日本と中国の名筆に出会える「書の至宝」
書の作品を見る機会は、そう多くありません。書に詳しくないので(というよりほとんど無知状態)、まず見にいくことはありません。そんな私ながら、東京国立博物館の「書の至宝;日本と中国」をみてきました。この企画は日中の歴史上の名筆を200点近くも集めたもの。中国の王羲之(おうぎし)、欧陽詢(おうようじゅん)、虞世南(ぐせいなん)、蘇軾(そしょく)、米芾(べいふつ)、趙孟頫(ちょうもうふ)など中国美術史上の蒼々たる書家の書が展示されているのに興味をもち、出かけてみました。書はまったく知識がないので、素人な感想を。
会場に入ると中国歴史上最古の王朝・殷時代の甲骨文を刻んだ碑があります。甲骨文の実物、初めてみました。造形としては、ほとんど象形文字です。この甲骨文で、政治の重要事項を決めていたんですね。どんな意味のことが書いてあるのかわかりせんが、不思議です。
中国パートの最大の見物は、王羲之の作品。作品といっても王羲之は真筆は残っていないとされています。出展されているのは双鉤填墨(そうこうてんぼく)といわれる中国の謄写方式で写し取られた作品や、刻本(印刷物ですね)で、王羲之の筆がみられます。双鉤填墨の有名な「喪乱帖」は残念ながら展示が終わっていましたが、「妹至帖」は見事です。刻本では「淳化閣帖」「蘭亭序」で書風をうかがいしることができます。行書を確立したといわれる王義之の書は、みていて引きこまれる力をもった筆致です。
日本の書では、聖徳太子の写経「法華義疏巻」が面白い。すごく個性的な書です。ちょっと丸みがあり、行書とも楷書とも違う独特の文字です。(ちなみにこの書、所蔵が御物となっています。これは正倉院の保有ということでしょうか?)
日本の書は、仮名文字を表現することで、書の独創性を確立したように思えます。意匠が凝らされた料紙と、そこに書かれた文字、そして空白が織りなす美が、素敵です。
時間的にさらっとみられると思って、3時半から見始めたのですが、甘かった。じっくり見ると、2時間以上はかかる質と量です。おまけに、予想以上に大混雑でした。会場には書道ファンらしい年配の方が多かったですが、若い来場者も目立ちました。書の世界の奥深さを感じた展覧会でした。おすすめです。
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» 「書の至宝展」 [弐代目・青い日記帳]
東京国立博物館で開催中の
「書の至宝−日本と中国展」に行って来ました。
もう少し勉強してから行けばよかったと後悔しています。
「王羲之、欧陽詢、蘇軾、空海、小野道風、本阿弥光悦、良寛―
名筆、時空を超えて一堂に。」とチラシにも書かれている通り
まさに「名筆が一堂に会している」展覧会です。
構成は以下の通りで、第一章には紀元前12世紀中国の「商」の時代の
甲骨文や国宝「説文木部残巻」などがすぐ目をひきました。
1.文字の始まり〜字体の変遷〜
2.王羲之とそ... [続きを読む]
受信: 2006/01/30 20:47
» 書の至宝−日本と中国 [徒然なるまままに]
書の至宝−日本と中国
王羲之、欧陽詢、蘇軾、空海、小野道風、本阿弥光悦、良寛―
名筆、時空を超えて一堂に。
東京国立博物館
2006年1月11日(水)〜2月19日(日)
巡回予定
中日書法名品展(仮称)
上海博物館 2006年3月11日(土)〜4月23日(日)
展覧会の構成
1.文字の始まり〜字体の変遷〜
2.王羲之とその周辺
3.楷書表現の完成〜中国・唐時代〜
4.主観主義の確立〜中国・宋元時代〜
5.中国書法の受容〜飛鳥時代〜
6.奈良時代の写経と三筆〜奈良... [続きを読む]
受信: 2006/01/31 00:06
コメント
Takさん
こんにちは。
ほんと、混んでました。書のファンは多いんだな、と実感じました。
再訪して、じっくり見たいとおもっています。
投稿: 自由なランナー | 2006/01/31 07:54
こんばんは。
TBありがとうございます。
混雑していましたね。
驚きました。
北斎展かと思いました。
でもよく考えたら絵画より書の方が
ポピュラーではありますよね。
職場でもこの展覧会が話題になるほどですから。
それにしても圧倒的な質と量でした。
投稿: Tak | 2006/01/30 20:49
163さん
こんにちは。
私も、もうちょっと書について研究してみようと思いました。あまりに知識がないままみてしまったので。
王羲之のコーナーは、閉館間際に、再度みてきました。さすがに人がいませんでしたよ。
また、お越しください。
投稿: 自由なランナー | 2006/01/30 20:19
かんさん
こんにちは。
地方にいると、美術をみるのはなかなか大変ですよね。私は、単身赴任の身ですから、月2回くらい東京に帰れるので、なんとか時間を作ってみています。
アート、ご覧になったらぜひブログに書いてくださいね。楽しみにしています。
投稿: 自由なランナー | 2006/01/30 20:15
azumiさん
こんにちは。
ほとんど知識のない私ですが、書の世界は奥深いな、と少しだけ感じることができました。
できれば、再訪したいのですが、その時間があるかどうか。
投稿: 自由なランナー | 2006/01/30 20:13
こんにちわ
書の至宝展、いらっしゃったんですね。
私も書には馴染みがなかったのですが、考えを改めました(^^;
「文字」として読むことにこだわるより、美として観ると、とても発見がありました。
さて、王義之のブースは満員電車のようではなかったでしょうか?3時過ぎなら多少は空き始めていたでしょうか。
展示ケースに並んだ3点に音声ガイドが設置されているため、どうしても停滞するようです。
私は日ごろ音声ガイドを利用しないので、実感はないのですが、聴いている人はその間作品の前から離れることが難しいようです。
構成や配置などの観点からも、発見がありました。
AZUMIさん>はじめまして。いまのところ、朝一の10時頃までか、3:30頃~閉館までが若干空いています。
来週からは、良寛の書も登場しますよ。
投稿: 163 | 2006/01/30 09:19
いろいろと美術館行ってらっしゃるんですね。いいなぁ~。私が行きたかった展覧会もかなり行ってらっしゃる。うらやましいです。
私は、ブログを始めてまだ日が浅いため、ART情報はありませんが、年に1、2回は東京などの美術館に出かけています。
書道を習っていたときがあって、「蘭亭序」が好きでした。書もいろいろな表現があって、美学を感じます。
投稿: かん | 2006/01/29 16:01
こんにちは。azumiです
ワタシも書の知識はないけど、気になっている展覧会です
このまえ出光美術館で『平安の仮名、鎌倉の仮名』という展覧会をやってて、
聖徳太子とか、歴史教科書に出てくる偉人の書を見て『ほぇー』と思いました。。
書って生々しいですよね。
書いた人の個性も出るし…
書を見るだけで、これを書いた人はどんな人なんだろーって想像しちゃいます。
気づくと何時間も経っちゃうのって、分かる気がします。
興味あるけど…混んでるのですかー
うーん…
投稿: azumi | 2006/01/29 15:19