向田邦子、東京、そして昭和
この頃、昭和を懐かしみ、「いい時代だった」とする世相が見受けられます。典型的な例は映画『三丁目の夕日』のヒットでしょう。
新潮新書の新刊「向田邦子と昭和の東京」を読み終えました。評論家・川本三郎さんの著作です。脚本家、作家として活躍し、直木賞も受賞した向田邦子の作品を読み解き、昭和という時代を明確にしていこうとする評論です。
川本さんは、向田作品を丹念に読み込み、作品に描かれた女性像と、向田の実像を行き来しながら、昭和という良き時代をあぶり出しています。本書の帯にこうあります。
「現代は何を失ったのか。言葉、家族、街並み……新たな視点で読み直す」
昭和を生きた私ですが、(あまのじゃくのせいか)「ほんとに昭和のほうが今の時代より、良かったかな」と思ったりもします。確かに、いまほど、ぎすぎすした時代ではありませんでした。でも、現代ほど便利ではなかったですよ。向田邦子は昭和4年生まれです。生きていれば、来年80歳。昭和そのものの人といっていいかもしれません。川本さんは昭和19年生まれ。団塊の世代よりちょっと前の、昭和の人です。
この著作を読んでいて、ちょっと物足りなく感じたのですが、それは昭和の人(川本さん)が、昭和の先輩(向田邦子)を、昭和の視点で評論しているせいではないでしょうか。平成20年、現在での視点での向田邦子論に踏み込んで欲しかったところです。
でも、久し振りに向田邦子の作品を読みたくなりました。本箱から探し出してこないといけません。
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