日本の美術力がわかる「日展100年」
このごろちょっと難しそうな企画展がつづいた宮城県美術館ですが、いま開催されている「日展100年」展は、わかりやすい展覧会です。サブタイトルに「文・帝展時代から今日まで」とあるように、日展の前身である文展の創設から今年で100年。この100年に及ぶ日本美術をぐっと凝縮してみせてくれるものです。
この展覧会の見所は、ずらっと並んだ名画、名品です。日本美術の力を感じることができる作品が、150点余り並んでいます。私でも名前を知っている有名な(?)画家の絵も多く、親しみやすい展示です。
展示されている作品のジャンルは、日本画、西洋画(油彩)、版画、工芸、書など多彩ですが、私は日本画に特に惹かれました。明治41年(1908年)の土田麦僊(つちだばくせん)「罰」から昭和56年(1981年)の池田遙邨(いけだようそん)「稲掛け」まで、その画風、テーマ、色彩などの変遷、変化がとても興味深いです。
気になった作品をあげてみると、まず平福百穂(ひらふくひゃくすい)「七面鳥」(1914)は、六曲一双の白い紙本に薄い墨で七面鳥が何羽も描かれています。白い余白が、鳥と同じように存在感があります。宮城県美術館で所有している同じ百穂「猟」の細部まで書き込まれた表現とは対照的な、淡泊な世界が不思議です。
石崎光瑤(いしざきこうよう)「燦雨」(1919)。六曲一双の紙本一面に広がる朱色の花とそこに羽ばたく鳥。異次元とも思える表現です。
戦後1958年の徳岡神泉(とくおかしんせん)「枯葉」は、日本画とは思えない色と形が表現されています。失礼な表現かもしれませんが、抽象表現主義、ポロックの作品を連想しました。
そして東山魁夷(ひがしやまかいい)「光昏」(1955)。この人の絵、どうしてここまで心を和ませてくれるのか。しばし、絵の前で佇みます。
この日展100年、今年の夏に東京で開催されていたものの巡回ですが(東京展とは出展作品が一部かわっています)、日展といえば、やはり芸術の秋。この時期に素敵な展覧会が見られるのは、仙台に住むものとしては、ちょっと幸せな気分です。会期は、11月4日までです。アート好きなかたはぜひどうぞ。
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国立新美術館の「日展100年」を、最終日の今日見てきた。「一目でわかる、日本の [続きを読む]
受信: 2007/10/26 11:17
コメント
くしこさん
こんばんは。
徳岡神泉の絵、もちろんポロックのドリッピングで描いた絵とはまったく違うのですが、見た印象がなぜかポロックを感じたんですよね。日本画、かなり奥深いようです。
投稿: 自由なランナー | 2007/10/21 22:35
日展、行かれたのですね~
徳岡神泉さん、気になって早速検索してみました。
「枯葉」は見つからなかったけれど、作品何点か見れまして、
日本画のイメージがすっかり覆されました。
ご紹介のとおり、やはり抽象的で、すごく興味深かったです。
盛岡にも来てほしいです♪
投稿: くしこ | 2007/10/21 19:01