液晶絵画という創造
今年の3月ころ、知り合いの方から「液晶絵画」という企画を三重県立美術館でやっていると教えてもらいました。とても興味があったので、三重まで行こうと思ったのですが、結局行けずじまい。しかし、この企画展が東京都写真美術館に巡回してきて、やっといってきました。
この企画展は、液晶ディスプレイと液晶プロジェクターを使った映像表現の作品を見せてくれるものです。いわゆるビデオアート作品の展示ですが、特徴は映像機器にこだわりをもったところです。液晶ディスプレイの大手メーカー、シャープが特別協力をして、ディスプレイをすべて貸し出しているようです。ビデオアートの企画でありがちなのは、映像を映し出す機器の画質にあまり配慮が払われないことです。この企画では、しっかりと調整されたディスプレイが使われていました。
全体の感想をいうと、とても面白く刺激的でした。14名の作家の作品が展示されているですが、その中で印象に残ったのは、まず千住博『水の森』。8面の液晶ディスプレイが、あたかも四曲二双の屏風のごとく置かれ、そこに水墨画とも思えるモノクロ映像が映し出されます。静止画ではなく、静かに動いている動画。静寂な時間が流れていきます。実は千住先生の絵画にはあまり心が動かない私ですが、これはいいです。新しいメディアに挑戦する姿勢もすごいと思います。
森村泰昌の動画表現も秀逸です。フェルメールの『真珠の耳飾りの少女』をモチーフにして、森村がターバンの少女を演じている動画作品は、楽しいです。ほんとは森村さんなのに、少女に見えるのが不思議。
いちばん気になったのは小島千雪の『リズミカルム 砂の陸』。この人の作品をみるのははじめてですが、優しい映像が心地よく、イメージが広がっていく素敵な世界です。
また、ビデオアートの大御所、ビル・ヴィオラやブライアン・イーノの作品もあります。ビデオアートファンでなくても楽しめます。おすすめ。
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8/23-10/13(会期終了)
「トレース・エレメンツ」を見た後に恵比寿へ移動しました。先日まで、東京都写真美術館にて開催されていた「液晶絵画」展です。
ともかくちらし表紙の『真珠の耳飾りの少女』が圧巻です。これは言うまでもなく、森村が何かに変身して見せるお馴染みのシリーズの一環ですが、今回はこの少女がどのようなシチュエーションにあったのか、そしてそれがどう変化して絵画になったのか... [続きを読む]
受信: 2008/10/22 20:52
コメント
はろるどさん
こんにちは。
液晶ディスプレイという装置にこだわった点が、単なるビデオアートと異なっていると感じました。いおろいろな可能性を感じる展示でした。
投稿: 自由なランナー | 2008/10/24 06:19
こんばんは。千住さんの映像を見たのは実は初めてでしたが、随分と雰囲気があったのでしばらく見惚れてしまいました。
ヴィオラも森美の個展が懐かしいですね。
単に映像アートという括りでない、絵画性を持ち出した企画自体はとても新鮮に感じられました。
投稿: はろるど | 2008/10/22 21:04
syunpoさん
ご来訪ありがとうございます。
なぜか小島さんの作品にこころひかれてしましました。ビデオアートという表現をこえて、新しい領域に進んでいくことが期待できそうです。
読みごたえのあるブログ、またお邪魔させてくだい。
投稿: 自由なランナー | 2008/09/25 07:24
コメントありがとうございました。
小島千雪の世界は、なるほど独特ですね。イメージがクリアでない分、観る者の想像力が優しく刺戟されるような感じです。
「リズミカルム」(rhythmical+calm)という造語も、ちょっと面白いですね。
「液晶絵画」……こうした方向でのアート表現がこの先どのように進行していくのか楽しみです。
投稿: syunpo | 2008/09/24 10:02
booskaさん
ご無沙汰してます。
もと単身赴任仲間ですね。
ちょっと残念なんですが、空いてましたね。
また、ブログお邪魔します。
投稿: 自由なランナー | 2008/09/23 22:52
ダーリンさん
>モニターを縦にして観てください
ブライアン・イーノ、すごいこと言いますね。
新旧の作品があって、この観点からも面白かったです。
投稿: 自由なランナー | 2008/09/23 22:51
今日はコメントいただきありがとうございました。
お久しぶりです。よね?
確かmixiでお世話になっていたような覚えがあるのですが。。。
この展示会は画期的だと思います。
それほど混んでなくてゆっくり見ることが
出来ました。
またお邪魔いたします。
投稿: booska | 2008/09/23 22:33
少々、アハムービー的な要素もあり面白かったですね。ポスターにも使われている作品が暗い廊下の奥にあったら少々怖いかもしれませんね。:)
Brian Enoの作品は80年代にレーザーディスク(死語か?!)でも発表されていた作品ですね。
私の記憶違いでなければ、モニターを縦にして観てくださいという(一般家庭のテレビでは無謀な)コメント付いていた作品だったので、私が横になって観たことを覚えてます。w
投稿: ダーリン | 2008/09/23 18:05
コニコさん
こんにちは。ご来訪ありがとうございます。新鮮な展示でした。
こちらも、またお邪魔します。
投稿: 自由なランナー | 2008/09/23 13:33
ayakaさん
10月13日までやっています。ぜひ、いってみてください。
投稿: 自由なランナー | 2008/09/23 13:31
はじめまして。TBをありがとうございました。なかなか画期的な展示だと思いました。
近頃絵にはまっていますので、また遊びによらせていただきますね。よろしくお願いします。
投稿: コニコ | 2008/09/22 14:55
斬新な企画ですね。
まだやっているのでしょうか?
できれば見に行きたいです
投稿: ayaka | 2008/09/22 08:32
ダーリンさん
ご無沙汰しています。いつもブログは拝見してます。
ブライアン・イーノ、久々にきいた名前でした。ビデオ作品、なかなか刺激的でしたよ。おすすめします。
投稿: 自由なランナー | 2008/09/22 07:23
お久しぶりです。
ブライアン・イーノに反応してしまいました。
以前数年前にラフォーレ原宿で開催されたブライアン・イーノの77 million paintingsに行ったことがあるのですが、この記事を読んで行きたくなりました。:)
投稿: ダーリン | 2008/09/22 06:44