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2010/09/10

マスメディアの危機を語る「街場のメディア論」

 病に伏していた先週の日曜、何もやる気がおきないのでテレビをながめていました。日曜の午後、流されている番組は、ほんとにつまらない。改めて驚きました。
 内田樹の「街場のメディア論」(光文社新書)は、マスメディアの危機について、なにが問題かを論じた一冊です。本書は著者が教授をつとめる神戸女子学院での講義を編集者が本に仕立てた内容で、全体を通して読みやすい文章で構成されています。
 内田は、まず「マスメディアの嘘と演技」、「メディアと『クレイマー』」、「『正義』の暴走」といった章立てで、現在のマスメディアの姿勢の問題を指摘します。テレビ、新聞などのマスメディアが凋落している、という指摘は各方面でされています。内田はマスメディアの凋落について、その原因をこう指摘します。
「マスメディアの凋落の最大の原因は、僕がインターネットよりむしろマスメディア自身の、マスメディアにかかわっている人たちの、端的に言えばジャーナリストの力が落ちたことにあるんじゃないかと思っています」
 マスメディアの凋落は、外部要因のせいでなく、原因は自分自身だということです。
 さらに本書では「出版は生き延びることができるのか」を論じます。内田の視点はこれまでにない新鮮なものです。本と読者の関係を本質から問いかけます。電子書籍についても論じ、その中で内田は「本棚」の意味を問います。
「電子書籍の出現によって出版文化は危機に瀕するという人はたくさんいます。けれども、『本棚』の機能について言及する人はいません。どうして誰も本棚のことを問題にしないのでしょう。(中略)それはたぶん書籍をめぐる議論のどこかで『読書人』を『消費者』と固定したからです」
 初めて気がつきました。電子書籍が普及すると、本棚なくなってしまいます。それ、寂しくないですか。
 マスメディア、たとえば10年後はどのような状態になっているのか。いまと同じ形態で残っているとは思えません。内田の著作は、このことへの大きなヒントとなっています。おすすめの一冊です。

Machiba_media


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