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2006/01/31

堂本尚郎の織りなす色と形の世界

世田谷美術館で開催されている「堂本尚郎展」を見てきました。副題に「絵画探求60年の足跡とその未来」とつけられ、堂本の画業を振り返る本格的な回顧展です。
堂本の作品をまとめてみるのは初めてですが、色、形の織りなす世界に魅了されました。展示された作品は、初期の日本画作品以外はすべて『抽象絵画』に属する作品です。
 展覧会は年代に沿って、6つのパートに分けられ作品が展示されています。抽象絵画を言葉で表現することは難しいのですが、堂本の作品は、現実世界を、図形と鮮やかな色彩で描いた絵画といっていいのではないでしょうか。作風は、年代を追って変貌していますが、基本たる創作表現は変わっていないように思えます。
 フランスに渡った20代の作品は、キャンバスに厚い油彩を塗り、そのボリューム感と絵の具の色彩に引きつけられます。
 そのあと「連続の溶解」と名付けられた一連の作品では、更に色彩表現に重点が置かれているようです。例えば63年の「連続の溶解 1963-58」はカンバスに油彩と金箔を使って制作され、独自の色彩世界をつくっています。
 60年代後半から、その色彩表現は更に力を持ちます。78年の大作「宇宙」は、そのあでやかな色彩で、絵を見ているとなにか幸せな気分になりました。
 また「臨界」と題された作品群は、規則的に並ぶ図形と、青、ピンク、黄色などの明るい色彩で、絵画との会話が弾みます。

 IMG_4685堂本は50年代のフランスでの美術運動「アンフォルメル」の中心として活躍した画家。作品をみていると、20世紀初頭の様々な美術運動、主義の影響を感じます。キュビズム、ドイツ表現主義、シュルレアリスム(オートマティスム手法)など。また作品で多用されている絵の具を垂らす手法は、抽象表現主義でのアクションペインティング、ドリッピング技法です。堂本は、まさしく20世紀の美術を体現している画家かもしれません。

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受信: 2006/01/31 23:42

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受信: 2006/02/03 05:06

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受信: 2006/02/03 15:03

コメント

a_demain_soir さん
お久しぶりです。ブログ、新装されたんですね。
堂本の作品をみていると、20世紀美術史の動きを体現しているアーティストなんだな、と思いました。
図録、素敵でした。私も思わず買ってしまいました。

投稿: 自由なランナー | 2006/02/04 07:45

こんにちは。
tamakoあらためa_demain_soirです。

アンフォルメルや日本的な金箔の作品など
いろいろあったのに、すっかり円・円・円で
頭の中が充満してしっていました。
こちらの記事を見て復習しています。

トラックバックさせていただきました。

投稿: a_demain_soir | 2006/02/03 15:10

はろるどさん
こんにちは。
堂本の創作過程がみられる充実した美術展でした。とにかく、あの空間にいると幸せな気分になりました。

投稿: 自由なランナー | 2006/02/02 12:59

れおだびさん
はじめまして。
アートのこどが素敵に書かれていて、楽しいブログですね。
うちのブログは、拙い独り言ですが、よかったらまたおこしくだい。
ブログにもお邪魔します。

投稿: 自由なランナー | 2006/02/02 12:05

自由なランナーさん、こんばんは。
コメントとTBをありがとうございました。

アンフォンメルから抜け出して、
独自の色彩と形を作り出したところがスゴいですよね。
しかも今現在もまた新たな境地を切り開いておられる。
非常に見応えがありました。

投稿: はろるど | 2006/02/01 00:25

TBありがとうございました。

私は、ブログをはじめたばかりの初心者で、TBがくると、そのたびに感激してしまいます。

ページをざっと拝見しました。関心が広範にわたっており、私が目指すブログのお手本にさせて頂こうと思っております。

また時々おじゃますると思いますが、よろしくお願いします。

投稿: れおだび | 2006/01/31 12:39

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