「大正期の異色画家たち」の魅力
江古田まで行ったので、久しぶりに練馬区立美術館を訪れてみました。昨秋の「佐伯祐三展」以来です。この美術館ではいま「大正期の異色画家たち」が開催されています。これは和歌山県立近代美術館所蔵の作品から、大正から昭和の初期に活躍した「異色」画家の作品をみせてくれるもの。
西暦の年代でいうと、大正元年が1912年、昭和元年が1926年。西洋絵画は大きく変化、変貌を遂げた時です。キュビズム、フォービズム、シュルレアリスムと新しい美術様式が生まれた時代。西洋絵画の潮流をうけ、新しい画風、作品の制作に取り組んだ日本の画家たちを「異色画家」と表現しているように感じました。
出展されているのは、日本画、油彩、版画、彫刻の4つのジャンルで、佐伯祐三、川口軌外、長谷川潔、東郷青児など私にも馴染みのある名前から、はじめて名前を知った画家まで40人以上。ほとんどが、初めて作品をみる画家です。
最初の日本画のパートでは野長瀬晩花の作品が、刺激的。「大原めと舞妓」(1916頃)は日本画の手法・材料(絹本着色)で描かれた作品ですが、その作風は明らかにマティスのよう。線をさらさらっと描き、書き込まない表現で二人の女性が描かれていて、ちょっと日本画とは感じられない作品。
版画では、樋口五葉の「化粧の女」に魅せられます。女性が手鏡をもつ構図の浮世絵。喜多川歌麿の美人画を連想しますが、表現にどことなく近代を感じます。
また、1914年に制作された田中恭吉の一連の版画は、女性をモティーフとして、内なる精神世界を表現しているように感じる作品。年代的にはシュルレアリスムが誕生するより前に、どうしてこのような作品をつくられたのか、画家の創作過程に興味が沸きます。
油彩画では、佐伯祐三の作品が5点。いづれも昨年の佐伯回顧展に出展されていたものに再会できました。
川口軌外の作品は、幻惑的ですね。好きなジャンルの作品で、じっくり見入ってしまいました。特に大作「少女と貝殻」(1934)は、象徴的に置かれた少女と貝殻、そこに差し込む光を、色彩と形で表現した作品。キュビズムの影響をうけているのでしょうか?もう少し川口のこと、勉強しないといけないです。
20世紀前半、西洋絵画の変化と、その日本への影響を考えるには、とても有意義な展覧会だと思います。この時期の美術に興味がある人には必見です。
| 固定リンク | 0
コメント
先日は、お訪ねいただいてありがとうございます。 明日、気になっていた藤田嗣治展いってきます。
投稿: 知的なターザン | 2006/05/02 18:13