石内都:detailの先にみえるもの
写真家・石内都の写真展「ひろしま/ヨコスカ」が目黒区美術館で開かれています。石内は1947年生まれ。女性写真家として初めて木村伊兵衛賞を受賞しています。石内が育った横須賀の風景を切り取ったデビュー作品「絶唱、横須賀ストーリー」から、広島で、原爆被災者の衣服などを撮影した「ひろしま」まで、石内の仕事を丁寧に辿っています。
70年代後半に撮影された作品「絶唱 横須賀ストーリー」、「アパートメント」、「連夜の街」では、同時代の写真家の影響をいくらか感じ取ることができまが、細部にフォーカスした写真は独特の視点を感じます。
80年代後半、同年代の女性たちの手、足、体の部分をアップして撮影した写真は、肉体の存在感だけでなく、人間の感情までも撮そうとする石内の意志を感じます。
そして、最新作の「ひろしま」。被爆者の衣服を、美しく、丁寧に撮影した作品では、そこにあった生と死のことを思わないわけにはいきません。
会場には写真に加え、4本のビデオ作品が映し出されています。このうち、2本のタイトルに「detail」というwordが使われています。石内の作品をみていて感じるのは、まさにこのdetailへの視線です。建物の細部、肉体の細部、そして焼け残った衣装の細部。deailを写真という方法で追求しているとも思えます。石内の描くdetailの向こうには、何があるのでしょうか。まだ、私には見えていません。
石内都、彼女の思いを知りたいと思っています。
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