鮮やかな版画の世界「吹田文明展」
久しぶりの世田谷美術館で、「吹田文明展」をみてきました。吹田文明(ふきたふみあき)さんは、1926年生まれ、まだ現役で活躍する版画家です。会場に飾られた作品をみて感じたのは、版画にもこれほどまでに多彩な表現ができるのか、という驚きでした。古今東西の巨匠と称される画家たちが、油彩作品だけでは満ち足りずに、版画作品を制作しています。版画という表現手法は、それほどまでに魅力があるものなんでしょう。
吹田さんの版画は、そのほとんどが抽象作品です。色彩と形が織りなすイメージの世界は、幻想的で、刺激的で、また安らぎを与えてくれます。
会場にはいって、冒頭に飾られている宇宙を想起させてくれる一連の作品。青、紺などの色を多用し、果てのない広がりを感じさせてくれます。作品のほとんどが、木版に油彩、水彩の2つの絵の具を使って刷られています。油彩絵の具を版画に使うことが、新鮮です。
どうやって水彩と油彩を使うのか、と思ってみていたら、「制作の現場から」というコーナーで、その謎が解けました。下地に水性、その上に油性を重ねて刷っていたのです。
また、作品よっては版画手法に、墨流しを加えた作品もあります。黒、緑などの絵の具をたらして、あいまいな形を表現。線と線で区切られた版画表現と、不定形であいまいな形の墨流しの対比が、刺激的な効果を生んでいます。
会場の最終章「光の彼方へ」と題されたコーナーにあるひとつの作品に惹きつけられました。「南に散りし友に捧ぐ Ⅱ」(戦後50年の鎮魂歌)。そこには、もの悲しく、でも懐かしい世界があります。自分がかつていた場所、でももうそこのは戻れない場所、となぜか思う世界が広がります。しばらく作品の前で、佇んでしまいました。
吹田作品は、単に版画の範疇をこえ、みるものに様々なイメージを与えてくれるすてきなものばかりです。版画の奥深さを感じる美術展です。
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コメント
beeさん
はじめまして。ご来訪ありがとうございます。
宮城県美術館、いかれたことあるんですね。仙台は、いいところです。特に夏は、蒸し暑さもほどほどですし。
また、ブログお邪魔します。
投稿: 自由なランナー | 2006/06/27 22:39
TBありがとうございました。鑑賞の記とは言いがたくお恥ずかしい限りですが。
仙台にお住まいなのですね。友人が住んでいるので年に1回くらいは伺っています。何年か前は彫刻家のヴィルヘルム・レームブルック展を見に宮城県美術館にも足を運びました。
こちらにもまたお邪魔させていただきます。
投稿: bee | 2006/06/26 21:51
ジョヴァンニ・スキアリさん
こんにちは。
なんとか、単身赴任生活をこなしています。
また、ブログお邪魔します。
投稿: 自由なランナー | 2006/06/26 07:49
TBありがとうございました。単身赴任は大変そうですね。小生は海外駐在の準備で短期間一人暮らしした以外は単身赴任の経験がありません。今後も現代美術の面白い話題をアップして下さい。
投稿: ジョヴァンニ・スキアリ | 2006/06/25 11:52