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2006/03/12

ロダンとカリエール、新しい出会い

 上野の森、西洋美術館ではじまったロダンとカリエール』を家族とみにいってきました。近代彫刻の父と呼ばれるロダン、マティスやドランの師であるカリエール。交流が深かった二人の作品を比較し、アーティストの感覚、思想性の共通点を探ろうとする、意欲的な企画です。
  rodin ロダンは「考える人」があまりに有名、西洋美術館でも「地獄の門」など多くのコレクションを保有。一方、カリエールはこの美術館のコレクションで、その作品をみたくらいです。昨年開催された『プーシキン美術館展』に「母の接吻」が出展されていましたが、なぜか印象に残っていません。(一緒にみにいった女房が、しっかり覚えていました)その作品は、ほとんどモノトーンとも見える彩色表現と、全体に霧がかかったような描写で、幻想的な世界が広がります。展覧会は全体を5つのゾーン(章)に分け、約140点が展開され、綿密に準備された展示構成です。
 
 私のロダンのイメージは、ダイナミックかつ、精緻に造られたブロンズ像ですが、『ロダンとカリエールをめぐる人々の肖像』のゾーンでの肖像彫刻は興味ふかいものがありました。テラコッタ(赤色粘土)を素材につかった「ジョルジュ・クレマンソー」の肖像は、ロダン彫刻の多様性を感じさせてくれます。同じゾーンにあるカリエールの「ギュスターヴ・ジェフロワ氏の肖像」は、見つめられているような目と、ちょっと不自然な組み方をした手が印象的な肖像画。
『ロダンとカリエールにおける象徴主義』のゾーンでのロダン作品は刺激的です。人物を量魂(マッス)でつくる表現が、新鮮です。大きな大理石の塊から切り出し、彫りだしたような作品は、すごく迫力と存在感があります。「母親と死んだ娘」は、その母の眠るような表情が、魅せられてしまいます。同じゾーンにあるカリエールの「母性」。娘に接吻をする母の姿が、輝いてみえるすてきな作品。
『ロダンとカリエールを結ぶ糸』のゾーンでは、特にこの展覧会のひとつのテーマである「手」の素描や習作がいくつか展示されています。二人が手の表現にこだわった意味は、残念ながらわかりませんでした。 ここではカリエールの「浴後」がおもしろい。本来の『カリエール様式』から離れて、印象主義作品を思わせる表現で、裸婦を描いていて、女性のなまめかしさを感じます。

 この展覧会をみて痛感したのは、ロダン、カリエールに対する知識のなさ。内容はかなり深いものがあり、もっと予習していけば、更に作品を楽しめたなと思いました。東京展のあとはオルセー美術館に巡回するというこの企画、時間をつくり、準備して再訪したいと思います。

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受信: 2006/03/15 22:43

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受信: 2006/03/16 07:35

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受信: 2006/03/18 15:09

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受信: 2006/03/18 21:13

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今月から始まったロダン展をみてきました。 ------------------------- 「ロダンとカリエール」展 6月4日まで 国立西洋美術館 ------------------------- 今までロダンの彫刻は幾度となく見てきましたが、 詳しい知識もなく、興味もそれほどなかったんです。 ただ大学の「西洋美術史Ⅱ」のレポートの対象として、 ロダンが対象になっていたので、これは見にいかなくちゃと思ったわけです。 この展示会では、カリエールという画家もとりあげていま... [続きを読む]

受信: 2006/03/20 05:11

» カリエールとロダン [セミ玄人の独り言]
本来なら荒川マラソンを走っている予定であったが、腰痛と練習不足のためにサボってし [続きを読む]

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受信: 2006/03/23 01:17

» ロダンとカリエール展 [美と出会い。美と遊ぶ、(仮)]
17日 金曜日は八時まで開館しているといふことで、国立西洋美術館へ自転車コギコギ [続きを読む]

受信: 2006/03/29 14:22

コメント

はろるどさん
こんにちは。
しっかり練られ、準備された企画だと思います。偉大な彫刻家と、幻想的な画家を、もっと研究しなければ、と痛感しました。

投稿: 自由なランナー | 2006/03/25 21:25

こんばんは。

私もカリエールとロダンはこれまであまり見てこなかったのですが、
この展覧会はとても分かり易く、また愉しく見ることが出来ました。
西美の企画力を見た気がします。

TBさせていただきました。

投稿: はろるど | 2006/03/23 23:59

tomomi-maruさん
こんにちは。
なるほど、手がその人の人生を表すとは。我が手は、どんな人生を表しているのかな、としみじみみてしまいました。
再訪したら。手にこだわってみてみます。

投稿: 自由なランナー | 2006/03/21 15:16

demain_soirさん
こんにちは。
偉大なるロダンの真髄に触れることができるすてきな美術展ですね。ほんと、予習不足を感じました。
トラックバックありがとうございました。

投稿: 自由なランナー | 2006/03/20 07:54

私が思うに手の習作が多いのは手と言うのは顔以上に表情豊かなんですね。とても素直にその人の人生を反映します。

顔はどうしても見る人にとっても目鼻口等の部品があるので目が行ってしまいがちですが、手って一見そういう華やかな部品がない分実は見ごたえが合ったりします。

作り手の表情を表現しやすいと言うのもあります。

意識的に色々な人の描いている手を見たりしているうちに何か感じれるようになるかもしれませんね。ファイトー!

投稿: tomomi-maru | 2006/03/20 07:27

こんにちは。TBさせていただきました。
クレマンソーの像にみる多様性。ほんとそうですね。
ロダンは肖像を作るために、ほんとうに多くのデッサンや習作を重ねていたようで、私も興味深かったです。

私もぜひともまた行きたいと思いました。行くたびに、違った感じ方ができそうで楽しみです。

投稿: demain_soir | 2006/03/20 05:53

Takさん
こんにちは。トラックバックありがとうございます。
再度訪れるときに、参考にさせていただきます。

投稿: 自由なランナー | 2006/03/20 05:40

こんばんは。
新しくもう一つTB送らせていただきました。
まさに目からウロコです。

再訪前に是非。

投稿: Tak | 2006/03/18 21:36

code_nullさん
こんにちは。
カリエールをみていると、なにか不思議な感覚になりました。
>慎ましやかな雰囲気が伝わりました。
おっしゃるとおりだと思います。すてきな作品に出会えました。

投稿: 自由なランナー | 2006/03/17 06:09

zeroさん
ご来訪ありがとうございました。
カリエールの母と子、私も愛を感じられて、感動しました。
また、ブログにお邪魔します。

投稿: 自由なランナー | 2006/03/17 06:00

初めまして、こんばんは。TBありがとうございました。
カリエールの肖像画の憂いというか陰のある感じがとても
印象的でした。
母子を描いた作品が多かったですね。
慎ましやかな雰囲気が伝わりました。

#次はオルセー美術館というのがスゴイですよね。

投稿: code_null | 2006/03/15 22:42

コメントありがとうございました。

カリエールの描く母と子の愛はとても優しく、美しかったと思います。
行ってみて非常によかった展覧会でした。

投稿: zero | 2006/03/15 16:17

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