方法ですが、しっかりと行っている作家は多くはありません。この「津波と原発」でも人への取材と文献資料の調査に基づいた内容で、強い説得力をもちます。
内容は津波編と原発編からなっています。津波編では3月に被災地での取材で、被害の痛々しさを人間を通して訴えます。原発編では正力松太郎を軸として、関係資料を調べ、また関係者へのインタビューを行い、なぜ福島に原発ができたのか、という歴史の事実を明らかにしていきます。佐野は東日本大震災、津波と原発事故は日本の近代化がたどった歴史と、戦後経済成長の足跡をあぶりだした、と言います。
佐野は本書の最後をこう締めくくっています。
「いま私たちに問われているのは、これまで日本人がたどっってきた道とはまったく別の歴史を、私たち自身の手でつくれるかどうかである。そして、それしか日本復活につながる道はない」
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