藤田嗣治の「異邦人」なる偉大な生涯
今年の春に国立近代美術館で行われる「藤田嗣治展」が、美術ファンには、話題のようです。画家・藤田嗣治といえば、エコール・ド・パリ時代に活躍した世界的な画家、くらいの認識でした。文庫本の新刊『藤田嗣治「異邦人」の生涯』を読み、画家藤田の平穏ではなかった人生に感動しました。
日本人ながら、日本では低い評価しか得られなかった藤田。五度の結婚、フランスに帰化、晩年洗礼を受けたその生涯は、まさに波乱に満ちたものでした。裸婦を描き「乳白色の肌」の美しさで得た高い評価、日本人として戦争画家としての創作、死の直前に完成した礼拝堂のフレスコ画。藤田の生涯が、無駄のない、冷静な描写で書かれています。
この本は、3年前に刊行された単行本を、「藤田嗣治展」開催にあわせ、加筆修正し、文庫本にしたもの。単行本は大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。著者近藤史人さんは、藤田の未亡人への長時間のインタビューを含め、丹念な取材で、画家藤田の内面をさぐっています。
権利の問題などで、これまで本格的な回顧展は一度も開かれていなかった藤田嗣治。展覧会がますます楽しみになりました。
『藤田嗣治「異邦人」の生涯』(近藤史人著・新潮文庫:730円)
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コメント
賽目さん
こんにちは。
人の評伝は、いろんな面から書かれることの方が少なくないでしょうから、別の人が書いたフジタ論も面白いはず。
ぜひ、手に入れてみます。
投稿: 自由なランナー | 2006/02/03 22:47
平野政吉美術館に置いてあるはずなので、取り寄せてみてください。もしくは彼女に連絡をして、送ってもらってください(ぼくは送ってもらいました)。パトロンとアーティストの関係がおもしろいです。
佐伯祐三との絡みで調べていくと、これまたおもしろく、藤田は陸軍のスパイだったなんて記述もあったりします。真偽は不明ですが、時代背景や戦争画を考えると、否定できませんね。
投稿: 賽目 | 2006/02/01 07:09
賽目さん
こんにちは。
ノンフィクションは、ある意味で一面的なものですからね。この本、なんんとか探してみます。
投稿: 自由なランナー | 2006/01/31 07:56
この二冊を読み比べておもしろいのは、平野サイドの取材と、藤田サイドの取材とでは、日本における藤田のありようがずいぶんちがって見えること。おもしろいですよ。
投稿: 賽目 | 2006/01/31 07:13
賽目日乗さん
こんにちは。
平野政吉のことは、この本でもふれられています。世界一大きい絵の経緯とか。一回、平野政吉美術館は訪れなければいけませんね。
投稿: 自由なランナー | 2006/01/30 20:11
藤田はほんとうにすごいと思います。秋田の行事はごらんになったこと、ありますか。渡部琴子さんという方が書いた「平野政吉 世界のフジタに世界一巨大な絵を描かせた男」という本をぜひ読んでみてください。
投稿: 賽目 | 2006/01/29 22:52