問われる指定管理者制度の運用
昨日の日経新聞・文化面の記事「公立ミュージアム 指定管理見直し最適な運営探る」は、ここ数年の公立美術館、博物館の運営変革を問い直すために、参考となる記事です。指定管理者制度とは、公立施設を地方公共団体や外郭の財団法人だけでなく法人など(NPOも含む)に代行させることができる制度で、2003年に施行されました。
この公共施設には、博物館、美術館も含まれ、文化庁の調査によると公立館550のうち17%の93館が制度を導入。ただ、
「運営主体を数年ごとに選び直す仕組みは、継続的な研究や企画、人材育成を必要とする美術館・博物館にはなじまないという主張も以前からある」(日経新聞記事より)
という考えを踏まえてか、いくつかのミュージアムでの見直しの実例があげられています。
2005年開館、北海道伊達市の市立宮尾登美子文学記念館では、開館以来地元のNPO法人に運営を任せてきましたが、今年度から直営に切り替えました。その理由は、入館者が予想を大きく下回ったこともあり、観光客誘致から市民のための文化施設に方向転換したこと。
「市全体で文化を柱にした街作りを進めたい。その拠点となる施設は直営が望ましいと判断した」(山崎博司・商工観光水産課長)
栃木県足利市では2006年度から市立美術館に指定管理者制度を導入したが、来年度から直営に戻すことを決定。
「長期的な研究や展覧会の開催に準備を要する美術館にそぐわない」(熊井壽裕・教育総務課長)
この制度を活かした実例として注目したいのが島根県。学芸部門は直営とし、管理運営部門だけ制度の対象とづる独自の「半官半民」方式を採用。県立美術館ではこの方針に沿い、管理・運営部門を民間にまかせ、いくつもの成果を上げています。
私見では、公立博物館・美術館の運営は直営が望ましいと考えています。行政は指定管理者制度の採用に対しては慎重に検討を行うべきです。
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コメント
鼎さん
コメント遅くなりすみません。
指定管理者制度の導入により、ミュージアムがどう変わったかは、研究されるべきテーマではありますね。検証がされていくべきことです。
せんだいメディアテークは指定者管理制度導入では、とくにサービスが変わったとは思えませんでした。
投稿: 自由なランナー | 2008/07/29 22:04
指定管理者制度は、必ずしも良い制度とは思っていません。しかしながら、指定管理者制度が出来て、これを採用した所も、そうでない所も、否応無し「観客はお客様だ」という、当たり前の事を意識せずにはいられなかったでしょうね。
以前、紹介した事があるかもしれませんが、2002年に佐倉の歴博で、「歴史展示とは何か」と、言うフォーラムがありました。客席に、当時、群馬県立歴史博物館館長だった峰岸純夫さんがいらっしゃいました。司会者に促されて感想を述べられました。開口一番、おっしゃった事は「観客をお客様ととらえている事がよい」と、いうようなことでした。
本もアム・プロモーションと言う所から出ています。ここでも峰岸さんは、特別寄稿しています。群馬歴博の取り組みは感動ものです。一読をお勧めします。修士のテーマの参考になるかもしれません。
指定管理者制度は、意識改革の切切っ掛けになったと思います。(反面教師と,とらえても良いけど)
あまり更新されませんが「博物館の図書室」も、学芸員の立場から、かつて指定管理者制度を取り上げていました。
http://homepage1.nifty.com/lepos/index.htm
投稿: 鼎 | 2008/07/21 21:38
鼎さん
おっしゃるとおり、プラス面とマイナス面、両方評価してこそ、指定管理者制度の功罪は明らかになります。ただ、私見ではミュージアムにはそぐわない制度だと感じています。
投稿: 自由なランナー | 2008/07/21 20:58
>指定管理者制度
悪い面だけではなかったでしょうね。
お客様指向に立つきっかけになったと思います。
昔は倉庫みたいな展示室や、壊れた展示物を修理もせず、平気で公開していた博物館もありましたから。
投稿: 鼎 | 2008/07/20 20:13