アイムソーリー、ママと桐野夏生
やっと桐野夏生の「アイムソーリー、ママ」を読み終えました。この作品、ちょっと前の『週刊文春』のインタビューで、桐野さん本人が「グロテスク」、「残虐記」と続きこの「アイムソーリー、ママ」で『私のグロテスク期は終わった』と語っていました。この3作品は、同じモチーフを扱ったものということでしょうか。私は、「グロテスク」は扱っているテーマが実際の事件(東電OL殺人事件)をヒントにしているだけに、かなりヘヴィーな読後感でした。小説としてもボリュームもあり、かなり読みごたえがありました。
それに対して、「残虐記」はわりとさらっと読めてしまい、予想していたより心にひっからなかった。そしてこの「アイムソーリー、ママ」は、ある意味、嫌な読後感が残る小説。
直木賞をとった「柔らかな頬」も、読了後、すきっりしない感じが残る小説でしたが、「アイムソーリー、ママ」はそれ以上の違和感があります。
桐野さんの女性の描き方は、まったく容赦がありません。女の嫌な部分、汚いところ、そして心の奥底までを、文章であらわに表現していきます。「アイムソーリー、ママ」では、人間、特に女性の醜さ、怖さ、狡賢さを、これでもかこれでもかと描写していきます。なぜ、そこまで書くの、という気持ちにおそわれます。
グロテスク期が終わった桐野作品、今後はどんな作品を書いてくれるのでしょうか。
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光り輝く、夜のあたしを見てくれ。堕落ではなく、解放。敗北ではなく、上昇。昼の鎧が夜風にひらめくコートに変わる時、和恵は誰よりも自由になる。一流企業に勤めるOLが、夜の街に立つようになった理由は何だったのか。『OUT』『柔らかな頬』を凌駕する新たな代表作誕... [続きを読む]
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私は、女の顔をした悪魔を一人知っているのです。その女のしたことを考えるだけで、ぞっとします。彼女の本当の名前が何というのか、今現在、何という名前を名乗っているのかは知りませんけど、もちろん彼女はまだ生存していて、人を騙し続けています。そして、へいぜんと人... [続きを読む]
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張り詰めた東京での生活に疲れ、すべてを捨てて上海に留学した有子。しかし、どうにも断ち切れぬ思いは、70年前、この地で生き、同じ思いを抱えた大伯父の幽霊を呼ぶ。枯れた玉蘭の花とともに…。交錯する二つの思いは時を越え、“過去”と“現在”を行き交う。人は恋愛の... [続きを読む]
受信: 2005/05/15 07:57
» 「I’m sorry,mama.」 [月灯りの舞]
「I’m sorry,mama.」
桐野 夏生:著
? 集英社/2004.11.30/1400円
かつて女であった怪物たちへ、そして、
これから怪物になる女たちへ捧ぐ、
衝撃の問題作。 <帯より>
重く暗い話である。
救いがない。
「邪悪な女」を描くということだが、
だろうが... [続きを読む]
受信: 2006/03/02 14:07
コメント
Rokoさん
はじめまして。ご来訪ありがとうございます。
アイ子の描き方、過激ですよね。桐野さんの意図するところはわかるのですが、私の読了後に残った感覚は、あとをひきました。
投稿: 自由なランナー | 2005/04/13 07:56
初めまして、Rokoと申します。
桐野さんの作品はだいたい読んでいるんですけど、人間の描き方がどんどんリアルになってきているような気がします。
主人公のアイ子の持っている邪悪さって、誰でも持っているものだと思うけど、ここまで徹底的に悪いと、かえってサバサバした感じがするなぁなんて思いながら読みました。
投稿: Roko | 2005/04/12 23:34
yabuinuinuさん
ご来訪ありがとうございます。
桐野さんの作品はグロテスク3部作と「柔らかな頬」くらいしか読んでいないので、これから他の作品にもトライしようと思っています。
投稿: 自由なランナー | 2005/02/16 06:29
でこぽんさん
私事ですが、子供は中高一貫校に昨春進学しました。それが単身赴任の原因のひとつですが。大学進学を考えて、中学受験で、一貫校の道を選ばせることにしました。首都圏の受験環境は難しいですね。
投稿: 自由なランナー | 2005/02/16 05:54
こんばんは、トラックバックされていたのに先ほど気がつきました。
桐野夏生は、知り合いの女性に教えてもらったのがきっかけなんですが、「玉蘭」、「グロテスク」「残虐記」「アイム・ソーリー・ママ」など、荒んだ現代で、歪んだ性と女性を描いた作品が好きです。
PS
私も、PIANO MANを思わず買っちゃいましたよ。
投稿: yabuinuinu | 2005/02/16 00:28
自由なランナーさん、こんにちは。
私のエントリーへコメントありがとうございました。
こちらへレスさせていただきますね。
『グロテスク』はとにかく興味津々で読みました。モデルとなったQ学園ですが、これは慶応女子高ですね。あそこは中学でトップの子達が集まります。先日、知り合いが合格しました。
公立と私立の問題は、東京では中高一貫が普通ですよね。私は埼玉ですが、これは支持します。現役で大学進学を考えるなら、中高一貫しかないでしょう。その中高一貫校も、高校からだとなかなかに大変ですよね。でも現在は国立も推薦制度がありますから、どこへ進学したほうが良いか一概には言えなくなりました。
高校・大学の推薦制度について日々ムカついているので、思わずコメントをしてしまいました。すみません。
では、これからもよろしくお願いいたします。
投稿: でこぽん | 2005/02/15 12:22
でこぽんさん
ご来訪およびTBありがとうございます。
「グロテクス」は実際の学校がモデルではと、当時論議を呼んだ記憶があります。フィクションですから、実像とは違うとおもいますが。私立学校を考えるヒントになりましたね。
また、お邪魔します。
投稿: 自由なランナー | 2005/02/15 07:39
こんばんは~。。
TB有り難うございました。こちらもTBさせていただきました。
教育問題に関心がありますので、『グロテスク』のQ学園の記述は面白く読みました。『残虐記』は少女監禁が下地にありましたので、好きではありません。『アイムソーリー・ママ』は無条件に楽しめました。また、遊びにきてくださいね。
投稿: でこぽん | 2005/02/15 03:23
二十三画さん
ご来訪ありがとうございます。
いやいや、おっしゃるとおり、桐野さんの目指すところはどこにあるのでしょう。ただ、「グロテスク期」は終わったとも言っているので、この先は違う方にいくかもしれませんね。
投稿: 自由なランナー | 2005/02/14 21:49
kasumixさん
こんにちは。やはりグロテスクがいちばんヘヴィーでしたね。この「アイムソーリー、ママ」もちょっと読むのに気合いがいるかもしれません。
投稿: 自由なランナー | 2005/02/14 21:45
TBありがとうございました。
感心だなんて恐縮です。
私も後日、週刊文春の「著者は語る」を読み、
この「アイムソーリ・・」が「グロ三部作」最終作品と知り、更に著者本人が「恐ろしい、といっても主人公くらいじゃまだまだ(笑)・・・」と語っているのを読んで、びっくりした事を思い出しました。
なんだか桐野さんまでの到達点が遙か彼方に見えた気がしました。まだまだ何もわかっちゃいませんです。ハイ。(笑)
投稿: 二十三画 | 2005/02/14 18:36
「i'm sorry mama」は未読です。グロテスクは読みました。桐野夏生は好きなので、かなり読んでいるのですが、「ダーク」「グロテスク」で少々疲れてしまいました。
もうちょっと時間をおいてから、読んでみようかなと思っております
投稿: kasumix | 2005/02/14 16:31