堂本尚郎の織りなす色と形の世界
世田谷美術館で開催されている「堂本尚郎展」を見てきました。副題に「絵画探求60年の足跡とその未来」とつけられ、堂本の画業を振り返る本格的な回顧展です。
堂本の作品をまとめてみるのは初めてですが、色、形の織りなす世界に魅了されました。展示された作品は、初期の日本画作品以外はすべて『抽象絵画』に属する作品です。
展覧会は年代に沿って、6つのパートに分けられ作品が展示されています。抽象絵画を言葉で表現することは難しいのですが、堂本の作品は、現実世界を、図形と鮮やかな色彩で描いた絵画といっていいのではないでしょうか。作風は、年代を追って変貌していますが、基本たる創作表現は変わっていないように思えます。
フランスに渡った20代の作品は、キャンバスに厚い油彩を塗り、そのボリューム感と絵の具の色彩に引きつけられます。
そのあと「連続の溶解」と名付けられた一連の作品では、更に色彩表現に重点が置かれているようです。例えば63年の「連続の溶解 1963-58」はカンバスに油彩と金箔を使って制作され、独自の色彩世界をつくっています。
60年代後半から、その色彩表現は更に力を持ちます。78年の大作「宇宙」は、そのあでやかな色彩で、絵を見ているとなにか幸せな気分になりました。
また「臨界」と題された作品群は、規則的に並ぶ図形と、青、ピンク、黄色などの明るい色彩で、絵画との会話が弾みます。
堂本は50年代のフランスでの美術運動「アンフォルメル」の中心として活躍した画家。作品をみていると、20世紀初頭の様々な美術運動、主義の影響を感じます。キュビズム、ドイツ表現主義、シュルレアリスム(オートマティスム手法)など。また作品で多用されている絵の具を垂らす手法は、抽象表現主義でのアクションペインティング、ドリッピング技法です。堂本は、まさしく20世紀の美術を体現している画家かもしれません。
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