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2005/04/25

闇と光の深い情景−ラ・トゥール展へ

この春、美術ファンにとっては、ゴッホ展と並び注目の「ジュルジュ・ド・ラ・トゥール−光と闇の世界」展を、先週末見てきました。神秘の画家ともいわれるラ・トゥール、初めての鑑賞です。ラ・トゥールをまったく知らない素人美術愛好家は、事前に『芸術新潮』をざっと読んでいきました。しかし、なかなか手強かったです。

会場にはいると、まず「キリストと十二使徒」の連作。微細まで丁寧に描かれた作品ですが、この連作を理解するには、キリスト教の思想、知識が必要なことを実感しました。
現存するラ・トゥール作品の多くは蝋燭やランプに光に照らされた人物を描いた「夜の情景」と称される作品群です。展示されている中で、私は「書物のあるマグダラのマリア」がもっとも印象的でした。長い髪の聖女が、テーブルの上に置かれた頭蓋骨と対峙する姿から、闇と光の静寂が伝わってきます。図録では「全裸に近いにもかかわらず、ほとんど官能性を感じさせない」とありますが、私はこの作品に深い官能の世界を感じました。

展覧会の最後のゾーンには、ラ・トゥール展の白眉ともいえる「ダイヤのエースを持ついかさま師」が展示。この作品は、「夜の情景」に対し「昼の情景」に区分けされるもの。同じアーティストが描いたとは思えない、ダイナミックな作品。描かれた人物の表情、衣装、そして絵画をつくる構図に、見ているとぐんぐん引きこまれていきます。同じ「昼の情景」の作品で、『芸術新潮』に掲載されている「女占い師」は、もっと濃い作品で、実作を見たくなります。

la_tour

ともあれ、現存する真作が41点しかなく、このラ・トゥール展にはその半分がきているとのこと。その希少性からも、見逃せない展覧会といえそうです。

☆勉強させてもらったラ・トゥール展のブログにTBさせていただきます。

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コメント

toshiさん
ご来訪ありがとうございます。
こちらもTBさせていただきます。
またいきたい展覧会でした。

投稿: 自由なランナー | 2005/05/05 07:26

euraさん
ご来訪ありがとうございます。
もう何十年かは、日本でまとまっては見られないでしょう。とてもよかったですね。
また、ユニークなブログにお邪魔します。

投稿: 自由なランナー | 2005/05/05 07:24

ゴッホ展に続き、同じ展覧会をご覧になっていたのでTBさせていただきました。

投稿: toshi | 2005/05/04 17:21

はじめまして。
TBありがとうございます。
たぶんラ・トゥールの作品が日本にくることはしばらくないでしょうし、これは必見の展覧会でしたね。
ここ近日はいろんなところで大きな展覧会が開かれているので、そちらもチェックしてみると良いかもしれませんね。

投稿: eura | 2005/05/04 13:47

Takさん
こんにちは。
昨日の「新日曜美術館」の、藤原新也さんの見方は、なかなか鋭かったですね。
できれば、私ももう一度行きたいとおもってます。おそらく、日本ではしばらくは見れないでしょうから。

投稿: 自由なランナー | 2005/05/02 16:43

こんにちは。
TBありがとうございました。

昨夜の新日曜美術館見て
また行きたくなってきました!

投稿: Tak | 2005/05/02 11:51

twarsさん
ご来訪ありがとうございます。
そんあです、裸身なんです。そして頭蓋骨との対峙、不思議な作品です。
またおこしください。

投稿: 自由なランナー | 2005/04/27 08:28

はじめまして。TBありがとうございます。今回記事を拝見しまして、「マグダラのマリア」が全裸に近い姿であることを見逃していたことに、気付きました。

投稿: twars | 2005/04/26 21:35

347さん
ご来訪ありがとうございます。
「ランタンのある聖セバスティアヌス」も魅力的な作品でした。真作と模作を比べてみる楽しさも、この美術展にはありました。
また、ブログにお邪魔します。

投稿: 自由なランナー | 2005/04/26 07:43

はろるどさん
こんにちは。私もこの美術展をみて、はろるどさんが2回もいかれた理由がわかりました。なんども見ていると、新発見があるのでしょうね。時間があれば、もう一度足を運びたいと思います。

投稿: 自由なランナー | 2005/04/26 07:40

tobubeeさん
ご来訪ありがとうございます。
まだ、真作があるのでしょうか。気になります。私もルーブルや、メトロポリタンで見てみたいです。
また、お越しください。

投稿: 自由なランナー | 2005/04/26 07:38

ありまさん
ご来訪ありがとうございます。

「書物のあるマグダラのマリア」は、絵の前でみいってしまいました。なんともいえない官能性を感じました。
また、遊びにおいでください。私もお邪魔します。

投稿: 自由なランナー | 2005/04/26 07:36

羽柴さん
ご来訪ありがとうございます。
私も、恥ずかしながらこの美術展ではじめてラ・トゥールを知りました。これから、もうちょっと勉強しようと思います。
ブログ、これからもお邪魔させてください。

投稿: 自由なランナー | 2005/04/26 07:34

きよさん
ご来訪ありがとうございます。
この春の注目は、ゴッホ展とラ・トゥール展とおもっていましたが、やはり見応えがありました。
また、お邪魔します。

投稿: 自由なランナー | 2005/04/26 07:32

dawnさん
ご来訪ありがとうございます。
確かに、目はポイントかもしれませんね。
また、ブログお邪魔します。

投稿: 自由なランナー | 2005/04/26 07:30

こんばんは
TBありがとうございます。早速、こちらからもTBさせていただきました。

ラ・トゥール展はしばらく前から気になっていましたので、楽しみに行きました。中でも私が気になったのは、2枚の模作の「ランタンのある聖セバスティアヌス」です。

同じ構図で同じ内容を描いているにもかかわらず、微妙に違います。本物を実に見たくなりました。同じような「煙草を吸う男」にはあまり魅かれませんでした、不思議です。

投稿: 347 | 2005/04/26 01:55

自由なランナーさん、こんばんは。
TBありがとうございました。

>「書物のあるマグダラのマリア」がもっとも印象的

作品の美しい質感と、印象的な構図、
それに仰られる通りの深い官能性。
本当に素晴らしい作品でしたね。
二回行きましたが、こちらの感想を読んでまた行きたくなりました!

投稿: はろるど | 2005/04/25 21:50

TBありがとうございます。ラ・トゥールってなかなか面白い人物だったと予想します。これからきっと、真筆もどんどん見つかると良いです。いつかはルーブルで見てみたいです。

投稿: tobubee | 2005/04/25 21:00

初めまして、こんにちは。
 私も「書物のあるマグダラのマリア」が一番印象的でした。聖性と官能がともに感じられる、不思議な絵です。
 それにしても、こんな素敵な展覧会が巡回展なしとは、とても残念です!

投稿: ありま | 2005/04/25 14:21

トラバックありがとうございました、そしてトラバックさせていただきました。
近年になって脚光を帯びたラトゥール、彼の絵画がもっと発見されるといいですね!
今後に注目したいと思ってます。

投稿: 羽柴 | 2005/04/25 10:01

はじめまして、トラックバックありがとうございます。
ラ・トゥールは、今回東京の美術館めぐりしていて「ゴッホ展」と「ラ・トゥール展」は、よい意味で期待を裏切ってくれた展覧会でした。それにしても四十数点した発見されてない画家で、国立西洋美術館すら、最近1点手に入れたと言う話で、富士美術館で1点持ってると言うのは、ほんと凄いですね。

投稿: きよ | 2005/04/25 09:54

はじめまして
trackback有難うございました。謎の多いラ・トゥール、不思議な魅力ですね。私は、人物の目がとても気になります。今後ともよろしく。dより

投稿: dawn | 2005/04/25 09:38

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