素晴らしき「美の伝統展」
ぜひいきたいと思いつつ、なかなか足を運べなかった「大いなる遺産 美の伝統展」をみてきました。最終日の午後でしたが、生憎の朝から雨のためか、思ったほどは混雑していませんでした。
「美術商の100年」と副題がつけられたこの美術展は、美術商の団体・東京美術倶楽部が設立100年を記念して行われたものです。会場は新橋にある東京美術倶楽部「東美アートフォーラム」です。この企画では、美術商たちが美術館、博物館、コレクターなどから集めた逸品、名品が展示されています。
なんとも見事な作品が揃っています。明治以来の日本画家の傑作、隠れた名作の数々。朝鮮、中国の陶磁器。そして近代工芸の名品。さらには国宝を中心とする古美術まで、どれも一級品ばかりです。素人美術愛好家の私には、名前は知っているが、その作品は見たことがない、という画家、作家の作品が多くあり、とても勉強になります。
どの作品も素晴らしいのですが、特に気に入った作品について触れてみます。
まずは上村松園「櫛」。櫛を小道具として女性を描く手法は喜多川歌麿の浮世絵を思わせますが、歌麿浮世絵とは違った女性のあでやかさが感じられます。
また、伊東深水の「通り雨」、その描かれた女性の美しさ、艶やかさにぞくぞくしてきます。西洋絵画で、ここまで艶のある女性を描けるのかな、と思ってしまう名品です。
近代絵画では、松本竣介の「都会」は、赤、緑、黄の彩色で描かれた人物像が不思議な雰囲気をつくり出します。ちょっとキュビズム的なものを感じました。
藤田嗣治の「私の夢」は、裸婦とまわりを囲む動物たちの構図に、ちょっと恐ろしいものを感じながら、やはり藤田らしいな、と思わせてくれる傑作です。
朝鮮の青磁や、中国の磁器の数々は、どれも一級品でみていて飽きません。色、造形、技法、どれをとっても素晴らしいものばかりです。
また、池大雅の「離合山水図屏風」は、省略されたような描写ながら、雄大な風景をつくり出しています。みていて気持ちがよくなってきます。
工芸では富本憲吉の「色絵飾箱」の色鮮やかさに惹かれました。
これだけの名品をまとまってみられる機会は、ほとんどないのでは。選りすぐった日本の美術品。どれも素晴らしく、堪能しました。
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