« 液晶絵画という創造 | トップページ | THE NIKKEI MAGAZINEとは »

2008/09/23

磯崎新の「都庁」

 ちょっと前に買った本なのですが、ずっと積ん読になっていたのをやっと読み終えた『磯崎新の「都庁ー戦後日本最大のコンペ』。すごく面白い本でした。本文が460ページをこえる大作ながら一気に読ませてくれる内容です。
 この本は、新宿にある東京都庁の設計を巡り、コンペに参加した磯崎新の仕事を克明に描いたノンフィクションです。コンペはいまから23年前、1985〜86年に行われ、そこで勝利したのは丹下健三です。磯崎と丹下は東大の丹下研究室で師弟の関係にあり、いわば師弟対決となったコンペです。

Isozaki

 筆者の平松剛さんは、大学院で建築構造学を学んだ建築の専門家です。この著作では膨大な資料を基に、コンペの経緯を丹念に描き出していきます。ここではコンペの師弟対決だけではなく、昭和の建築界のひとうつの大きな流れ、東大建築学科の系譜も追っています。すなわち、岸田日出刀(きしだひでと・この人のことをはじめて知りました)、丹下健三、前川國男、磯崎新そして青木淳まで。その与えた影響にも言及しているのがこのノンフィクションの優れている点です。
 ちょっと本書からずれますが、私が武蔵美の卒論で取り上げたせんだいメディアテークの設計は伊東豊雄さんでした。設計者を選ぶ設計競技(コンペ)の審査委員長が磯崎新で、メディアテークという言葉と概念を持ちだしたのも磯崎でした。また、磯崎と師弟関係にはありませんが、伊東豊雄さんも東大建築の出身です。
 この東大建築の系譜を調べると、まだまだ興味深いことが多く発見できそうです。建築に興味のある方には、ぜひおすすめです。

|

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/41640/42553829

この記事へのトラックバック一覧です: 磯崎新の「都庁」:

コメント

G4CUBEさん
ご無沙汰しています。
この著作は、人間を細かに描いているだけでなく、その資料性もしっかりしていて、一流のドキュメンタリーとなっていますね。磯崎新以降の建築も研究していくと、とても興味深いと思います。

投稿: 自由なランナー | 2008/10/19 16:28

ご紹介の本を読み始めたところですが、人間ドラマが実に面白いですね。当時、建築雑誌で各事務所のコンペ作品を見ましたが、シンボル性という点においてまったく比較にならなかったという印象を持っています。気迫の違いだったのかと今になって納得しています。
自由なランナーさんがメディアテークで試みたような深い考察で都庁も斬ってもらいたいですね。

投稿: G4CUBE | 2008/10/16 21:20

ともさん
こんにちは。ご来訪ありがとうございます。
建築の仕事をされているんですね。私にとっては憧れの仕事です。
また、ブログにお邪魔します。よろしくお願いします。

投稿: 自由なランナー | 2008/09/27 08:06

こんばんは。

先日は僕のブログへの訪問、ありがとうございました。
プロフィールを見ると、今年、通信教育課程を卒業され、学芸員資格を取得されているんですね。
僕は毎日の仕事に忙殺されていますが、やっぱり仕事とは別に学ぶことも重要ですよね。僕も見習ってがんばりたいと思います。

投稿: とも | 2008/09/26 02:09

nabayさん
こんにちは。ご来訪ありがとうございます。
また、ブログにお邪魔します。

投稿: 自由なランナー | 2008/09/25 07:31

mrkutaiさん
こんにちは。ご来訪ありがとうございます。
かなりの資料をつかいながら、読みやすく、分かりやすい文章で書かれていました。筆者の力量はたいしたものです。
卒論お読みいただきありがとうございます。いわゆる「箱物」行政というものに興味があり、研究をしています。
また、ブログにお邪魔します。

投稿: 自由なランナー | 2008/09/25 07:30

AMAKOさん
こんにちは。ご来訪ありがとうございます。
お褒めいただきありがとうございます。
これからも、お邪魔します。よろしくお願いいたします。

投稿: 自由なランナー | 2008/09/25 07:20

はじめまして。
コメント、ありがとうございます。

Blog拝見しました。
私も美術館をはじめアート関係は好きなので、今後もお邪魔したいと思います。

投稿: nabay | 2008/09/24 12:52

はじめまして。
ブログへのコメント、ありがとうございます。
この本は私の様な学生にも、建築の知識が無い人にでもくだけた文章で読み易く、都庁舎コンペについてのみならず国家を背負った建築家達の、建築史系の本では決して書かれない「人間臭さ」が事細かく描写されていてる良書だと思います。

あと自由なランナーさんの記事に卒業論文について書かれていたので、ざっとですが読ませて頂きました。建築としてどうこうよりも地元住民から見てどう評価するという視点が興味深く、あとがきに書かれていたメディアテークは永久にβ版で無ければならないというお話には共感しました。時間があるときにまたじっくり読ませて頂きます。

投稿: mrkutai | 2008/09/24 12:43

自由なランナーさん、コメントありがとうございます。
初めて拝見させていただきましたが、すばらしいブログですね。
私は最近仕事の忙しさにかまけて更新が滞っていますが、ちょこちょこと更新していってますので、またぜひ立ちよってください。
新たな記事を楽しみにしております。

投稿: AMAKO | 2008/09/24 09:35

鼎さん
維持費がかかっているんですか。噂ではいろいろ補修は必要なところがあるとはきいてますが。
この本によれば、前鈴木知事が作りたかったモニュメントのようなものそうです。もしそうだとすると、馬鹿なことをしましたね。

投稿: 自由なランナー | 2008/09/23 22:48

さいのめさん
設計費が建設費の一割だとすると、都庁なんかいくらもらったのか。そう考えると、世間の感覚とはちょっと違っているかもしれませんね。

投稿: 自由なランナー | 2008/09/23 22:45

都庁は、建物の維持費がスゴいそうですね。
立て替えた方が、今後を考えると安いと言う人も居る様です。たった十数年でこんな意見が出てくること自体、設計者も、その設計者を選んだ人も、どうかと思います。

投稿: 鼎 | 2008/09/23 19:31

建築家と呼ばれる世界って、怖い世界だと思います。クリエーターの仕事としては動くお金が桁違いに大きいせいでしょうか。

投稿: さいのめ | 2008/09/23 15:32

ayakaさん
都庁のデザイン、好きな人って多くないのでは。どうして、丹下さんあんな設計したんだろう。

投稿: 自由なランナー | 2008/09/23 13:35

面白そうな本ですね!
機会を見つけて是非読みたいです。

個人的には、あの都庁のデザイン、あんまり
好きになれません。。。
何故だろう?

投稿: ayaka | 2008/09/23 13:15

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。