不況の影響受ける米国のミュージアム
やはり、と思わせる記事が昨日の日経新聞に載っていました。「米国の美術館・博物館 寄付金減り運営危機」と題された記事です。在米キュレーター。三木美裕さんによるレポートによれば、アメリカでは急速な景気悪化により、学芸員などのスタッフ解雇したり、所蔵作品を売却しようとするミュージアムの例が伝えられています。
マサチューセッツ州のブランダイス大学付属ローズ美術館は、開館して50年の現代美術館。しかし、金融危機により大口の寄付が減った上に、信託基金の25%にあたる約160億円が消えたといいます。その結果、評価額約300億円のコレクションをすべて売却すると表明。さすがに、これは米博物館協会などの反対を受け、「閉館はしないが、資金繰りによっては数点の作品を売却するかもしれない」と修正されました。
ローズ美術館だけでなく、アメリカのミュージアムは大半が非営利の民間法人によって運営されています(日本の博物館、美術館の多くが官営もしくはそれに近い形の運営になっているのと対照的です)。日経新聞の記事によれば個人、企業、団体からの寄付で運営費の約35%をまかない、政府からの援助は25%以下が一般的とされています。したがって、今回のような不況に影響を直接に受けやすくなっています。寄付などの減額や、株価や金利の下落により、信託基金が目減りし、運用益が確保できにくくなっているためです。
今回の不況では、ミュージアムを巡る環境まで影響を及ぼしています。雇用問題と同じく、これも先が見えない課題でしょうか。
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コメント
さいのめさん
「マスコミ以上の虚業」とは示唆に富んだ言葉ですね。ご推薦の本、早速読んでみます。
投稿: 自由なランナー | 2009/03/16 22:26
この3年、美術館での仕事にあれこれ関与してきたけれども、マスコミ以上の虚業だなあというのが実感。「芸術崇拝の思想」(白水社)という本が興味深いです。いちど○○近代美術館の応接室に行ってみるとその意味がよくわかるかも・・・
投稿: さいのめ | 2009/03/15 15:16