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2006/04/04

藤田嗣治:多彩な絵画世界

 やられました、レオナール・フジタに。すごいです、フジタの世界。
 Img_4990きのう、休みをとって「藤田嗣治展」へ。藤田の天賦の才能を十分に感じられる充実した回顧展でした。

 会場で、作品の前でじっと立ち尽くし、そこから暫し離れなくなることが、たびたびありました。特に印象に残った作品について、感想を書いてみます。

 藤田30代前半の作品「幻想風景」。エコール・ド・パリの時代、まだ藤田が作風を模索している時代の作品ですが、キャンバスに描かれたひょろ長い5人の女性が、私が持っていた藤田の女性像とは違った奇妙な印象を与えてくれます。
 
 藤田といえば、裸婦のイメージ。「横たわる裸婦」の前に立ったとき、まさにそこに裸婦がいるような錯覚に陥りました。肌の色とそこに描かれた唇と乳首のピンク、そして背景に塗られた黒。ほとんどこれだけの色づかいなのに、女性が目の前にいるような存在感はすごいです。この作品をふまえ、翌年に描かれた「五人の裸婦」は、幻想的ともいえる女性像で、背景がディテールまで細かに描かれ、圧倒的な存在感です。

 藤田の作品でキリストの絵画表現も大きなテーマ。ひろしま美術館が所蔵する「十字架降下」は,中世以来、西洋絵画の必須ともいうべきテーマのひとつ『十字架降下』を、藤田の解釈で描いた傑作でしょう。絵には日本固有の表現材料である金箔が大胆に使われています。ここに、日本人藤田としての、創作への強いこだわりを感じます。

 1930年代、藤田が中南米に旅して、それまでの作風と違った作品を描いています。この時期の作品は、私はあまり好きではありません。フジタの繊細さ、ナイーブさが感じられないからです。その中では、「狐を売る男」は水彩で描かれ、藤田らしさが表現された佳作です。同じ時期に日本国内で描かれた作品では、沖縄に滞在しての作品「孫」の色彩感、構図に惹かれます。

 戦時に描かれた「アッツ島玉砕」。なんとも言葉にしようがありません。藤田が戦争絵画を描いた経緯、心情は、他人がとやかく言うものではないと、私は思っています。

 フランスへ再び戻った藤田の作品は、画家というより、イラストレーター、デザイナー的です。奇妙な動物たちの姿を表現した「動物宴」は、みているうちに、日本、平安時代の『鳥獣戯画』の作品世界を連想してしまいました。
 
 この展覧会をみて、これまでは藤田のほんの一部しかみていなかったことを痛感しました。藤田の絵画世界は、とても深そうです。機会を作って、再訪したいと思います。

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受信: 2006/05/30 21:34

コメント

りゅうさん
こんにちは。
藤田の戦争画は、いりいろ批判もあるようですが、私にとっては圧倒的な存在感でした。
細い輪郭線は、まさに藤田の特徴の真骨頂でしょうね。素晴らしいです。

投稿: 自由なランナー | 2006/05/31 07:47

こんばんは。
藤田の戦争画、過去に所蔵作品展で鑑賞した時とは別物のような迫力で圧倒されました。展示方法や照明で印象がとても変わりますね。
アノ細い輪郭線に魅了されました~(^o^)丿

投稿: りゅう | 2006/05/30 21:33

コンドウさん
トラックバックありがとうございます。
戦争画の前に立つと、もう言葉がありません。藤田の心情は複雑だったと思います。
ほんと、感動しました。

投稿: 自由なランナー | 2006/05/28 09:54

初めまして!
私も行ってきました、藤田嗣治展!
沢山の人がいらっしゃってビックリしましたけど、行ってよかった。
「猫」の絵の瞬間的な切り抜きともいえる迫力に見入ってしまいました!
あの「戦争画」の中の人間の表情を
見てしまったら、藤田氏が戦争に対しての
悲惨さを伝えたかったのではないかと思えて
仕方ありません
トラバさせてください

投稿: コンドウ | 2006/05/27 15:20

トムノグさん
ご来訪ありがとうございます。
藤田、すばらしい才能です。一昨日、再訪して、また感動でした。
また、ブログ、おじゃまさせてください。

投稿: 自由なランナー | 2006/04/23 20:29

おはようございます。TBありがとうございました。世界の藤田はさすがです。今、多くの人が感動し、さまざまな思いを巡らせています。
私も再び訪れたいと考えています。

投稿: トムノグ | 2006/04/21 08:34

Takさん
こんにちは。
京都展では、「カフェにて」の別バージョンが展示されるようです。行きたいな、と思ってはいますが、無理でしょうね。
もう一度、いつ訪れようと思案中です。

投稿: 自由なランナー | 2006/04/21 07:34

こんばんは。
待ち望んでいた
藤田の回顧展を
観られただけでも満足です。

京都で観たらまた
感じ方も変ってくるでしょうか。

投稿: Tak | 2006/04/19 22:52

TGさん
こんにちは。
藤田の作品、人生については、じっくり考察しみる価値がありそうですね。私も再訪して、もう少し藤田作品を深めたいと思っています。

投稿: 自由なランナー | 2006/04/18 07:39

TBありがとうございます。

活動の全期間に渉る広範な展示で、これまで知らなかった情報も多く、まだ自分の中で整理しきれていない状態です。

作品の魅力や作風の変化等について、またいずれじっくり考えてみたいと思います。

投稿: TG | 2006/04/18 00:28

shamanさん
ご来訪ありがとうございます。
ちょっと奇妙で。ちょっと怖い動物世界の絵でした。細かな描写に惹かれました。
またブログにお邪魔します。

投稿: 自由なランナー | 2006/04/17 07:49

はじめまして。TB感謝です。こちらからもお送りしますね。

>『鳥獣戯画』
まさしく!
ラ・フォンティーヌ寓話は子供の頃大好きでした。意外な結びつきにびっくりです。

投稿: shamon | 2006/04/15 15:57

マーガレットさん
こんにちは。
藤田が戦争画を書いた経緯は、本人しか語れないことではないかな、と思っています。「藤田嗣治・異邦人の生涯」には、そのあたりがよく書かれていたと思います。
乳白色の肌、ほんとすてきです。もう一度、彼女たちに会いにいきたいです。

投稿: 自由なランナー | 2006/04/11 07:48

TB有難うございました。私も今回初めて戦争画と南米時代の作品を見て、先入観が崩れました(悪い意味ではありません)。画家が色々なジャンルや表現方法に挑戦するのは当たり前のことと思います。近藤忠人著「藤田嗣治・異邦人の生涯」を読むと、戦争画を描いた心境が幾分か理解できたように思います。戦っているとき、人は愛国心に掻き立てられますし(オリンピックや野球でも)、第一終戦までに公開された戦争画は5,000点に及ぶとの事。いったい誰に藤田を糾弾する資格があるのでしょう。私は乳白色の肌とネコにメロメロです。

投稿: マーガレット | 2006/04/10 21:18

いづつやさん
お気にならさずに。最近、ココログ調子悪いですね。どうかしてほしいです。

投稿: 自由なランナー | 2006/04/09 21:30

何度もミスのTBをとばしてすいません。お詫びします。

投稿: いづつや | 2006/04/07 15:06

tantanmenさん
こんにちは。
NHKの番組は、私も興味深くみました。
おっしゃる通り、藤田の技巧はすばらしいと思います。まさにフジタの神髄といっていいと思います。

投稿: 自由なランナー | 2006/04/05 18:08

賽目さん
こんにちは。
なんとか機会をつくって秋田にいきたいと思っています。秋田の行事、その大作はぜひみなければいけませんね。
私も日本のアトリエの藤田には興味をもちました。日本人ながら、フランスに生きた画家の、日本での生活の持つ意味は大きかったようです。

うちの家族と一緒にいきたかったのですが、タイミングがあいませんでした。油絵を習っている息子が、どんな感想を持つか、興味があったんですが。

投稿: 自由なランナー | 2006/04/05 08:01

日曜日にNHKで特集番組を放送していました.芸術新潮でも取上げているようですね.金箔というと世紀末ウィーンの分離派,クリムトを思い出しますが,藤田も相当技巧的な画家です.地塗りの白とわずかの陰影で女性の皮膚を表現したり,一本の線で輪郭を簡潔に描いたり,素晴らしいですね.戦後の日本を捨ててフランスで洗礼を受けたそうですが,かつての江戸,東京の持っていた文化の残照のような人だったのでしょうか.

投稿: tantanmen | 2006/04/04 15:39

二人の子どもを連れて、おおまかに説明もしました。細密に書くことには感心したようで、家に帰ってさっそく同じようなパターンを書きはじめました。

私がいちばん好きなのは秋田の行事なのですが、今回の展示では日本のアトリエで日本風の姿をしている藤田です。平野政吉との交渉のなかから、日本を再認識していくのがよくわかります。幻といわれる映画もよかった。

戦争画はなんともいえません。パリ時代からパトロンの薩摩との関係で陸軍と親密であったという説もあって、はかりしれない部分です。ただ、藤田の戦争画は戦争賛美ではなく、戦争の悲惨さを訴えているようにしか見えないのだけど。

投稿: 賽目 | 2006/04/04 06:30

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