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2005/10/09

短かい生涯ながら、凝縮した佐伯祐三の芸術世界

neria_museum練馬区立美術館で開かれている「佐伯祐三展:芸術家への道」を見てきました。初めて訪れた練馬区立美術館、開館20周年記念の企画です。佐伯の作品をまとめてみるのは、これも初めてです。
10月6日付け日経新聞の『文化往来』でこの展覧会を取り上げています。この記事に「その風景画が過酷な精神の緊張から生まれたことを改めて印象づける展覧会」と書かれたことが心に残り、会場でも佐伯がどうして作品を描いたかを、少しでもわかろうという気持ちで鑑賞しました。佐伯は1898年に生まれ、1928年に亡くなっています。わずか30年という短い生涯の中で、何を描きたかったのか。
26歳のときパリに渡り、一時帰国を挟み、死ぬまでパリで絵を描き続けました。時代はちょうど『エコール・ド・パリ』の全盛期。ユトリロ、モジリアニ、そして日本人では藤田嗣治が活躍した時期です。佐伯も、パリの地で生活した時間は短かったですが、多くの傑作を残しています。
「パリ郊外風景」は、ねじ曲がった建物の構図と空の雲に、見ていると不安な気持ちになってくる絵です。
「ノートル・ダム」を描いた4枚の絵は、どれも盛り上がるばかりにキャンバスの上に置かれた絵の具と、2次元的な構図に、圧倒的な存在感があります。
佐伯はパリの街に魅せられていたのでしょうか。二度目の渡仏(1927年)以降、パリを描いた作品が多くなります。
特に気に入ったのは「ラ・クロワッシュ」。色遣い、デザイン力がすばらしく、奔放とも感じられる筆致が、すばらしい作品。
亡くなる年に描かれた「カフェ・レストラン」は、フォービズムの影響もありそうな、ちょっと楽しげで、かわいらしい作品です。

saeki今回出展されている約140点の作品には、かなり個人所有のものがあり、佐伯の作品をまとめて見られる機会は、今後しばらくはないかもしれません。この時代の美術に興味があるかたは、ぜひ見ることをおすすめします。

1時間以上、会場で作品と向き合いましたが、残念ながら佐伯の描きたかったものはわかりませんでした。でも、彼の絵を描くことへのひたむきさは充分感じ取れることができる、すばらしい美術展です。

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受信: 2005/10/10 09:21

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練馬区立美術館でやっている佐伯祐三展に行ってきました。 前に12ch「美の巨人」で初めてこの人の『ガス灯と広告』を見て「あ、私この人の絵好き{/hearts_pink/}」と思っていたので、それがこんな近い場所でやってくれてラッキー{/choki/} 絵って人の心に直接訴えかけてくるもので何がどういいのかうまく言えないんですけどね。男女の相性みたいなもんでしょう。あんなに素敵できれいな松嶋奈々子さんでも「俺... [続きを読む]

受信: 2005/10/10 10:36

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佐伯祐三展 芸術家への道 2005年9月10日(土)~10月23日(日) 練馬区 [続きを読む]

受信: 2005/10/10 23:57

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薄汚れた壁を埋め尽くすポスターは染みだらけで滲んでいる。とげ とげした灰色の壁の前を、いまにも消えそうな人物が通り過ぎてい く... 練馬区立美術館の佐伯祐三展に行ってきた。 最初の渡欧では青い空を描いた作品も何枚かあるが、だんだんと灰 色の雲に覆われた風景が多くなる。 パリ郊外の風景を描いた作品、同じ構図で、方や初夏の装いで方や 雪景色。雲浮かぶ空の下には葉を茂らせた木々、この青や緑はどこ かぎこちない�... [続きを読む]

受信: 2005/10/11 00:03

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先日ご近所、練馬区立美術館にて「佐伯祐三展―芸術家への道―」を見てきました。 自転車で朝早く行ったのですが、平日なのにものすごい人の入り。おじいさんおばあさんがほとんどなので、あまり祝... [続きを読む]

受信: 2005/10/29 15:37

コメント

佐伯の巴里日記を本物と思う人がいるのは、やはり吉薗側の罪は重い。
あの日記にしても周蔵日誌にしても、医師が特定の人間のカルテを残すということは考えられない。
佐伯がスパイだった。
佐伯は金がなかった。親からの愛情がなかった。
佐伯評伝を読めば、佐伯がいかに親に愛されていたかわかる。
周蔵は佐伯のカウンセラーとなっているが、佐伯の精神状態がおかしくなるのは、モランから帰ってきてからである。最初から間違っている。
米子さんが加筆したというなら、実演してほしい。油絵の上にガッシュで佐伯と同じ黒い線を描いていただきたい。
これができれば、世界的に有名になれる。
過去にできていれば、その描き方の本くらいでているだろう。
佐伯祐三、米子を辱めないでほしい。

投稿: オリオン | 2012/07/28 00:11

佐伯祐三 哀愁の巴里を出版しました。
贋作事件も取り上げています。巴里日記の編集長に四回会いました。彼はもう佐伯には関わりたくないと話しています。吉薗氏のいい加減さにはあきれています。

私は真摯に画業に取り組んだ佐伯祐三が好きです。
佐伯祐三 哀愁の巴里には佐伯の病気、芸術、その晩年、エブラール病院の本物のカルテなどについて述べています。

投稿: orion | 2012/07/16 23:57

オリオンさん
古い記事にコメントありがとうございました。
贋作の記事拝見させていただきます。

投稿: 自由なランナー | 2011/01/29 23:32

佐伯祐三のパリ日記はそれを作った編集者がその間違いに後悔しています。
私の贋作についての意見の一部をよろしかったらお読みください。http://www.ika-geijyutsu.jp/pdf/buntoku10/018-042.pdf

投稿: オリオン | 2011/01/29 00:23

賽目日乗さん
こんにちは。
佐伯の贋作事件、はじめて知りました。本も出されていますね。ぜひ呼んでみようと思います。

投稿: 自由なランナー | 2005/10/16 11:56

この「佐伯祐三の巴里日記」は贋作騒ぎになった本なのです。世間ではこの日記が偽物であるというふうになって落ち着いたのですが、ぼくはどうも真作に思えてならないのです。

あと、昔太陽が特集した佐伯祐三を入手してください。写真家の高梨豊がすぐれた仕事をしています。

知り合いの金持ちが佐伯の絵を所有しています。

投稿: 賽目日乗 | 2005/10/12 22:36

賽目日乗さん
こんにちは。
この美術展では、画家が描きたかったものについてとても興味がわきました。おすすめの本、ぜひよんでみたいと思います。少しでも、佐伯のことがわかるかもしれませんものね。

投稿: 自由なランナー | 2005/10/12 21:27

薪割り職人さん
ご来訪ありがとうございます。
仙台のお住まいでしたか。宮城県美で企画展をやったんですね。
佐伯の作品は、いろいろ考えさせらるものでした。
また、ブログお邪魔します。

投稿: 自由なランナー | 2005/10/12 21:21

20年ほど前、パリで仲良くなった美術評論家のアトリエは佐伯がいたモンパルナス大通りの建物でした。同じ部屋ではなく、1階ちがいでしたが。

佐伯といえば、巧秀夫の最後の仕事である「佐伯祐三の巴里日記」という本をぜひご一読ください。美術というのはやっぱり汚い世界なのかな、と思ってしまいます。

あと椎名町に佐伯のアトリエが残っています。いまは佐伯公園です。一度いってみてください。

投稿: 賽目日乗 | 2005/10/12 16:02

イッセーさん
こんにちは。
亡くなった年に描いた「カフェテラス」をみると、まだこれから才能を発揮しただろうな、と思います。ちょっと残念です。

投稿: 自由なランナー | 2005/10/12 07:52

なみださん
こんにちは。ご来訪ありがとうございます。
こちらこそ、よろしくお願いします。
またブログにお邪魔します。

投稿: 自由なランナー | 2005/10/12 07:50

rieyoshiさん
こんにちは。
楽しいパリ旅行になるといいですね。
ブログ楽しみにしています。

投稿: 自由なランナー | 2005/10/12 07:49

こんにちわ
TBありがとうございます。
同じ仙台とは、驚きました。
佐伯祐三は数年前に宮城県美術館で展覧会がありました。
ロシアの少女がポスターになってました。
はじめて本物を見たのはブリジストン美術館のカフェのテラスでしたが、以外と薄い絵具の使い方で私の印象より繊細な絵であったことを覚えています。
ルノワールも、あの肌の繊細さを表現するために様々な色彩を駆使していて実物はやはり違うと感銘をうけたものです。
また、遊びにきてください。

投稿: 薪割り職人 | 2005/10/11 22:38

自由なランナーさん
こんばんは、コメント&TBありがとうございます。

佐伯祐三の生き様を見ているような、見応えのある展覧会でした。
30年という短い生涯、その後もし生きていたらどんな作品を残していただろうか。興味は尽きません。

こちらからもTBさせて頂きました。

投稿: イッセー | 2005/10/11 00:10

さっそくコメント&TBさせてもらいます。おすすめの美術展があったら教えてください。
今後ともよろしくお願いします。

投稿: なみだ | 2005/10/10 10:40

はじめまして。TBありがとうございます。

実は本日からパリに行くのです。
意識して前日にしたわけではないのですけど。
佐伯の見た場所を、私も見てきたいと思います。
2週間後に戻ったら旅行の様子などブログに書きますので、
よければ覗いてみてください。

投稿: rieyoshi | 2005/10/10 09:24

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