コレクションを生かす美術館の模索
一昨日の日経新聞になってしまいますが、文化欄に「公立美術館、企画展頼みに限界 所蔵品、市民と模索」という記事がありました。これによると、名品を中心とした企画展がこれまで美術館の売りだったのですが、公立美術館ではコレクション(所蔵品)を見直すところが増えています。
「『日本の美術館は自前のコレクションで人を呼べず、企画展頼みでやってきた歴史がある』と横浜美術館の逢坂恵理子館長は指摘する。ところが近年は不況のあおりで企画展開催や作品の購入予算が激減。手持ちのコレクションを見直し、市民に所蔵品への理解を深めてもらう動きが活発になっている」(日経新聞電子版)
新潟市美術館は、カビ、クモ発生問題からの一連のごたごたがあり、その調査過程でコレクションの死蔵も明らかに。なんと過去の展示回数が0回、1回の作品がコレクションの6割以上を占めていたことが分かりました。新潟市では全コレクションのデータを公開。購入年や価格、購入元の画廊名などを公表。これまでの展示回数が一目でわかる「展示履歴」も付いるとか。公立美術館でここまでやるのは異例。しかし、他の美術館にも死蔵されているコレクションはありそうです。
コレクションの活用という点では、横浜美術館の「横浜美術館フレンズ」。横浜美術館が4月からスタートさせたもので、ルネ・マグリットの絵画など10点を対象に、展示や保存活動にあてる資金を募るもの。1作品1万円の参加費を支払うと、支援する作品の展示期間中に名前が掲示され、学芸員のトークや懇親会への招待といった特典が受けられます。これいいですね。知っていたら参加したのに。
また、他館のコレクションをまとめて借り受けて企画展を行う例も紹介されています。兵庫県立美術館は今夏、神奈川県立近代美術館の名画55点を借り、「麗子登場!―名画100年・美の競演」を開催。岡山県立美術館の「パスキンとエコール・ド・パリ展」は、同館所蔵の洋画家・国吉康雄の絵画と北海道立近代美術館が所蔵するジュール・パスキンらの作品を展示。公立美術館が作品を貸し借りするのは、これまでも行われてきましたが、これからはもっと増えていくでしょうね。
楽な状況にある公立美術館はありません。今後の生き残りはどうなっていくのでしょうか。日経新聞はこう結んでいます。
「サポーターを増やしつつ、いかにコレクションに磨きをかけるか。美術館の手腕が問われる」
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