黒色の存在感:須田国太郎展
油彩での黒色を、ここまで意識させられた画家は、初めてかもしれません。東京・竹橋の国立近代美術館で「須田国太郎展」をみてきました。須田の作品をまとめてみるのは初めてです。
須田は28歳の時(1919年)から4年間、スペインのマドリッドを拠点として、絵画を独学で学びました。学生時代から「なぜ東洋西洋と違った方向に向いて絵が発達したのだろう」と考えていた須田は、バロック絵画の色彩の明暗対比にひかれていたといいます。 須田の多くの作品では、黒色が重要な色として使われています。黒色のもつイメージは、人それぞれでしょうが、一般的には「暗い」「重い」などネガティブな印象をもたれがちです。しかし須田は、黒という色に積極的な意味を見いだし、この色を多用していたように思えます。須田の作品をみていると、黒は、どんな色とも強い関係を保ち、意味を持ち得る色なのだ、と感じました。
セザンヌの構想が意識されたとされる「水浴」。そこに描かれた女性たちは、セザンヌ絵画とは違った生命力を感じます。暗色が引き出す女性の肌色に、沸き上がるような力を感じます。
「夏の朝」「夏の午後」「夏の夕」の3部作は、印象派の影響が色濃く感じられる手法ですが、黒などの暗色が、より他の色をひきたさせています。
「冬」は、ほとんど黒だけで木々を描き、須田の絵をつくろうとする力に、おもわず後ずさりしてしまうような恐ろしい迫力をもっています。
「断崖と漁夫達」は、男達の白い服、肌色と、背景の暗色の対比が鮮やかな作品。画面の多くを暗色がしめながら、沈んだ絵にならず、人物が逆に生き生きとしています。
須田の作品と向き合いながら、黒色のもつ意味をずっと考えていました。須田より7歳年下ながら夭逝した佐伯祐三も、黒、暗色を多く使った画家です。須田と佐伯、それぞれの黒の意味を考えてみないといけないな、とも思いました。
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» 須田国太郎展 [Hodiauxa Lignponto]
みなさん、こんにちは。
今日は、暖かかったですね。
明日からまた寒くなりますが。
三寒四温の季節ですかね。
春は、確実に近づいているんですね。
今日は、東京・竹橋にある東京国立近代美術館に「須田国太郎展」に行って来ました。
この展覧会は、いつも見ているテレビの美術番組で知りました。
たまたま紹介のある一節が私の琴線に引っかかりました。
それは、「須田さんは、黒を通して西洋と東洋を越えた。」
�... [続きを読む]
受信: 2006/02/27 08:21
» 「須田国太郎展」を見る [Untitled]
竹橋の国立近代美術館で「須田国太郎展」(3/5まで、830円、Webサイトで50 [続きを読む]
受信: 2006/02/28 00:22
» 「須田国太郎展」 東京国立近代美術館 1/21 [はろるど・わーど]
東京国立近代美術館(千代田区北の丸公園3-1)
「須田国太郎展」
1/12-3/5
しばらく前のことになりますが、竹橋の近代美術館で開催中の「須田国太郎展」を見てきました。「日本近代洋画家を代表する」(美術館より。)という須田(1891-1961)の回顧展は、同美術館では何と42年ぶり。油彩画を中心とした約150点もの作品がズラリと並び、ボリューム満点に展示されています。非常に見応えのある展覧会です。
須田が画壇へデビューしたのは遅く、初めて個�... [続きを読む]
受信: 2006/03/01 01:29
コメント
はろるどさん
こんにちは。
須田の作品をみていると、おっしゃるとおり、色の力を充分感じ取れました。
素晴らしい企画だと思います。
投稿: 自由なランナー | 2006/03/01 21:06
Takさん
こんにちは。
黒と他の色(ピンクとか赤とか)をうまく使っていましたね。ほんと、まとまった回顧展、よかったと思います。
投稿: 自由なランナー | 2006/03/01 20:58
こんばんは。
TBありがとうございました。
黒とピンクで表す画面が
とても印象的でした。
まとめて観ることが出来て良かったです。
投稿: Tak | 2006/03/01 18:16
こんばんは、こちらにもTBをありがとうございました。
須田の作品からは、絵画における色の力を強く感じました。
仰られる通り黒の凄みは印象的です。
地味な感じはしましたが、
近代美術館ならではの充実の展覧会でした。
投稿: はろるど | 2006/03/01 01:32